表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽の勇者と月の巫女  作者: 涙花
勇者と巫女の出現
99/100

返答

ブックマーク、評価、ありがとうございます。

闇が薄れ、空は白み始める。もうじき夜が明けるだろう。


「レティ、俺はレティが好きだ。レティと一緒にいられるなら人間ぐらい辞めてやる。その代わりこの世界を捨てて俺と一緒に来てくれ」

「………人間じゃなくなったら元の世界に帰った時どうするの。人間に戻る事は絶対に出来ないんだよ」

「年を取らないのは困るかもしれないけど、それならどこか山奥にでも隠れ住めばいいし、定住しないで旅をするってのもいいな」

「ルカのお父様とお母様が悲しむ」

「驚かれるとは思うけど悲しんだりはしないと思うぞ」

「でも…」


太陽が僅かにその姿を現し始め、月がゆっくりと姿を隠していく。


「レティ、好きだ。俺の対になってくれ」


目を見開いてポロポロと大粒の涙を零すレティをジッと見つめて返事を待つ。


「……ルカは元の世界に帰るから、望んだらいけない、願ったらいけない。一緒にいたら、傍にいたら、望んでしまう、願ってしまう。だから、離れようと思った。この想いも全部心の底に封じて忘れようと思った。それなのに…」

「・・・・・・・・・」

「――――好きなの。ルカの事が好き…。私もルカと一緒にいたい。ルカの世界に一緒に行きたい。ルカの、対になりたい」


ギュッと強く抱きしめる。嬉しくて言葉が出なかった。


 この時俺達は気付いていなかった。俺達をずっと見ていた存在がいる事に。

 

しばらく無言で抱きあっていたが、下から視線を感じて見下ろすとレティと目が合う。目が合うと恥ずかしそうに目を逸らされてしまったが、それも可愛くて愛おしく感じる。


「どうした、レティ?」


髪を撫でながら話しかける。


「どうして知ってたの?」


なにを、とは聞かない。レティが何の事を言ってるのか俺には分かっていた。


「夢を見た。その夢でいろいろ教えて貰ったんだ」


レティが巫女姫の称号を得たその夜に俺は夢を見た。


気が付けば何も無い真っ白な空間で目が覚めた。


「…俺、テントで普通に寝たよな?」


まさか更に別の異世界に召喚されたとかじゃないよな?

それとも召喚テンプレ、神様からのチートプレゼントイベントか?召喚されて1年以上経ってるから今更って感じだけど。


ここがどこなのか、どうしてここにいるのか分からず首を捻っていると後ろから肩を叩かれ、驚いて振り返ると1組の男女がいた。

女はゆるくウェーブがかった腰まである長い黒髪に同じく大きな黒い瞳、華奢な肢体ではあるが胸はかなり大きい、ナイスバディの美女だ。年は20代後半ぐらい、身長は俺より少し低い。

男も女と同じ黒髪、黒目、髪は短髪で目つきは鋭い。ガッシリとした肉体で腰には剣を下げているから剣士だと思われる。年は30代前半ぐらいに見える。身長は…俺より高い。


「誰だ?」

「あなたは天族の巫女姫レティンシアを好いていますか?」

「は?」


俺の問いには答えず女は妙な事を言い出した。


「あなたは天族の巫女姫レティンシアを好いていますか?」

「いや、その前にあんた達誰だよ」

「…あなたが天族の巫女姫レティンシアを好いていないのであれば知る必要はありません」

「本人にも言ってない事を初対面のあんた等に言う必要性を感じない」

「あの子があなたの傍を離れても良いのですか?」

「レティが俺から離れると言いたいのか」

「あの子は自分が巫女姫である事を自覚しました。巫女姫である故にあなたの傍を離れるでしょう」


この女、レティの事を知ってるような口ぶりだな。男は黙ったままだがその視線には殺気が籠っている。


「どうして巫女姫だと俺から離れるんだ?」

「それもレティンシアを好いていないのであれば知る必要はありません」


くっ!なんだってこんな事に!


「……好きだ。俺はレティンシア事が好きだ」

「それは異性の女性としてですか?」

「あぁ」

「レティンシアは天族です。その生は人族より遥かに長い。あなたが老いて死ぬときもレティンシアの容姿は今と殆ど変らないでしょう。それでもあの子を望みますか?」


その可能性には気付いていた。人族に比べて獣人族も魔人族も長命だとレティは言っていた。なら天族も長命なのではないか。どのぐらい寿命が違うのか分からなかったが、それでも構わなかった。

ただ、レティを残していくことになる事だけが気がかりでだった。


「俺の気持ちは変わらない」

「ではあの子の為に人であることを捨てることが出来ますか?」

「人である事を捨てるってどういう事だ?」

「人としての生を終え、天族としての新たな生を受け入れるという事です?」

「!?」


まさか死んで生まれ変わるってことなのか!?いや、この状況でそれは拙いだろ。それとも天族は成長スピードが速いのか!?


「……死んで生まれ変わるのではありませんよ」


こいつ心が読めるのか!?


「いえ、心は読めません。話を戻しますが、あなたは今のあなたのまま人族から天族へと変わります。ただ、あなたの精神以外の全てが天族へと変わります」

「……種族が人族から天族に変わる。身体も変わる。寿命はレティと同じぐらいになる。これでいいか?」

「概ね合ってます。あなたはそれでもあの子を望みますか?」

「レティを残して逝くことが気がかりだったからむしろ好都合だな」

「二度と人に戻る事は出来ませんよ」

「問題ない」


迷いはなかった。俺はレティを諦めたくない。だから諦めなくいいのなら俺は何でもする。


「分かりました。ではお教えしましょう。天族の巫女姫とその騎士の事を…」


読んでいただきありがとうございました。

次の更新は2月7日(日)の予定です。

今後ともよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ