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太陽の勇者と月の巫女  作者: 涙花
勇者と巫女の出現
95/100

諍い

ブックマークありがとうございます。

あと20分もすれば日は完全に落ちる。

俺達が国境にある山の麓に辿り着いたのはそんな時間だった。魔力で強化した脚力とレティの魔法を使って全速力で移動した結果、明日の夕方着く予定だった場所に1日で到着したのだ。

そんな方法があるなら最初からやれと言われそうだが、師匠と先生、俺に関してはギルド長も知っているが、他のメンバーは俺とレティの能力を知らないのだ。できれば隠しておきたかったが、昨日レティが光属性を持ってることを知られてしまったし、俺が異世界の人間だという事もバレた。

そして今日、追手がいることが判明したので能力を隠している場合ではなくなったので、潔く諦めて全力で逃げる事にしたのだ。レティには魔法で荷車を浮かして俺の足跡を消す事を頼んだのだが、更に風の膜で俺達を包んで風の抵抗をなくすという事までしてくれた。多分レティが何もしなければ荷車に乗っている彼らは風圧で飛ばされるか、体の芯まで凍える羽目になっていただろう。

何はともあれ無事に逃げ切れたのだし、全員飛ばされる事も凍える事もなかったのだからいいだろう。

荷車から全員降りるとレティがカバン型アイテムボックスに荷車を収納する。本当はここで夜を明かし明日の朝、山に入った方がいいのだが追手がいる以上一刻も早く国境を越える必要がある。


「今から山に入るなんて反対だ。夜の山に入るなんて危険すぎる」


先に進もうとしたらギルド長が待ったをかけた。まあ止められるとは思っていたがな。ギルド長達にはレティが精霊と話が出来る事は教えてない。これからも教える事は多分ないだろう。でもそうなると急いでる理由を言えない。……いや、追手がいる可能性だけでも先を急ぐ言い訳にはなる…か?うん。追われる理由はあるのだからこれを理由にするのが良さそうだな。


「追手がいる可能性がありますし、出来るだけ進んだ方がいいと思います」

「追手?」


いや、どうして不思議そうにしてるんですか。


「地下通路で兵士を倒してるんですよ。地下通路に落ちたレティは見つからず、捜索に来た兵士の死体だけが残ってる。状況から見てレティが殺したと思われてる可能性が一番高いです。当然奴らはレティを探すでしょうね。街の中は勿論、近隣の村や王都周辺は捜索されると思います。逃げる為に山を越えるかもしれないと考える奴もいるかもしれない。だから一刻も早く国境を越える必要があります」

「………分かった」


ギルド長が苦々しい顔でレティを一瞥して了承した。意識の無い宮野を師匠が背負って俺達は山に足を踏み入れた。

日が堕ちて辺りは闇に包まれているがそれでも俺達は歩き続けていた。なかなか野営出来る場所が見つからないのだ。木々が密集していてテントを張れるだけのスペースがなく全員が入れるような洞穴もない。雨も降り始めてしまい最悪な状況だ。


隣から伸びてきた手にくいっとマントを引っ張られ、そちらに視線を向けるとレティが進もうとしていた道から左に逸れた方角を指差していた。何か見つけたらしい。元々道なき道を国境だけを目指して歩いていただけなので進路を変更するのは問題ない。徐々に進路をレティが示している方向に修正して歩いていくと、人一人がやっと通れそうな細長い穴を見つけた。レティを見ると僅かに頷いたので場所は間違いないらしい。


「中を見てくる」


そして止める暇なくレティが穴の中へと入っていった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


狭い道を奥へと進んでいく。飛び出ている岩に頭をぶつけないよう注意しながら進んでいくと広い場所に出た。なんとか全員入れそうだが、かなり窮屈でゆっくり休めそうにない。


「もう少し広い場所はない?」


誰もいない空間に話しかけるとすぐに返事が返ってきた。


『ひろく、する?』

『ここ、ひろげる?』

『おおきく、する?』


今度は今まで聞こえていた声と違う声だった。


「あなた達はだれ?風の精霊さんとも光の精霊さんとも違う」

『ち、せいれい』

「地の精霊さんなのね。……ここを今の倍の大きさに広げることは出来る?」

『れてぃんしあ』

『うたう』

『ここ、ひろげる』

「わかったわ」


地の精霊達に請われて小さな声で歌い、地の精霊さん達にここを広げてくれるようにお願いする。

そして1曲歌い終わると同時に一気に空間が広がった。元の3倍ぐらいは広くなったようだ。


「ありがとう。地の精霊さん達」


地の精霊達にお礼を言って外に向かった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


彰斗(あきと)

「ルーカスだ」


呼ばれた名を訂正して振りかえると、予想通り星也(しょうや)が立っていた。


「もう一度言っとくが今の俺の名はルーカスだ。セイ」

「なんでだよ。お前、なんで…」

「ここいる理由ならお前らと同じ、怪我を治させなかったのはお前の自業自得だから。レティに手を上げたんだから当然だよな」

「なんでだよっ!あの女はナナを!」

「感謝されこそすれ恨まれるような事をレティはしてない」

「ナナはずっと眠ったままなんだぞ!」

「眠ってるだけだ。そのうち起きる」


なんでコイツはいちいち怒鳴ってくるんだ。こんなに短気な奴だったか?相手するのも面倒くさくなってきた。


「起きないなんておかしいだろ!?」

「ナナが心配なのは分かるけどレティの所為にするな」

「あの女以外に原因なんてあり得ないだろ!なんであの女を庇うんだよ!」


だからなんでレティの所為だって決めつけるんだ。同じ矢に刺さった俺がピンピンしてるんだから問題あるわけないだろ。それに念の為今日の朝確認したが状態は睡眠中だったからナナは本当に寝ているだけだ。


「もういい。何を言ってもレティの所為だって言うんだろ?話すだけ無駄だ」

「なんでだよ。なんで…」

「………」


ナナの事が心配過ぎて脳が働いていないだけだろうし、ナナが起きて脳が働けば少しはまともになるだろう。それまでは何を言っても無駄だな。


読んでいただきありがとうございました。

次回の更新は1月24日(日曜日)の予定です。


これからもよろしくお願いいたします。

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