望む事、願う事、決めた事
ブックマークありがとうございます。
新年早々体調を崩してしまい、更新できませんでした。
ネイダさんに近づこうとしたレティの前にギルド長が立ち塞がった。
「何をするつもりだ。これ以上まだネイダを傷つけるつもりなのか!」
「ギルド長、レティはネイダさんを傷つけたりしてません」
「何を言ってるんだ!お前も見ただろ。こいつは動けないネイダに矢を撃ち込んだんだぞ!」
「それはネイダさんを呪縛から解放する為です」
「意味が分からん!!」
どうしよう。詳細は置いといて要点だけ話すか。
「まず、ネイダさんは既に死んでました。今まで動いていたのは死霊使いが魔法を使って操っていたからです。そしてネイダさんの魂も術で隷属された状態でした。
そして宮野…今はナナか。ナナは体を死霊使いに乗っ取られていました。
レティがした事は2人を死霊使いから解放する事と俺とナナの傷を癒しただけです」
ギルド長は疑わしげにレティを見ている。
「それをどうやって証明する。ネイダが既に死んでいて操られていたなんて信じられると思っているのか?」
「俺が視て死人である事は確認しています」
「レティンシア側のお前がいう事をそのまま信じろと?」
「信じられないならここからは別行動にします。元々街を出るまでって約束でしたし」
「っそれは!!」
「アイテムボックスが無くなるのと戦力が減るのは困るとでもいいたいんですか?」
「………そうだ。だが今すぐお前達の言う事を信じる事もできない。」
「ルカ、待って」
ずっと悲しそうな顔で俺達を見ていたレティが俺達の話し合いに割り込んできた。
「どうした、レティ」
「私、私がルカ達と離れ「却下」る」
思い詰めた表情で何を言い出すかと思えば、とんでもない事を言い出したので遮って却下する。
「ル」
「却下。絶対に駄目だ」
宮野の体を乗っ取っていた奴の話を聞いた限りではこれから先絶対にレティを狙ってくる。狙われる危険があるのを分かってて別行動なんてさせられないし、させるつもりもない。
「レティンシアにはもっと詳しく話を聞かせてもらいたいところだか…」
「今はこの国を出るのが最優先だと思いますけど」
「はあ。そうだな」
ギルド長が大きな溜息をついて賛同する。しぶしぶではあるがギルド長の賛同も得られたので移動、その後の話し合いでネイダさんの遺体を火葬する事が決まったので、俺の魔法で火葬した。
その後は気絶している星也と宮野を荷車に乗せて移動を開始する。
重苦しい空気の中隣国ドミニオンに向けて歩みを進めながら、これからの事を考えていた。アイツらはきっとレティを狙ってくる。手出し出来ない場所にいたレティがそこから出てきたのだ。
1つの国を滅ぼしてまで手に入れようと画策した存在を諦める訳が無い。ギルド長達とは出来るだけ早く別れた方がいいだろう。ただ、レティは狙われている自分1人がパーティーから外れればいいと思ってるだろうな。恐らく安全な場所に着いたら俺達から離れようとはする。そんな事を許すつもりはないが、レティの行動には気をつけておこう。
日が堕ちるぎりぎりまで歩いていたが、星也と宮野は目を覚まさなかった。
目の前で揺れている炎を見詰めながら考える。
遠い昔、太陽の勇者と月の巫女が封印した『大いなる災いの力を持つ者』
ルカは巫女姫は封印に関わる役割を持っていたのではないかと言った。可能性はあると思う。だって初代月の巫女は私と同じ一族の者だもの。私が知らないだけで子孫に何らかの役割を与えていてもおかしくはない。一度、島に戻った方がいいかもしれない。王都になら巫女姫の役割について何か書物が残っているかもしれない。転移陣を壊してしまったから戻るのは少し大変だけど方法がないわけじゃない。私1人でなら少し時間は掛かるけど戻る事はできる。それに…
「もう、一緒にはいられないもの」
胸が締め付けられる。もう一緒にいる事はできない。ギャレット先生、アンドリューさん、……ルカ。
得体の知れない私を助けてくれた。いろいろ教えてくれた。守ると言ってくれた。一緒に連れて行くと約束してくれた。
だからこれ以上一緒にはいられない。一緒にいたら望んでしまう。願ってしまう。
ルカは元の世界に帰るのだから。望んではいけない。願ってはいけない。
安全な街に着いたら別れよう。
ルカと別れる事を考えるだけで胸が痛くて苦しい。それでも、別れなくてはいけない。
私が望んでしまう前に。私が願ってしまう前に。別れなくはいけない。
私は望まない。私は願わない。
『私と一緒に同じ時を生きて欲しい』
これは望んではいけない事。願ってはいけない事。
だから、もう一緒にはいられない。
膝を抱えて顔を埋める。
どうして出会ってしまったの。出会わなければこんな思いを知らずにすんだのに。
どうして気付いてしまったの。気付かなければ一緒にいる事が出来たのに。
恋をしてしまった。だから、もう一緒にはいられない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「姫様、捜索に向かった者達が全員死体で発見されました」
「少女は?」
「少女は見つかっておりません。死体もないので生きていると思われます」
「……なんとしてもあの少女を見つけ出して始末なさい」
ただの哀れな少女ではなかった。
腹立たしい。あの勇者も巫女も問題ばかり起こしてくれる。
『あれ』もまだ完成していない。『あれ』さえ完成すれば下賤で汚らわしい異世界人達の機嫌を取る必要もなくなる。一刻も早く『あれ』を、隷属の魔具を完成させてもらもらわなくては。
まだ体調が思わしくないのとストックが無い為、次回の更新は来週の木曜日(1月14日)になります。気長に待って頂けると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
これからもよろしくお願い致します。