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太陽の勇者と月の巫女  作者: 涙花
勇者と巫女の出現
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傀儡

ブックマークありがとうございます。

後ろを付いてきていたメンバーが遅れ始めたので休憩を取る事になった。

流石にギルド長はどうってことないらしいが、他のメンバーは歩き続けるのはきついらしい。本当は乗れるだけ荷車に乗せて移動した方が早いのだろうが、宮野(みやの)の事を考えると一緒のグループにいるのは避けたい。一応視てはみたのがステータス異常は見受けられなかった。乗っ取られてるとか操られてるとかそういう状態は表示されないのか、それともレティの考えすぎなのか現状ではどちらとも判別できない。


そろそろ休憩を切り上げて移動を再開しようとした時、宮野(みやの)宮野(みやの)に引き摺られるように星也(しょうや)がやってきた。更にその後ろからネイダさんとギルド長が追いかけてきている。後ろからギルド長が「待て」と言ってるが無視して俺の前に宮野(みやの)立ち塞がった。


「自分達だけ楽してないで私達も乗せなさい。それと、レティのアイテムボックスは私が貰ってあげるから早く寄こしなさい」


なるほど。レティがいってたのはこういうことか。

俺の前に立っている宮野(みやの)の顔はなかなか面白い事になっていた。

唇の端を吊り上げられ三日月のように裂けている口とそこから飛び出す命令形の言葉。

蔑むような、虫けらを見るような顔で俺を見ている。

それなのに、その目にあるのは悲しみだ。それもレティに言われて注意深く見なければ気付かない程の微かな意思だ。


「断る」


短くしかしはっきりと告げる。


「あんたの意思なんて関係ない。あたしが言ってるんだから大人しくさっさとあたし達を乗せて、レティはアイテムボックスを渡せばいいの」

「おい!ナナお前何言ってるんだ!?」

「セイうるさい。あたしの役にも立てないんだから黙ってなさい」

「なっ!?」


余りの暴言に絶句して、口をパクパクさせている様子を観察してどうやら星也(しょうや)は俺の知ってる星也(しょうや)らしい事は分かった。


「なんといわれても断る。レティのアイテムボックスも渡さない。それが不満ならここからは完全に別行動をとらせてもらう」

「あたしが言ってるの。口答えしないで」

「誰に言われようが断る」


追い付いたギルド長は渋面で宮野(みやの)を睨み、ネイダさんはオロオロしている。


「ナナちゃん。そんな事いったら駄目よ」


宥めようとネイダさんが宮野(みやの)の肩に手を置いた時、俺の後ろに立っていたレティが強く俺の服を引っ張った。思わず振り返るとそこには蒼白な顔でレティが立っていた。俺の服を掴んでいる手も小刻みに震えている。


「どうした?」

「ルカ、あの人…」

「レティンシアちゃんもナナちゃんと仲良くしてくれるよね?」


レティが何か話そうとした時、ネイダさんがレティに話しかけた。


「ねえ、ナナちゃんと友達になってくれるよね?」


ビクリと体を震わせたレティが、逃げるように俺の背中に隠れる。


「レティンシアちゃん?」


ネイダさんが俺に近づいてくる。俺に近づくという事はレティに近づくという事と同じだ。背中に張り付いているレティの震えが俺に伝わってくる。


「あの人、なにか変。嫌な気配を感じるの。怖い」


レティがネイダさんに対して怯えていた。俺は何も感じないのだがレティが怯えるような何かがあるのだとしたら近づくのは危険だ。


「それ以上俺達に近づくな」


抜き放った剣を突き付けても、ネイダさんは眉ひとつ動かさない。


「私に剣を向けるなんて酷いです。ルーカスさん」


見慣れたネイダさんの顔だ。声も顔も同じ、別人という可能性はないと思う。


「(ステータスを確認してみるか)」


ネイダさんを視た俺は愕然とした。


名  前:ネイダ・ユベール

年  齢:25歳

性  別:女

レ ベ ル:15

状  態:死人(傀儡)

H  P: 0/1500

M  P: 0/120

腕  力: 80

体  力: 100

魔  力: 80

精  神: 90

器  用: 82

敏  捷: 79

幸  運: 30

魔法適性:

ス キ ル:

耐  性:

称  号:


説  明:死亡後、死霊使い(ネクロマンサー)により傀儡とされた。

備  考:ネイダの魂は死霊使い(ネクロマンサー)により隷属させられています。

      このままではいずれ魂が消滅し輪廻の環から外れます。


顔も声も同じなのは当然か。本人なのだから。でもネイダさんではない。

信じたくなかった。ネイダさんが死んでいるなど。しかも死霊使い(ネクロマンサー)とやらに傀儡とされていて、敵の可能性が高いなんて、俺は、信じたくなかった。


突き付けた剣はそのままに睨みあっているとネイダさんが困ったような顔で俺をみる。


「ルーカスさん、剣を下ろしてください。あなたはそこの忌み子に騙されてるんです」


どうして、その事を知っている。レティが忌み子と呼ばれていた事は俺以外には師匠と先生しか知らない情報だ。俺達以外にレティが忌み子と呼ばれていた事を知っているとすればそれは…。


「その忌み子をこちらに渡してください。それは危険な存在です」

「レティは忌み子じゃない。どこでそんな出鱈目な情報を仕入れたんだ?」

「見ればわかります。それは禍の忌み子です」


一歩踏み出してネイダさんに向かって剣を振り下ろす。


俺達以外に今この世界でレティが忌み子、しかも禍の忌み子と呼ばれていた事を知っているとすれば、それはレティを禍の忌み子とした奴らだけ。当然ネイダさんであれば知らない事。知っているという事は、俺が視たステータスは間違いではなかったということだ。


俺が振り下ろした剣から後方に飛び退る事で避ける。その顔からは完全に表情は無くなっていた。


ありがとうございました。

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