表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽の勇者と月の巫女  作者: 涙花
勇者と巫女の出現
86/100

短いです。

軽い報告会を兼ねた食事も終わった後、レティは早速回復薬(ポーション)作成をしている。

今日は俺が先に仮眠をとる事になったので、師匠達と一緒に横になっていた。


「なんでレティは『禍の忌み子』だと思われ続けたんだろうな」


そんな事を呟いたのは師匠だった。


「どうしたんですか。突然」

「いや、呪いを解く力を持ってるのになんで『禍の忌み子』だと思われ続けたのかと思ってな」


それもそうだな。レティはキスすることで呪いを解呪出来る事を知っていた。おそらく他の奴も知っていただろう。でも今のこの世界の常識からすると光属性を持っていて呪いも解呪出来るレティは『巫女』とされてもおかしくない。むしろ、巫女だといわれた方が納得できるスペックの持ち主だ。


「レティの両親はもっと偉い人に相談とか確認はしなかったのか?」


テントの外で回復薬(ポーション)を作っているレティに訊いてみた。


「何の事?」」

「レティが『禍の忌み子』って事についてだよ」

「私、表向きは産まれてすぐに死んだ事になってたから」

「なんで?」

「国王様に私の事が知られたら殺されるから、産まれてすぐに死んだことにして隠したって聞いた」


鍋をかき混ぜながら何でもない事のように言ってるが、内容は結構酷い。


「殺されるって、銀髪銀目だから?」

「うん。お父様とお母様は殺されるよりはと思って私を閉じ込めることに同意したの」

「それは、レティを生贄したレティの伯父が言ったのか?」

「そう聞いてるけど、それがどうかしたの?」


本当に殺される危険があったのだろうか?

レティを忌み子だといったのも、殺されるといって閉じ込めたのも、最後には生贄にしたのも全てその伯父だ。レティの両親は殺される可能性があると思えば誰にも言えない。それを利用してレティの存在を隠したのだとしたら理由はなんだ?


「レティは疑問に思った事ないのか?それは全部レティを生贄にした伯父が言った事だぞ」

「でも私の髪と目がみんなと違うのは本当の事で…」

「『禍の忌み子』ってのも嘘で、本当はもっと違う理由があったんじゃないか?」


レティの目が大きく見開かれる。伯父を疑った事は全くないらしい。


「……違う、理由?」

「それが何かってのは分からないけどな」


思い出しても辛いだろうと思い、あまり触れないようにしていたレティの過去。

優れた才能を持っていたのに髪と目の色が違うからという理由で閉じ込められて生贄にされた。

皮肉にも生贄にされたレティだけが生き残り国は滅んだ。

疑問は残る。どうしてレティは助かったのかという事だ。レティ自身は湖に落とされたところで意識は途切れ、次に意識が戻ったのは俺と会った時で、国が滅んでいることについては、両親からの手紙で知っていたがどうして滅んだのか、どうして自分だけ助かったのか、といった事は一切書かれていなかったらしい。

謎は今だ解けそうにない。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「『禍の忌み子』ってのも嘘で、本当はもっと違う理由があったんじゃないか?」

「……違う、理由?」

「それが何かってのは分からないけどな」


私を『禍の忌み子』だといったのも、閉じ込めたのも、生贄にしたのも、それを決めたのは伯父様だというのは本当の事だと思う。もしルカの言う事が本当だったとしたら、どうして伯父様は私を『禍の忌み子』だといったの?


回復薬(ポーション)を作りながら考える。伯父様に会ったのは2回だけ。私を生贄にすると告げに来た時と生贄にされる時。いくら考えても出ない答えに溜息が零れた。完成した回復薬(ポーション)を瓶に詰めていると、テントの中からルカが出てきた。


「レティ、交代だ」

「うん。ありがとう」


鍋に残っていた最後の回復薬(ポーション)を瓶に詰めて、カバンに入れて立ち上がると自分のテントに向かう。


「おやすみ、レティ」

「おやすみなさい。ルカ」


テントの中に入ってマントと上着を脱いで横になる。目を閉じると思っていたより疲れていたのか、すぐに睡魔が訪れ私の意識は闇に溶けた。



『グズグズするな。さっさと歩け!』


自身に向けられる剣を見ても何も感じなかった。


『レティ!!』

『レティンシア!!』


両親が自分を呼ぶ声を聞きながら、ゆっくりと崖の先に向かって歩く。

足に着けられた枷は重く、着せられたドレスの裾は長く歩きにくい。初めて触れた地面と吹きつける風はとても冷たかった。

辿り着いた崖の淵で立ち止まる。下を見ると深い蒼色の湖が広がっていた。

私は今からここに落とされる。怖かった。それでも、自分の命でお父様とお母様が助かるならそれで良かった。2人が自分を愛してくれていた事も、私の命を惜しんでくれている事も分かっていたから。

背中を強く押されて、一瞬の浮遊感のあと湖に向かって落ちていく。

落ちる瞬間見えた伯父様の口は嘲笑うように醜く歪み、目は絶望に見開かれていた。

なぜ?胸に湧いた疑問。でもそれについて考える時間は既になく、目の前に迫ってくる水面と死への恐怖から意識を手放した。














ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ