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太陽の勇者と月の巫女  作者: 涙花
勇者と巫女の出現
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解呪

「俺達も食事にしよっか」

「うん。すぐ準備するね」


レティがポータージュを器によそうのを待って一緒に師匠達のテントに向かう。


「師匠、先生、起きてますか?」

「起きてる。飯か?」

「レティ特製ポタージュです」

「おっうまそうだな」


嬉しそうにポタージュの入った器を師匠が受け取る。


「先生、大丈夫ですか?」


体を起こすのも辛いらしい。なんとか起き上ったが1人で座っているのはしんどそうだ。


「ルカ、お皿持ってもらえる?」


後ろからテントの中を覗いていたレティが手に持っていた皿を俺が受け取ると、レティがテントの中に入って先生の側に座る。カバンを開けると中から大きなクッションを取り出した。


「レティはなんでも持ってるな。」


ポツリと呟いた俺の言葉に師匠が頷いている。レティが買ってるのは見たことないから、カバンを準備した奴が入れたのだろうが、何を考えていれたのだろう。

レティはそんな事など関係ないと言わんばかりに、クッションを次々と取り出して先生が凭れられるように整えていく。何個持ってるんだよ!?


「どうしたの?」


クッションを整え終わったらしいレティが不思議そうに首を傾げて見ているが、俺達は君が不思議だ。


「なんでもない」


今更なのだ。レティのする事に一々驚いてたらきりがない。諦めは肝心だ。

先生とレティに器を渡して俺はテントの外に出て、テントの入り口付近に座る。全員テントの中にいると魔物に襲われた時が危険だからな。

食事をしながら、まずレティに城で何があったのかを聞いた。勘場(かんば)達の所業には腹が立ったが、手加減も容赦もなく大事な所を蹴られたことには同情…………しない。いっそもげてしまえ!

隠し通路に落ちた事は運が良かったのか悪かったのか分からないが、無事合流できたんだから運は良いのだろう。


「よくあの靴とドレスで走り回れたな。俺はそっちの方が信じられない」

「慣れたら大丈夫だよ?」


思わずぼやけば、レティは慣れたら大丈夫だと言い切る。世の女性は皆あの靴で疾走できるのか気になるところだがそれはひとまず置いといて、勇者達の事を説明する。


「同郷?ルカと同じ世界から来た人達なの?」

「残念ながらな。レティの会った勇者の背の高い俺様が勘場光一(かんば こういち)、眼鏡をかけたのが二宮正輝(にのみや まさき)、ギルド長達と一緒にいる文句ばっか言ってるのが宮野七星(みやの ななせ)、宥めてるのが天野星也(あまの しょうや)宮野(みやの)星也(しょうや)は恋人同士だ。残る巫女だけど多分高峰耀子(たかみね ようこ)って奴だと思う」

「どうして?」

勘場(かんば)二宮(にのみや)高峰(たかみね)、この3人はよく一緒行動してたから、だな。偶々勘場(かんば)達と一緒にいた所為で星也(しょうや)宮野(みやの)が巻き込まれたのか、星也(しょうや)達と一緒にいた所為で勘場(かんば)達が巻き込まれたかのは分からないけど、現状だと前者っぽいな」


あの2人が進んであの3人組と一緒にいたとは考えにくいんだよな。巻き込まれたんだとしたら運が悪かったとしかいいようがない。


「でも全員変わった名前だな。カンバとかニノミヤとか」

「違いますよ師匠、前が姓で後ろが名前です。勘場光一(かんば こういち)なら光一(こういち)が名前です。」

「それでも変わってると思うがな。ルカは全く違和感ないが、まさか偽名か?」


先生とレティも同じことを思っていたらしく悲しそうにしている。いや、誤解だから。そんな目で見ないで!!


「俺の世界では国で名前の付け方が違うんです。母親の国では龍宮 彰斗(たつみや あきと)、父親の国ではアキト・ルーカス・ハワードが俺の名前です」

「ルカ()名前が2つあるんだね」


うん?『ルカも』ってレティもミドルネームがあるのか?


「ルカはこの人たちとお友達なの?」

星也(しょうや)は友達だ。宮野(みやの)も一応友達かな。残り3人はただの知り合い、顔と名前は知ってるけど関わりたくない連中だな」

「お友達なのに別パーティーに別れたの?」


レティが心底不思議だという顔で訊いてくる。


「レティに難癖つけてくるからだけど、違和感もあるから様子を見ようと思ったってのもある」

「違和感?」

「元の世界での宮野(みやの)はあんな攻撃的な性格じゃなかった。中身が違うんじゃないかと思うぐらい違和感がある」


俺の知っている宮野(みやの)の性格は自己中で苦手な奴や嫌いな奴とは関わらない。気に入れば全力で仲良くなろうとするそんな奴だ。例の3人組は嫌いだったらしくあまり関わろうとはしなかった。だから、レティの事が気に入らないにしても難癖付けて自分から絡んだりするのはおかしい。


「幸い宮野(みやの)が敵視してるのは今のところレティだけみたいだし距離をとればなにかあっても対処できると思う」

「わかった。お前の同郷で友人だっていうなら完全に別行動よりは見える範囲にいた方がいいだろう」

「ありがとうございます。師匠」


星也(しょうや)宮野(みやの)のことはこれでいいな。


「師匠達に何があったのかも気にはなるんですけど、その前に呪いの解呪が出来るか試しましょう」

「お前、解呪(ディスペル)使えるのか」

「いえ、俺じゃなくてレティです。それも解呪(ディスペル)じゃなくてキスで呪いが解けるみたいで」

「キス!?」


そう、キス。つまりレティが師匠達にキスをしないといけない……師匠達にキス!?


「本当なのか?本当にキスで呪いを解けるのか?」


師匠の問いにレティが眉を下げて困ったような表情を浮かべる。


「人にした事はないので解呪できるか判りません」

「……キスで解けるってのは本当なのか?」

「はい。それ以外で解いた事はありません」

「念の為聞くがレティは俺達の呪いを解いてくれって言われたらどこにキスするんだ?」

「頬?」


なんで疑問形?


「手とかじゃ駄目なのか?」

「どこでも大丈夫だと思います。お父様とお母様にキスするときはいつも頬だったので」


挨拶!?レティの国ではキスは挨拶だったのか!?


「手がいいですか?」

「そうしてもらえると助かるな」


なんだよ。なんで師匠は俺をそんな生温かい目で見てるんだよ!?

って先生まで!?なんでそんな目で見られるんだ!?


「じゃあやりますね」


後ろにいる俺の様子に気づくことなく、レティはなんの躊躇いもなく師匠の手に唇を押し当てた。


「ルカ、どうかな?」


レティが師匠の手に唇を押し当てるのを凝視していた俺はレティに呼ばれて我に返った。

そう、呪いを解呪出来たか確認しないといけない。

師匠のステータスを確認する。


名  前:アンドリュー

年  齢:45歳

性  別:男

レ ベ ル:65(冒険者ランク:C)

状  態:呪われ中、重症、

H  P: 3500/6340

M  P: 29/300

腕  力: 200

体  力: 100(240)

魔  力: 100

精  神: 120

器  用: 160

敏  捷: 180

幸  運: 50

魔法適性: 火

ス キ ル:剣術(Lv.9)・体術(Lv.7)・投擲(Lv.6)・料理(Lv.1)

耐  性:治癒(50%)

称  号:鬼教官、


説  明:呪法師の呪いにより回復薬(ポーション)治癒(ヒール)などの治癒効果が50%減少。

     呪いによる体力減少の効果で自然回復(マイナス)3%。


備  考:この呪いは解呪(ディスペル)で解呪可能。

     レティンシアの解呪(キス)ではこれが限界です。


治癒耐性が50%になってる。解呪は無理でも呪いを弱める事はできるのか。


「解呪は出来なかったみたいですけど治癒耐性が50%に減少してます。ただ、レティの解呪ではこれが限界みたいですね」


不安げに俺をみていたレティががっかりとした様子で肩を落とした。

だが冷静に考えてほしい。普通は解呪ディスペルを使わないと解けないはずの呪いを、キスだけで弱める事が出来るだけでも相当に凄いのだ。治癒耐性を50%に出来ただけでも十分だ。あとは俺とレティで治癒(ヒール)、あとは回復薬(ポーション)を使えば傷を癒すことは可能だ。


「レティ、先生も頼む」


しょんぼりしているレティを促して先生にも同じように解呪(キス)をしてもらう。

結果、先生の治癒耐性も50%に、自然回復は(マイナス)5%になった。

続けて治癒魔法を使おうとしたのだが当人達に止められた。

念には念を入れて、この国を出るまでは光属性魔法は使うなといわれ、結局レティが作る回復薬(ポーション)でのみ怪我の治療を行うことになった。


読んでいただきありがとうございました。


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