合流
このお話で溜めていたストックは最後となってしまいました。
しばらくは不定期更新となります。最低週1回は投稿できるように頑張る予定です。これからもよろしくお願いします。
レティンシアに向かって振り下ろされる剣をギリギリで受け止めた。
「間に合ったから良かったものの、無茶するなって言ったろ」
振りかえったレティンシアと目が合う。
腕に力を込めて剣を弾くとレティンシアと立ち位置を入れ替えて背に庇う。
襲ってくる連中を容赦なく斬り伏せていく。
気付いた時には、目の前にいた敵は全員地に倒れ動かなくなっていた。剣を振って血糊を落としてから鞘に戻す。
しょんぼりと肩を落として俯いているレティンシアの頭に手を乗せようとして、汚れているのに気付いて止めた。
「レティ、洗浄を頼む」
「………【洗浄】」
目を合わせず俯いたまま、蚊の鳴くような声で洗浄を唱えた。
一瞬でさっぱりきれいになる。自分でやってもまあまあきれいにしかならないが、レティンシアが使うと風呂上がりのサッパリ感がある。
きれいになった手で頭を撫でてやると、腕の中に飛び込んできた。。
「本当に無事で良かった」
そっと抱きしめてそう囁くと「ごめんなさい」と小さな声が返ってくる。
口を開いて呆けている人達を順に見やる。全員見知った顔だ。生きていた事にホッとしつつ殺気交じりの視線にそちらを見れば、師匠と先生がいた。武器屋の親仁さんと宿屋の主人の肩を借りて立っている。レティンシアが1人で戦おうとしていたことからも、戦闘に参加できない程の怪我を負ってるということか。でも、レティンシアは回復薬を大量に持ってたはずだが足りなかったのか?
肩に手を置くと、上目づかいで見上げてくる仕草が可愛いいと思っている場合ではない。
「レティ、2人の怪我そんなに酷かったのか?」
「うん。持ってた回復薬全部使ったけど治せなかったの。回復を阻害する呪いがかけられてるみたいだってギルド長は言ってた」
呪い…。視てみるか。
まずは師匠から見てみよう。
名 前:アンドリュー
年 齢:45歳
性 別:男
レ ベ ル:65(冒険者ランク:C)
状 態:呪われ中、重症、
H P: 3500/6340
M P: 29/300
腕 力: 200
体 力: 50(240)
魔 力: 100
精 神: 120
器 用: 160
敏 捷: 180
幸 運: 50
魔法適性: 火
ス キ ル:剣術(Lv.9)・体術(Lv.7)・投擲(Lv.6)・料理(Lv.1)
耐 性:治癒(90%)
称 号:鬼教官、
説 明:呪法師の呪いにより回復薬、治癒などの治癒効果が90%減少。
呪いによる体力減少の効果で自然回復-5%。
備 考:この呪いは解呪で解呪可能。
治癒耐性90%に自然回復-5%って定期的に回復しないと怪我が悪化するのか?鬼畜な呪いだな。レティンシアが解呪出来ればいいけど…。
あとは先生も確認しとくか。
名 前:ギャレット
年 齢:41歳
性 別:男
レ ベ ル:60(魔法師ランク:C)
状 態:呪われ中、重症、
H P: 2000/4500
M P: 1/670
腕 力: 170
体 力: 10(180)
魔 力: 211
精 神: 200
器 用: 190
敏 捷: 201
幸 運: 40
魔法適性: 水・風・光
ス キ ル:棒術(Lv.8)・体術(Lv.5)・投擲(Lv.4)・料理(Lv.3)
耐 性:治癒(90%)
称 号:鬼教師、
説 明:呪法師の呪いにより回復薬、治癒などの治癒効果が90%減少。
呪いによる体力減少の効果で自然回復-7%。
備 考:この呪いは解呪で解呪可能。
呪いの効果は同じだけど、先生は自然回復が-7%か。先生は多めに回復しないと駄目だな。
カバンから回復薬を7本全部取り出してレティンシアに渡す。
「レティ、先生に4本、師匠に3本飲ませてきて」
「どうして先生に4本なの?」
回復薬を腕に抱えて不思議そうに見上げてくる。
「2人を視たけど先生の方が少し回復効果が悪いんだ」
「わかった」
回復薬を持って師匠達のところに駆けて行くのを見送る。そんなレティンシアを睨む奴らを見て溜息を吐いた。
(アイツらまで召喚されてたのか。これで召喚者を4人確認出来た。宮野七星に天野星也。城にいる勘場光一と二宮正輝。残る巫女は、もしかして高峰耀子か?よく勘場と二宮と一緒だったし、可能性はあるな。)
「ちょっと、自分の先生だからって依怙贔屓するなんて最低よ!」
突然あがった罵声に現実に引き戻される。宮野がレティンシアに掴みかかろうとして星也に羽交い絞めされていた。
「おい、ナナ落ち付けって」
「セイ放してよ!さっきの事だってあたし怒ってるんだから。こんな子の所為で死ぬところだったんだから!一回引っ叩いてやらなきゃ気が済まないわ!」
合流するまでの間に何があったのか知らないが、回復薬の本数を振り分けたのは俺でレティンシアではない。止めに行こうとしたが、俺より先にブチギレた奴がいた。
「いい加減にしろ、クソガキ!」
怒りの声を上げたのは師匠だった。
「俺より傷の治りが遅いギャレットに回復薬を多めにやることの何が悪い!お前はさっきの奴らがどうして来たのか分かってるのか?お前の馬鹿でかい声が居場所を教えちまったんだよ。それがなんだ?レティが敵を殺せなければ罵り、殺せば人殺しだと罵る。何様のつもりだ!?」
宮野は本気で怒っている師匠の迫力に真っ青になって震えている。
「アンドリュー、お前が怒るのも無理ないがせめて普通の大きさで喋ってくれ。」
ギルド長が宮野と師匠の間に割って入った。
「すまん」
「いや、それより早く回復薬を飲め」
蓋を開けて渡される回復薬を飲んでいる間、ギルド長の後ろで星也が宮野を慰めているが、自業自得だろう。師匠が怒らなかったら俺がキレてた。
「ナナ、さっきは君が大声を出した所為で敵に居場所を知られてしまった。そして、今もさっき危険な状況になったのにも関わらず大声を出した。この行為がどれだけ危険なのか全く理解できていないということだな」
「それは、だって、あの子が……」
「レティンシアにも悪いところはあるが、ナナが危険を招いた事も事実だ。街の外に出るまでお喋りは禁止、セイもいいな」
「「はい」」
ギルド長が叱っている間に師匠達は回復薬を飲み終わった。
「ギルド長、そろそろ行こう。レティはアイツと一緒に後方を頼む」
「はい」
カツカツと音を立ててレティンシアが駆け寄ってくる。どんな靴を履いてるんだろう?
「後ろはあの2人で大丈夫か?」
「アイツがいりゃあ問題ない」
「ならいい」
ギルド長が先頭に戻って歩き出すと、全員ぞろぞろと動き出す。宮野と星也も項垂れながら歩いていく。
「レティ、どんな靴履いてるんだ?」
足元を見ながら聞くと裾を持ちあげて見せてくれたが、15cmぐらいのヒールがある靴だった。その靴でよく走れるな。マントの下に着てるのもドレスみたいだし、何がどうなってこうなったのか安全なとこに着いたら聞こう。
今は早くここから出て街の外に出よう。
レティンシアと手を繋いで、師匠達の後を追った。
ブックマーク、評価してくださった皆様、読んでくださる皆さま、本当にありがとうございました。
出来るだけ早く、毎日投稿出来る状態に戻せるよう頑張ります。