街への潜入
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サクサクと音を立てて草原を歩く。ケルベロスのお陰であっという間に山を越える事が出来たけど、レティンシアには魔物を餌付けしないように注意しておいた。
子供のケルべロスはとてもかわいかったそうだ。かわいくても野生動物への餌付けはよくないので注意すると、しょぼんとしていたが油断できない。気をつけよう。
次の日の夕方、俺達は無事に王都に着いた。
「王都まで来る事は出来たけど、あとはどうやって中に入るかだな」
この王都は周囲を深い堀と高い塀に囲まれていて出入り口は2か所だけ。貴族以上が使える西門と誰でも使える南門。入る時には身分証を提示するか、お金を払えばいいのだが正面から堂々と入るのは流石に無謀だろう。
「この時間だともう街に入る人は少ない。明日の朝、潜り込めそうな商隊を探そう」
「私が中に入って探そうか?」
「いや、1人になるのは危険だ。俺も一緒に街に入る」
レティンシアの手を引いて、師匠とよく行った森に入る。
襲ってくる魔物を倒して素材を剥ぎ取りながら置くに進んでいく。奥に進めば強い魔物が出る事もあるから人と遭遇する危険もないし、なによりこの森の奥にはアレがある。
「ルカ、なんか変なにおいがする」
「温泉のにおいだな」
「おんせん?」
そう、この森には温泉が湧き出ている場所があるのだ。温泉の質もなかなかいいし、小屋もあるから今日はそこに泊まるつもりなのだ。
「レティは温泉知らないのか?」
「知らないわ。おんせんってなに?」
「温泉は地面から湧き出てくる温かい水で、いろいろな効能があるんだ。腰痛とか怪我とか、あとは美肌効果とかも期待できるし、水質によっては飲む事が出来る場合もある」
「その温泉が近くにあるの?」
「そう。露天風呂になるけど俺が見張っておくからレティもゆっくり入るといい」
「うん」
毎日洗浄を使ってきれいにしてはいたが、お風呂に入る事ができるのは嬉しいようだ。
目的地である温泉には誰もいなかった。というより長く誰も来ていないらしく小屋も結構汚れていたのでレティンシアが洗浄できれいにしていた。外に作られている湯船に少し躊躇っていたが、しっかり見張っておくから大丈夫だと請け負うと、いそいそと準備をして温泉に入りに行った。
俺は今約束した通り、周囲の警戒をしているのだが聞こえてくる水音がどうにも落ち付かない。
俺が背を預けている大きな岩の向こうに、産まれたままの姿のレティンシアがいると思うと更に落ち付かない。ゆっくり入ればいいと言ったからかレティンシアはのんびりと鼻歌を歌いながら温泉を楽しんでいる。
「ルカ、ありがとう。私上がるね」
1時間ぐらい浸かっていたが、満足したらしく俺に声を掛けたあと、お湯から出る音がして小屋に入っていく。大きく息を吐くと強張っていた身体を軽くほぐす。レティンシアが小屋から出てきたら俺も入ろう。
そんな事を考えていたら勢いよく扉が開いてレティンシアが飛び出してきた。
タオルを巻いただけの恰好で。
小屋から飛び出してきたレティンシアは茫然としている俺の胸に飛びこんできた。
胸に押し付けられる彼女の柔らかな膨らみの感触から必死に意識を逸らす。
「レティ「変なのがいるの!」」
俺の言葉を遮り、小屋を指差しながら涙目になりながら訴えてくる。
「変なのって、どんな?」
「足が沢山あってぞわぞわ動いているの」
マントを脱いでレティンシアに掛けてやる。
「服を着ようとしたら、服の上にいて……ぞわぞわ動いてて…気持ち悪い」
服の上にいるのを見つけて驚いて飛び出してきてしまったらしい。タオルだけでも巻いててくれて良かったと思うべきなのか、残念に思うべきなのか複雑な気分だ。
レティンシアを連れて小屋に戻って服の上を確認するが、足が沢山あってぞわぞわ動く奴はいなかった。
「レティ、いないぞ!」
小屋の入口(小屋に入るのを嫌がった)でおそるおそる中を窺っていたレティンシアが不安そうな顔で俺をみる。
「本当に?どこにいない?服の中にも?」
矢継ぎ早に聞いてくるので、服を上から一枚ずつ広げてパタパタと振っていく。そして、何枚目かの服を取り上げた時、その下に在ったのは薄いピンクの小さな布だった。
当然だろう。むしろなければ困るモノだ。なんとか視線を外して服を広げてパタパタ振ってみたが、やはりいなかった。ちらりと残っているモノを見たが流石にアレに触れる勇気は無い。
「レティ、服にもいないぞ」
レティンシアに声を掛けると周囲を警戒しながら小屋に入ってきた。服を渡すとほっとしたように受け取ったので、俺は小屋の外にでてレティンシアの着替えが終わるのを待っていたのだが、扉を閉めた直後中から甲高い悲鳴が上がった。
「どうした!?」
扉を開けて中に踏み込むと、座り込んだレティンシアが顔を覆って泣いていた。
「そこに…」
レティンシアが指差す先には、薄いピンクの布が落ちていた。
かすかに動いているので、そこにいるのは確かなようだ。
アレに触らないといけないのか!?
薄いピンクの小さな布、レティンシアの……パンツに………。
悩んでいても仕方ない。本人の許可もある。問題ない。俺が触りたくて触るんじゃないんだ。不可抗力だ。心の中で言い訳してから、意を決してパ…ピンクの布を持ちあげるとその下にいたのは、レティンシアの言っていた通りの足が沢山ある虫だった。
気持ち悪い虫だな。毒は持ってるんだろうか?
ポーチから古い布を取り出して虫を捕まえると外で布ごと燃やす。
「もういないぞ。」
「本当?絶対?」
落ちている服をもう一度確認する。もちろんピンクの布も確認した。上下セットの上の布も調べたがいなかった。
「いない。だから服早く服着てくれ」
その後、服を着たレティンシアと交代して俺も温泉に入った。俺が風呂に入っている間にレティンシアが夕飯を作ってくれたので、それを食べると早々に寝ることにした。
翌朝、朝食を食べて森を抜けると街に近づいて、門を通り抜ける人達を眺めていた。3時間ぐらいたったころい3台続けて幌馬車が来た。
「行くぞ」
レティンシアに声を掛けて、最後の幌馬車にこっそり近づいて中を見ると、沢山の樽や箱が詰め込まれていた。隠れるスペースはありそうなので忍び込んで荷物の影に隠れる。
馬車が止まり御者と門番が少し話して荷台を門番が覗き込んだが、ざっと見てすぐに「行っていいぞ」という声が聞こえてきた。無事に通過できそうだ。
ガラガラと音を立てて馬車が街の中を進んでいく。少しすると馬車が止まった。荷物の影から外を確認して周囲に人がいない事を確認すると荷台から降りて急いでその場を離れた。
自分の文才の無さに衝撃を受ける今日この頃。
頭の中ではこんな感じと決めているのに、言葉にするのは難しいです。
拙い文章を読んでくださってありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。