第3章 プロローグ
今日から第3章に突入!
光が収まったそこは石造りの部屋だった。
部屋の中には薄桃色のドレスを着た女と剣を持った男が2人いる。
ドレスを着た女が前に出て、胸の前で指を組む。
「わたくしは、アーロゲント国第1王女アンジェリーナです。勇者様、巫女様。お願いします。どうか、どうかこの世界を、わたくし達をお助けてください。」
異世界召還のテンプレ的なお願いをされた。
どうしてこんな事になったのだろう。
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授業が終わり、お隣で幼馴染のナナと一緒に家に帰る途中、偶々同じクラスの奴らと会った。正直こいつらはあまり好きではないので遊びに行こうという誘いを用事があると断ったのだが、しつこく誘われ仕方なく一緒にカラオケに行った。カラオケボックスに入り、飲み物を注文して歌う曲を選んでいると突然床が白く光って気が付いたらここに居た。
最近よくネット小説で見かける異世界召還を自分が体験するとは夢にも思わなかった。
そして、このテンプレ異世界召還を体験しているのは俺だけではない。
男子1番人気の高峰耀子、男子3番人気で幼馴染の宮野七星
女子1番人気の勘場光一、2番人気の二宮正輝、そして人気ランキング外の俺天野星也の5人だ。
ドレスを着た女は勇者様と巫女様と言ったから、2人は選ばれし者(笑)残り3人は勇者召還に巻き込まれた不運な人。そして俺は巻き込まれた不運な人の方だろう。
アイツらにかかわるんじゃなかった。俺は異世界召還されている場合じゃないんだ。
去年突然いなくなったアキ、俺の親友を探しているのに異世界に召還されてたら探せないじゃないか!
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「あの、もしかしてここって異世界であたしたちは勇者召還という名の世界を跨いだ誘拐をされた被害者ってことですか?」
「……ここが皆様がいらっしゃた世界とは別の世界である事、わたくし達が勇者召還を行ったことは間違いありません。今この世界は危機に瀕しているのです。魔王が現れて以来、魔物に襲われたり、人族が魔族に誘拐される被害が増えています。わたくし達人族はもう勇者様と巫女様にお縋りするしか他に道は残されていません。」
「だからって世界を跨いで人を誘拐しないでよ。あたし達にだって生活あるし、やりたい事だってあるんだよ?それなのに、別の世界の為に命張れって非道じゃないかな?あたしはやりたくない。だから元の世界に帰して。」
「オレもナナの意見に賛成だな。やる事あるから元の世界に帰してくれ。」
俺はアイツを探したいんだ。さっさと元の世界に帰せ!!
「おい、困ってる人達を見捨てる気か!」
「キミさ、人として最低な事してるってわかってるの?」
「なんだよ、勘場。じゃあお前が助けてやればいいじゃん。二宮もさ、人を世界跨いで誘拐するのは最低な事じゃないっていうのか?それに勇者と巫女って本当は複数人じゃなくて1人ずつじゃないの?俺とナナが抜けても勇者は2人、巫女は1人いるんだからいいじゃん。俺は元の世界に帰ってやりたい事やる。」
「宮野さんあなた最低ね。自分さえ良ければそれでいいの?」
「あたしは、自分の方が大事なの。それに誘拐されたのになんで誘拐犯を助けてあげないといけないの?」
「勇者様方、どうかお気をお鎮めください。」
アンジェリーナ王女が大きな声で俺たちの言い争いに割って入った。
「大変申し訳ございませんが、わたくし達の力では元の世界にお帰しすることは出来ません。ですが、伝承では魔王を討伐後に帰られた方もいらっしゃいます。」
「つまり、魔王を倒せば帰れるかもしれないから魔王を倒せっていうんだろ?それって完全な脅しだよな。」
「おい天野、王女様に失礼だろ!…アンジェリーナ王女様、彼が酷いことばかりいってすみません。
俺は勘場光一といいます。俺でよければこの世界の人たちの為に力になります。あと俺のことは光一と呼んでください。」
「アンジェリーナ王女様、僕は二宮正輝。正輝と呼んでください。僕もこの世界の人たちの為に力になります。」
「わたしは高峰耀子です。耀子と呼んでください。この世界に人たちの力になれるように頑張ります。」
「勇者様、巫女様ありがとうございます。ではこれからわたくしの父でありこの国の王であるエドワード9世陛下のもとにご案内いたします。」
いやいや、オレは勇者(笑)なんて承諾してないんだけど。ナナも巫女(笑)なんて承諾してない。
承諾してないオレらはどうすればいいわけ?なし崩しに勇者(笑)と巫女(笑)させるつもりとか?
「王女様、オレとナナはどうすればいいわけ?元の世界に帰れないにしても、オレたち勇者(笑)と巫女(笑)なんてする気ないんだけど。」
「分かりました。では魔法属性に光と治癒がなければこの城から出て行ってもらっても構いません。出て行かれる際には、お金や服、住む場所も準備致します。その代り、光か治癒の属性がある場合はわたくし達に協力していただけませんか?」
「協力って何すればいいわけ?」
「神殿にて怪我人の治療や病人の看護をしていただきたいです。」
「どうする、ナナ?」
「戦わなくていいなら私はそれでいい。」
「王女様、その条件本当に守ってもらえるんですよね?」
「もちろんです。」
「それならオレとナナはそれでいいです。」
ようするに魔法属性に光と治癒がなければ勇者でも巫女でもないってことか。無いことを祈るしかないな。
王女様に連れられて国王陛下に挨拶した後、オレとナナの事を説明。王様もこの条件を飲んだ。
あとは属性が無いのを神に祈るばかりだ。
そして1人ずつ魔法属性を調べる水晶玉のような物に触れるように言われた。
光は白、治癒だと銀に光るらしい。
トップバッターは勘場だった。火・雷・光の3属性。
次が二宮、水・風・光の3属性。
3番目が高峰、風・地・治癒の3属性。
4番目がナナ、火・水・風の3属性。
5番目がオレ、地・雷・闇の3属性という結果だった。
特に高峰の治癒は珍しいらしく、流石巫女様だと褒められていた。
他の2人も光属性があるから流石勇者様ですと褒められた。
オレとナナは白い目で見られた。別にいい。光とか治癒とか持ってなくてとても嬉しいです。
約束した通り、お金とこの世界の服を貰った。ついでに髪を染める染料も貰った。黒髪は目立つから染めろという事らしい。使ってみたら俺は赤茶色、ナナは金茶色になった。簡単にお金の価値を教えてもらいさっさと城を出ようとしたのだが、勇者(笑)と巫女(笑)に引き留められた。
何も分からない場所でどうやって生きるの?
俺たちと一緒にいた所為で巻き込まれたんだから俺達が助けてやる。俺達は困ってる人を見捨てたりしない!
クラスメイトだもの。宮野さんは私のお手伝いとしてお城に置いてもらえるようにお願いしてあげる。
天野は俺と正輝の手伝いとして置いてもらえるようにしてやる。
余計なお世話だと思ったが、『出ていくのはこの世界の事を学んでからにしようよ。利用できるものは利用してからでも遅くないよ。』とナナが言うのでそうすることにした。
俺は早く元の世界に戻ってアキを探すんだ。
ようやく本格的に動き出す…はず。
がんばります。
これからもよろしくお願いいたします。




