冒険者になろう!③
「ルーカスさん、属性は分かりましたか?」
笑顔で聞いてくるネイダさんに、水晶玉の色が複数の色に変わることがあるのかを聞いてみた。
「色が変わる場合ですか?複数の色に変わる場合は、変わった色すべての適性を持っていることになりますよ。もしかして1色ではなかったんですか?」
「(念のため、2つぐらいにしとくか。)赤と茶色だったので、火と土ですね。」
「水は無かったんですか・・・。残念でしたね。でも、2つあって良かったですね。」
「(複数持ちはあまり珍しくないのか?)2つ以上持ってる人は多いんですか?」
「2つ持ってる人は多いですよ。3つ持ってる人はちょっと珍しいですね。でも、4つ以上になると、滅多にいません。そして、今の最高属性持ちは魔法ギルド長です。地・水・火・風・雷・闇の6属性持ちなんですよ。」
「そうなんですか。(少なく言っておいて正解だったな。)」
「でも、やっぱり一番すごいのは、初代月の巫女姫様ですよね!全属性持ちで、全ての最高位魔法を無詠唱で操り、魔族を殲滅した天才魔法師にして、どんな傷も一瞬で治した癒しの姫。破魔と癒しの力を持つ聖なる月の巫女姫様!初代月の巫女姫様を超える魔法師も巫女も未だ現れていないんですから、本当にすごいですよね!」
「(全部本当だったら)すごいですね。」
「そうですよね!・・・・・・すみません。ギルドカードの手続き中でしたね。」
我に返ったらしいネイダさんが、カウンターにギルドカードと針と布を置いた。
(針と布なんて、何に使うんだ?)
「では、このカードに血を1滴落としてください。」
ネイダさんが針を渡してくる。傷を作る為の針だったようだ。
右手に持った針を、左手の人差し指に刺す。ちくりとした痛みの後、血が溢れてくる。
溢れてきた血をカードの上に落とすと、カードが一瞬淡く光った。
光が治まった時には、カードの上には何も無かった。俺が落とした血も、もちろん無くなっていた。
俺の血はどこに消えたのだろうと思い、ギルドカードをじっと見ていると、ネイダさんが布を差し出してきた。貰った布で針をさした指先を抑える。そんなに深く刺してないし出血はすぐに止まるだろう。
「どうぞ、ルーカスさんのギルドカードです。依頼を受ける時や完了報告の時には、このギルドカードを受付に出してください。それと、このギルドカードは身分証にもなるので無くさないように気を付けてください。万が一、紛失した場合は、再発行手数料として小金貨1枚が必要です。あと、ギルドカードに魔力を流し込みながら、『クエスト』と念じると現在受けている依頼の達成状況の確認が出来ます。たとえば、スライム20匹を討伐というクエストを受けた場合、今何匹討伐したのか確認する事ができます。但し魔力を使用するので頻繁に確認していると魔力不足になってしまうので注意してください。あと、こちらの腕輪をどうぞ。」
(ギルドカードの取扱説明よりギルドカード本体のしくみが気になる。何で作られてるんだろう?)
最後に木製の腕輪を渡された。
「その腕輪は冒険者ランクによって材質が変わります。Gが木、Fが銅、Eが鋼、Dが翡翠、Cが黒曜石、Bが銀、Aが金、Sが白金となっています。この腕輪とギルドカードがないと、依頼を受ける事が出来ないので気を付けてください。壊れてしまった場合は、最寄りの冒険者ギルドに行って新しい物と交換してください。但し、壊れた腕輪が無いと無償での交換はできません。粉々でもいいので、必ず持って行ってくださいね。」
(最低ランクの腕輪が木製なのは、死亡率が高いからとかだったりするのかな。)
「ギルドカードと腕輪の説明は以上ですが、質問などはありませんか?」
「いえ。特にありません。」
「では次に冒険者ギルドについて説明します。まず、冒険者ギルドに登録している冒険者にはランクがあります。このランクはG~Sまであって、ランクが上がるごとに受けられるクエストの種類が増えていきます。ルーカスさんは現在Gランクなので、受けられるクエストは採取や街中のお手伝いとかになります。クエスト達成していくと、ランクも上がりますので頑張ってください。ランクが上がると緊急招集がかかる事もありますので、その際はご協力をお願いします。」
「緊急招集ってなんですか?」
「街や近隣の村が大量の魔物に襲われた場合、討伐や街や村を守るために冒険者を集めるんです。ただ、死ぬ可能性もあるので強制ではないです。嫌な場合は断っていただいても構いません。」
「断ったら罰則とかはあるんですか?」
「ありません。ただ、出来るだけ参加していただけると助かります。」
「分かりました。」
「冒険者ギルドについての説明は以上です。他にご質問はありますか?」
「大丈夫です。ありがとうございました。」
「クエストはあちらの掲示板か、こちらの受付でもご紹介できますのでご相談ください。」
よかった。文字を覚えるまでは受付で紹介してもらおう。せっかくだし簡単なクエストでも受けてみるか。
「あの、クエストを受けたいのでなにか紹介してもらえませんか?」
「今からですか?遅くなると危険なので明日からにした方がいいですよ。」
それもそうだな。装備も買わないといけないし、今日は装備の準備をして依頼は明日からにするか。
「分かりました。明日からにします。あとすみません。どこかおすすめの安い宿はありませんか?出来たら食事もおいしいと嬉しいです。」
「でしたら、踊るシルフ亭がいいですよ。」
悩む様子もなく教えてくれた。そんなに人気があるのか?さらさらと慣れた手つきで地図を書いている。
「はい、どうぞ。」
書き終わった地図を受け取って見てみる。ここからそんなに離れていないようだ。
「ありがとうございました。」
お礼を言って俺は踊るシルフ亭に行く為に出口への向かった。
ありがとうございました。