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太陽の勇者と月の巫女  作者: 涙花
転移したら女の子を拾いました。
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ギルド長からの手紙

朝起きると外は土砂降りの雨だったこの雨の中クエストに行くのは億劫だったので各々自由にのんびりと過ごすことになった。


一夜明けたら先生もレティンシアも落ち着いたらしく、昨日よりは穏やかに禍々しい物を作っている。


「レティ、上着のボタン付けてもらえないか?」


禍々しい創作物を隣で作られるのは落ち着かないので、上着のボタン付けをお願いしてみる。

顔を上げたレティンシアは手に持っている物がなければいつもと変わらない穏やかな雰囲気を纏っている。


「…ルカの上着なら今新しいのを作ってるの。今日中に仕上げるからそれでもいいかな?」

「ホントか!ありがとう。あとできたらシャツも、もう1枚欲しい。レティの作ってくれたこのシャツすごく動きやすいんだ。」


そう言うとレティンシアがクスリと笑った。


「気に入ってもらえて私も嬉しい。上着が完成したらシャツも作るね。」


いそいそと禍々しい創作物を仕舞うと、俺の上着と思しき布を取り出すと早速縫い始めた。纏う雰囲気も柔らかくなったので一安心だし新しい上着とシャツも作ってもらえて一石二鳥だ。


先生はほっとこう。


本を読んだり、裁縫をしたり、不貞寝をしたりして各々ゆったりとした時間を過ごしていると、扉が乱暴に叩かれた。扉に向かおうとしたレティンシアを止めて、俺が扉に向かった。


「どなたですか?」

「冒険者ギルドの者です。こちらにアンドリューさんかギャレットさんはいらっしゃいますか?」


師匠達を振り返ると怪訝そうな表情で顔を見合わせた後、師匠が扉に、先生がレティンシアの側に行く。

警戒しながら扉を開ける。


「俺がアンドリューだがなにか用か?」

「アンドリューさんかギャレットさん宛てにクリュスタのステラギルド長から急ぎの手紙がきておりましたのでお届けにきました。」

「ステラ、ギルド長から?」

「はい。お渡しする前にギルドカードを見せていただけますか?」


師匠がギルドカードを見せる。


「ありがとうございました。ではこちらが手紙です。あとここに受け取りのサインをください。」


手紙を受け取り、渡された紙にサインをして返すと冒険者ギルドの人は帰っていった。


「手紙わざわざ届けてくれるんですね。」

「支部は違えどギルド長からの手紙だからな。」


師匠が手紙の封を切って読んでいくと、眉間にしわが寄っていく。

なにかよくない事でも書かれているのだろうか?


読み終わった手紙を今度は先生に渡し、先生が読み終わった後俺にも見せてくれた。

手紙の内容は実にシンプルだった。


「『今すぐクリュスタに来い』ってどういうことですかね。」


手紙にはその一言だけが書かれていて、理由は一切書かれていなかった。

正直、クリュスタにというか俺を召喚した国でもある隣国アーロゲント国には行きたくない。証拠は無いが、俺をレティンシアの島に飛ばした奴らはこのアーロゲント国から送られた刺客だと俺達は思っている。このドミニオン国で襲われているのだから、どこに居ても危険なのかもしれないが戻ってしまえば次は国境を越えられなくなる可能性もあるし、自分達の国なら刺客だって送り放題だろう。


レティンシアの話だと転移魔法は出口を設定しないで使った場合、どこに飛ばされるか全く分からないらしい。海の底や空中に転移する可能性もある。そして、大陸の転移魔法は全身無事に転移出来る事も稀。全身無事で、安全な場所に転移できる可能性は1%にすら満たない。

おそらく刺客を放ったアーロゲント国の奴らは俺は死んだと思っているだろう。ならそのまま死んだと思わせておきたい。戻ればどこからか俺が生きてる事がバレるかもしれないので、尚更戻りたくないのだ。


ただ分からないのは今まで俺を放置していたのに今更俺を殺そうとした事だ。師匠達はほっとけば勝手に死ぬとでも思ってたんじゃないかと言っていたが、もし本当にそうだとしたら他力本願なおめでたい頭の奴らだと心の底から思う。


「どうしますか?たぶん俺が生きてる事はまだバレてないと思いますけど、戻ればバレる可能性は高いですよ。」

「それはそうだが、じゃあ俺だけ戻るか?」

「1人は危険だ。私達がルカと一緒に行動していたのは知られている。口封じするために襲われる可能性がある。」


アンドリューさん(師匠)ギャレットさん(先生)が俺と一緒に行動していたのは既に知られているから襲われる可能性は十分にあるだろう。現に俺がいなくなった後1回襲われているんだから、1人になるのは危険だ。俺も行けない。レティンシアもわざわざ危険な場所に連れて行けない。そうなると残る選択は一つだけだ。


「私とアンドリューでクリュスタに向かうのが一番いいだろう。」

「それしかないですね。」


2組に別れるしかないがそうなると連絡を取るのが難しい。手紙だとタイムラグがありすぎるし、相手に届いているか確認できない。


「ケータイとかあれば便利なのに…。」

「『けーたい』ってなに?」


静かに話を聞いていたレティンシアが首を傾げて質問してきた。


「遠くにいる相手と会話が出来る俺の世界の道具だよ。」

「ルカ達の世界には便利な物があるんだな。」


無いものを欲しがっても仕方ないな。


「ベルンまでは一緒に行って俺たちは師匠達が戻るまでベルンを拠点に動きます。どうしても移動しないといけないときはギルドに言付ける。これでいいですか?」

「ああ、それでいい。明日雨が上がったら出発しよう。」


明日からの行動予定も決まったので各々自由行動に戻った。




夜、みんなが寝静まったあとレティンシアがそっとベッドから抜け出し、向かった先はクローゼットだった。静かにクローゼットの中に入って扉を閉めた。その後レティンシアが出てくるまで中からは物音ひとつしなかった。


明け方、他のメンバーが起きる前にクローゼットの中から出てくるとベッドに潜り込み眠りについた。

レティンシアがクローゼットの中で何をしていたのか知る者は誰もいない。

ありがとうございました。

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