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太陽の勇者と月の巫女  作者: 涙花
転移したら女の子を拾いました。
61/100

勇者と巫女

平均4,000文字での投稿を頑張っていたのですが、ストックが無い状態での毎日4,000文字投稿が難しく、当分の間平均2,500文字ぐらいでの投稿に変更させていただきます。

頑張りますのでこれからもよろしくお願いいたします。

師匠と先生からの説教が終わった後、レティンシアは肩を落としながらも夕飯の支度に勤しんでいる。スープは煮込む段階にいったようで、今は目の前でビッタンビッタン跳ねている魚を触れないらしくおろおろしていた。まな板の上からは早々に逃げられていたが、とうとう作業台の上からも逃げられそうになって泣きそうになっている。魚の捌き方を教えようとしていた先生は後ろで必死に笑いを堪えていた。


結局、先生が逃げる魚をまな板に戻して押さえてやりながら捌き方を教えていた。レティンシアも動かなければ問題なかったらしい。

そうして出来あがった割と豪勢な夕飯を食べ終え、次の目的地について話し合った。


レティンシアの国に伝わっていた月の巫女の伝承。月の巫女が全ての門を開く力を持っていたと伝わっているが、どうやって開いていたのかは分からないらしい。


「でも月の巫女が門を開く時、本当に贄とかは必要なかったのか?」


師匠の問いは俺も疑問に思っていたことだ。送還魔法で門を開くと贄がいるのになんで月の巫女が開くと贄がいらないってことになるんだ?


「送還魔法と召喚魔法は門をこじ開けて道を繋ぐから贄が必要なのだと思います。でも月の巫女は『門をこじ開けた(・・・・・)』ではなく、『門を開いた(・・・)』と云われています。」


レティンシアがこれは自分の想像だと前置きをして語った事を要約するとこういうことだった。


①贄とは門をこじ開けた場合に取られる通行料。

②月の巫女は正当に門を開く方法を知っていた。

③月の巫女は単独で門を開く力を持っていた。


「もし月の巫女自身に門を開く力があったとしたら、巫女が現れない限り帰れないということにならないか?」


レティンシアの仮説に師匠が容赦ないつっこみを入れた。そうなのだ。正当に門を開く方法が分かっても月の巫女しか扱えないなら意味がない。


「大陸では約500年周期で太陽の勇者が現れているのでしょう?太陽の勇者が現れれば絶対に月の巫女もいるはずなの。逆に月の巫女がいなければ太陽の勇者は現れないわ。」


異世界から召還されたことは言ったけど間違えて勇者として召還されたことは言ってないんだよな。

それに他にも疑問はある。


「レティ、勇者がいないと巫女もいないってなんで言いきれるんだ?」

「太陽と月、どちらも無いと困るでしょう?」


当たり前だというレティンシアの反応に俺たちの方が困る。


「でも、大陸の伝承では2人揃ってたのは最初だけ、あとは勇者か巫女のどちらかしかいないぞ。」


またしても師匠が容赦なくつっこむ。レティンシアの理屈でいうと片方しかいないという事はあり得ないらしい。じゃあ今まで現れた勇者と巫女はなんだということになる。


「……その勇者と巫女は太陽の勇者でもないし月の巫女でもない。ただの勇者とただの巫女。」

「どうしてそんなに2人揃う事に拘るんだ?」


頑なに2人揃わないといけないというレティンシア。どうしてそんなに拘るんだろう。


「………片翼では空は飛べないもの。」


小さな声で呟かれた言葉だったが静かな洞窟内ではその声はよく響いた。


「太陽と月が共に空にあるように、太陽の勇者と月の巫女も共にある。

太陽の勇者は己の月たる者を求める。

月の巫女は己の太陽たる者を求める。

陽の光を浴びて月の巫女は目覚める。

月の光を浴びて太陽の勇者は目覚める。

勇者は巫女を護り、巫女は勇者を護る。

勇者が巫女に力を与え、巫女が勇者に力を与える。

勇者が巫女を愛し、巫女が勇者を愛する。

太陽の勇者と月の巫女は2人で1対の翼。」


瞳を閉じて熱に浮かされたようにレティンシアが言葉を紡ぐ。

異様な雰囲気に言葉を掛けられなかった。


これは誰だ?

これは…レティンシアではない。


「太陽の勇者と月の巫女が揃うとき、異界への門が開かれ、橋が架けられる。

門の鍵は月の巫女。鍵を与えられし唯一の者。

世界への橋は太陽の勇者。橋を与えられし唯一の者。

月の巫女以外の者、門に触れてはならない。

太陽の勇者以外の者、世界に橋を架けてはならない。

破れば多くの命が失われるであろう。」


ぐらりとレティンシアの体が傾いで後ろに倒れる。

とっさに伸ばした手が間に合い抱きとめることは出来たが意識はなかった。



「今のは『レティンシア』ではないですよね?」

「レティンシアの体を借りた別のなにかだろうね。」

「それよりレティンシアをテントに寝かせてこい。顔色が悪いぞ。ついでにルカ、お前も寝ろ。」


腕の中のレティンシアを見下ろすといつもより血の気が無くなって青ざめている。彼女を休ませるのは分かるが、なんで俺まで…。


「お前寝てないだろう。だから寝ろ。」

「ルカ、考えるのはレティンシアが起きて話を聞いてからでもいいだろう。何か覚えているかもしれないしね。だから一度寝ておいで。」


師匠と先生に言われてしぶしぶテントに戻るとレティンシアを寝かせて俺も横になった。

横になった途端強烈な眠気が襲ってきて、俺の意識はあっという間に闇に沈んだ。


ありがとうございました。

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