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太陽の勇者と月の巫女  作者: 涙花
転移したら女の子を拾いました。
55/100

再会と初対面

洞窟の入り口に2つの人影が現れた。


「俺達は旅をしている者だ。今夜一晩俺達にもここを使わせてもらえないか?」


あれ?この声もしかして…!


「師匠ですか?」

「「!?」」


バタバタと走ってきたその人たちは、間違いなく俺の師であるアンドリューさんとギャレットさんだった。


「「ルカ!」」

「師匠、先生どうしてこんなところにいるんですか?」

「それはこっちのセリフだこの馬鹿!どんだけ探したと思ってやがる。」

「師匠、ちょっと静かに。彼女が起きる!」


大きな声で怒鳴る師匠に慌てて静かにするように伝える。


「彼女ってお前俺達が必死に探している間に女といちゃついてたのか!」

「ルカ、どれだけ私達が心配していたと思っているんだ!」

「いちゃついてません。彼女はいろいろあって連れて来た子で今眠ってるんです。説明はしますから静かにしてください。」


なんとか師匠達を黙らせてからそっとテントの中を覗くと、変わらずに眠っている事に安堵しながら師匠達を振り返る。


「それにしても、なんで師匠達はここに居るんですか?ここはどこなんですか?」

「なんでって、お前を探していたからで、ここはドミニオン国に決まってるだろう。」


ドミニオン国?もしかしてあの遺跡が俺達が向かってた遺跡だったのか?


「それで、お前はどこに居たんだ。それとそのテントの中に居るのは誰だ?」


俺は、師匠達と離された後転移魔法で遠くの島に飛ばされた事、そこで結晶の中に閉じ込められていたレティンシアを見つけて目覚めさせたこと、彼女のいた島は彼女1人を残して滅びていた事、彼女の島には転移陣と呼ばれる魔法陣があって、遠く離れた王都にのみあるという大陸への転移陣を目指して旅をして、今日ようやく王都にたどり着き、転移陣を使って大陸に戻ってきた事を話した。

ここまで話している間に夜が明けてしまった。


「つまり、そのテントの中にいる少女が島唯一の生き残りで、その島も人が住めるような場所でもなかったから連れてきたってことか。」

「そうです。」

「これからの旅にも連れて行く気か?」


師匠からの問いに俺が答える権利は無い。レティンシアを傷つけたのは俺だ。


「………いえ、実はこの大陸に戻った直後、レティンシアは転移陣を消して復元も出来ない様に壊してしまったんです。」

「なんだって!?そんな貴重な魔法陣を破壊したのか!」


先生は怒るだろうなとは思ってたけど、レティンシアの前ではそんな顔してほしくない。間違いなく怖がる。


「はい。俺もどうしてそんな事をしたのか訊いたら、転移の魔法陣は自分達が作りだした物だからと、そして、転移魔法は禁忌魔法に繋がるから教える事はできないと言われました。」

「「・・・・・・・・・。」」


「禁忌魔法が何かを訊いても彼女は答えてはくれませんでした。なので別の世界に行ってみたいんだと言ってみたら、『別の世界への道を開くのは禁忌とされている』と言ったんです。だから問い詰めました。召喚魔法を創ったのはレティンシア達ではないのかと、そして彼女はそれを認めました。どうして召喚魔法を創ったのか訊いても教えてはくれませんでした。彼女の話では異なる世界への扉を開けて道を繋ぐには沢山の生贄が必要なんだそうです。彼女が教えられないという理由を理解は出来ても俺は納得できませんでした。だから、泣いて謝るレティンシアをその場に置き去りにしてしまいました。その結果、レティンシアは偶々遺跡に来ていた奴らに捕まって、あと少し遅かったら穢されてました。彼女が眠っているのは、あいつらがなにか薬を飲ましたか、嗅がしたかした所為です。でも元はといえば俺が何も知らない彼女を1人にした所為です。」



ゴチン!!

ゴスン!!!


連続して頭に拳骨を落とされる。


「お前は、その子がずっと幽閉されていて世間知らずだという事を理解しておきながら、遺跡の奥に1人置き去りにするとはどういうつもりだ!」

「ルカの腹立ちは判るが、女の子を置き去りにするのはどうかと思うよ。その子が無事だったのも単なる偶然で運が良かっただけだ。取り返しのつかない事になっていた可能性がある事を理解すべきだね。」


正座をして師匠達から説教をされる。当たり前だ。あんな危険な目に遭わせたのだ。


「お前は罰としてとりあえず朝飯採ってこい。俺達がここにいるからその子も安全だから安心しろ。」

「はい。でも、テントの中は覗かないでくださいよ。」


テントを覗かない様に釘は刺しておく。


「わかった、わかった。さっさと行って来い。」


師匠達に追い出されて朝御飯の調達に出る。急いで集めて戻らないと流石に目を覚ましてしまう。

川で魚を取り、鳥を手当たり次第に落とす。川で捌いて、捌き終わったのはアイテムポーチに入れる。残りが半分になったところで洞窟の中からレティンシアの悲鳴が聞こえた。


「落ち付け、大丈夫だ。俺達は敵じゃない。」


レティンシアを必死に宥めている師匠の声が聞こえる。そして怯えた彼女の声も。


「いや、いや、来ないで!いやあ、ルカ、ルカ―――!!」

「レティ!!」


名前を呼んで駆け寄る。


「ル、カ…。ルカ、ルカ。」


隅に小さくなっていたレティンシアが手を伸ばしてくるので、その手を取って抱き寄せる。ゆっくりと背中を撫でて落ち付かせていると、刺すような視線を感じちらりとそちらを見ると師匠と先生が眉間に皺を寄せて俺達を睨んでいた。


(師匠も先生もそんな顔してると更に泣かれますよ。)


嗚咽も治まってきたのでそっと名前を呼んでみると、泣き腫らした顔で見上げてくる。


「ごめん、レティ。酷い事言って置いて行ってごめん。怖かっただろう。」

「ごめんなさい、ルカ。ごめんなさい。」

「いいんだ。レティが話せない事、話したくない事は無理に話さなくてもいい。だから、一緒に来てくれるか?」

「………置いて行かないの?連れていってくれるの?」

「レティが嫌じゃなければ一緒に行こう。」

「一緒に行く。だから、置いて行かないで。」


ギュッとしがみ付いてきたレティンシアを抱きしめていると更に視線が痛いが気にしない。


「おい、いい加減にお前ら離れろ。」


レティンシアの柔らかな温もりを堪能していると後ろから低い声が掛かる。腕の中のレティンシアが怯えてしまっているので、抱きしめながら大丈夫だと囁いてから少し離れて、師匠達を見ると、とっても凶悪な顔でこっちを睨んでいた。


「師匠、先生もそんな顔してると、レティンシアが怯えるので止めてください。」

「師匠?先生?」


小さく呟きに視線を落とすと、レティンシアが困惑した表情で見上げていた。


「話しただろ。剣の師のアンドリューさんと魔法の師のギャレットさん。ここで偶然合流することができたんだ。だからこの2人は大丈夫。絶対にレティに危害を加えたりしない。安心していいよ。」


ちらりと2人を見たレティンシアが全力で目を逸らし涙目で俺を見上げてくる。

怖かったんだろう。あの顔じゃ怖くても仕方ない。

でもこのままだと話も進まないのでレティンシアの手を引いて師匠達の前に行く。


「師匠、先生、紹介します。レティンシアです。レティンシア、こっちの顔が怖いほうがアンドリューさん、眉間にしわ寄せてるのがギャレットさん、俺の師だよ。」


俺の紹介に頬を引き攣らせていたが怒鳴ればレティンシアが怯える事が判りきっているので怒鳴る事は出来ないでいる。

レティンシアが恐る恐る俺の後ろから出てきた。


「………初め、まして。レティンシアです。」


ぎこちなく挨拶をしてぺこりと頭を下げると後ろに隠れてしまう。


「レティ?見かけより優しいから大丈夫だよ。」

「見かけよりってどういう意味だ!!」


師匠の低く唸るような声にレティンシアがビクンと大きく震えた。


「師匠、そんな表情でそんな声出すと更に怯えますから、泣かせたいんですか?」


何か言いかけたけどむっつりと押し黙ってしまった師匠と先生を見て、後ろのレティンシアに声を掛ける。


「レティ、今朝御飯用に魚と鳥を捌いててもうすぐ終わるんだ。終わったら持ってくるから火を熾して待ってて。あとは、そうだ木の枝も置いてあるから串に使えるように削っててくれ。」


俺の服を握りしめているレティンシアの頭を撫でながらお願いすると、少し間をおいて頷いて服からも手を離した。


「じゃあ行ってくる。準備よろしくな。」

「うん。いってらっしゃい。」


ありがとうございました。

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