大陸の人は凄い。
今回は短め。
俺達が王都に向かって旅を始めて1ヵ月過ぎた。
「レティ、そっち行ったぞ!」
「任せて、ウィンドカッター。」
レティンシアに向かっていたホワイトウルフを風の刃が襲う。首から大量の血を噴き出して、ホワイトウルフが倒れた。
「この短期間で正確に首だけ狙うなんて芸当が出来るようになるってすごいよな。」
「大陸の人は皆出来るんでしょう?ルカの足は引っ張りたくないから頑張ったの。」
「・・・・・・・・・。」
魔法で動いている対象の首だけ正確に狙える奴がゴロゴロいたら怖すぎるだろう。
剥ぎ取りの仕方を教えてるときに、傷を付けないように、とか、一番いいのは急所を狙って一撃で仕留める、って言ったけど『傷を付けない様に急所(首又は心臓)を狙って一撃で仕留めてるんだ、大陸の人って凄い!』って思ってる事に気付いた時が一番衝撃だった。
「ルカ、どうかしたの?」
「いや、なんでもない。」
レティンシアの中の大陸人がどこまで進化するのか興味もあるので、ギリギリまで思い違いについては訂正していない。大陸についてからの訂正でも大丈夫だろう。
魔物をアイテムボックスに入れてから歩きだす。
「ルカ、今日の夜また剣の型教えてくれる?」
「いいけどレティは遠距離攻撃の武器の方がいいと思うよ?」
「槍と弓も本を見て練習はしてるけど難しいんだもの。」
「やっぱりレティでも実際に見た事がないと難しいか。」
この1ヵ月、レティには棒術と体術と投擲を教えてきた。基本スタイルは魔法と棒術、投擲。体術は護身用だ。それに加えて教本を見ながら槍と弓を練習していたのだが、上手くいかないらしい。
型の練習は続けているから大陸に戻ったら、実際に使っているところを見せれば大丈夫だろう。
いろいろやってみないとどんな武器がレティンシアに一番合ってるのか分からないからな。
そして夜、約束通りレティンシアに剣の型を教えて、一緒に素振りをする。このテントは天井も高く、中も広いので夜もトレーニングが出来る。
「レティ、腕が下がってる。」
「はい。」
疲れからフォームが崩れてきたので注意する。息も上がってきているがレティンシアは辞めるとは言わない。なんとか決めた回数をクリアした時にはびっしょりと汗をかいて座り込む。
レティンシアに合わせているので俺には物足りなかったが、俺が素振りをするとレティンシアもやろうとするので、素振りは止めて筋力トレーニングを行う。腕立て伏せに始まり腹筋、スクワット、各100回を1セットにして5セット行う。途中からレティンシアもやっていたが、これは1セットで力尽きてしまっていた。女の子だし、まだ慣れてないから仕方ないだろう。
ぐったりしているレティンシアの隣で黙々と筋力トレーニングをして、最後に棒術の型の訓練をしてからクリーンの魔法を掛けてもらい寝る。
これが、ここ最近の夜の過ごし方だ。なにか仕掛けがあるのか、魔物は近くを通る事はあっても襲ってくることはないので、最近は交代での見張りも止め一緒に休むようにしている。一日で歩ける距離も大分伸びているので、あと7日もあれば王都に着ける予定だ。明日も頑張って歩かないとな。
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夜、ルカに新しい剣の型を教えてもらって一緒に素振りをした。素振りを始めてしばらくすると息が上がってきた。途中ルカに注意されながら、ようやく言われた1000回の素振りを終わらせた。
腕も重くて座り込んでしまった私の横で、ルカはいつもしているトレーニングをやり始めた。同じ回数の素振りをしているのに全く息を乱していない。
しばらく休んでから、私も同じトレーニングをする。でも1セット終わらせたところで力尽きてしまった。ルカは慣れてないし、女の子だから気にしなくていいって言ってくれるけど、平然と私の5倍の回数をこなして、棒術の訓練までしているルカを見ると、私はまだまだ駄目なんだと思ってしまう。
ルカは自分は普通だって言ってたから、きっと大陸の人達はみんなルカと同じぐらい凄いのね。
適性があれば初級・中級魔法は詠唱破棄が当たり前適性が無くても初級魔法なら発動できるし、魔物を倒す時も出来るだけ素材に傷をつけない様に一撃で仕留める。ここまでは私も出来るようになったけど、武器はまだ棒術と投擲、体術、剣術しか使えないしルカと比べると全然ダメ。弓と槍も練習してるけど、上達してるのかよく分からないし、壁も走れるか分からないのよね…。トレーニングも1セットが限界。
ルカは大陸に戻っても一緒に旅をしようと言ってくれたけど、今のままの私じゃ足手まといになってしまう。体力だって少ないし、力も弱い。もっともっと頑張らなくちゃ。
大陸の人間は凄い。
ぼんやりとしている間に棒術の訓練が終わったらしいルカに言われてルカと自分にクリーンの魔法を掛ける。なんとか体を起してベッドに入ると、すぐに睡魔が襲ってくる。
(私、頑張るから、ルカの足を引っ張らない様に頑張る。だから、私も一緒に連れて行って。)
読んでいただきありがとうございました。