冒険者になろう!①
ギルド支部の前まで着いた時にちょうど串焼きも食べ終わったので、早速扉を開けて中に入ってみる。
室内は思っていたよりもきれいだった。カウンターがいくつか並んでいて、各カウンターの上に看板がぶら下がっている。そういえば、屋台のおっちゃんもギルド支部って言ってたな。もしかして、いろんなギルドが集まってるのか?まあいいや。とりあえず冒険者ギルド・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・読めない。
言葉は分かるし話せるから安心してたが、字はまったく読めない。文字から勉強しないといけないのかよ。てゆうか、この世界の識字率ってどれぐらいなんだ?文字書けないと冒険者ってなれないのか?
腕を組んでどうしようか考えていると
「そこのガキ、なに突っ立ってやがる!邪魔だから退け!」
振り返ると、筋肉隆々で強面のおっさんが立っていた。
「すみませんでした。」
謝りつつ端に避ける。そのまま通り過ぎていくのかと思ったが
「お前、見ない顔だな。新人か?」
「はい。冒険者になりたくて来たのですが、冒険者ギルドがどれか分からなくて。邪魔をして申し訳ありませんでした。」
「仕方ねえな、ついてこい。冒険者ギルドはこっちだ。」
おお。見かけによらず親切な人だ。
「ありがとうございます。」
「ふん。」
筋肉なおっさんの後ろについて行く。向かったカウンターは入口の正面にあるカウンターだった。
「おかえりなさい。いかがでしたか?」
カウンターの前におっさんが立つと、受付のお姉さんが声を掛けてきた。
「ふん。この俺がたかだかC級クラスの討伐に失敗するわけないだろう。」
「見たところ、お怪我もないようですね。安心いたしました。では、ギルドカードをお預かりいたします。」
「おう。」
おっさんが懐から取り出した金属のカードっぽいのをお姉さんに渡す。その様子を伺っていると、おっさんが振り返った。
「おい、姉ちゃん。」
「はい。どうかされましたか。」
おっさんが俺を前に突き出す。
「こいつ冒険者になりたいんだとよ。手続きしてやってくれ。」
「あら、新人さんですか?」
「入り口で冒険者ギルドのカウンターが分からないって突っ立ってたから連れてきた。後はよろしくな。」
「はい、かしこまりました。まずはアンドリューさんの手続きを終わらせますね。」
「ああ。」
アンドリューさんってゆうのか。見た目はかなり怖いけど、面倒見のいい人だな。顔は怖いがな。
若干失礼な事を考えているとアンドリューさんに呼ばれた。
「お前名前は?俺はアンドリューだ。」
「ルーカスです。」
とっさに出たのは、長らく使っていなかったセカンドネームだった。
俺は母親が日本人、父親がイギリス人のハーフなのだ。父親の血が濃く出たのか外見は髪が金髪、目は碧。この外見のお陰で学校では不良どもには目を付けられるし、散々だった。
うん?そういえば、お城では名前聞かれなかったな。まあ俺は勇者じゃないから興味無かったんだろう。
ちなみに、日本名は龍宮 彰斗、イギリス名はアキト・ルーカス・ハワードだ。
「んじゃあルーカス、詳しい事はこの受付の姉ちゃんに教えてもらえ。」
「はい。いろいろとありがとうございました。」
「お待たせしました。こちらが今回の報酬です。」
「ああ。ありがとよ。」
アンドリューさんはお姉さんから小さな革袋を受け取ると俺を見た。
「俺はもう行く。」
「はい。本当にありがとうございました。」
俺は改めて礼を言って頭を下げる。
「じゃあな、精々死なないように頑張るんだな。」
そう言い残してアンドリューさんは去って行った。
その背中を見送っていると、受付のお姉さんに話しかけられた。
ありがとうございました。