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太陽の勇者と月の巫女  作者: 涙花
勇者召喚されたけど人違いでした。
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親権争い(笑)勃発!

朝起きると軽く準備運動をしてから日課となった基礎トレーニングを行う。そのあとは、外に出て素振りをして、師匠が来たら相手をしてもらう。程よくボロボロになったところで、朝ごはんを食べに食堂に行く。食べ終わった後は、街の外にランニングに行く。途中魔物に襲われることもあったが、討伐したり、剥ぎ取りしながらランニングを終える。その後は、師匠と組み手をして程々にヨレヨレになったら、昼食。午後は基礎トレーニング、ランニング、投擲、師匠とガチンコバトルでボロヨレになったら、街に戻ってギルド支部で素材を買い取りをしてもらい、クリーンの魔法も掛けてもらう。そのあとは宿に戻って夕食後、魔力制御の練習、覚えたことの復習とテストをして就寝。


街の外への外出禁止の罰が終わってからの俺の日々はこんな感じだ。前と比べると身体も引き締まり、筋肉もついた。この調子で頑張ろうと思う。ただ魔法の習得だけが全く進んでいない。ポーション代も掛かるので早く回復魔法を覚えたいのだが、ギルド長からの連絡はまだない。



この日もいつものように、ボロヨレになってギルド支部に行くとギルド長の部屋に行くように言われた。

かなり汚れていたので身なりを整えてから、ギルド長の部屋に行く。


コンコンコン


「入れ。」

「「失礼します。」」


部屋の中にはギルド長と小柄の長い髭を蓄えた初老の男性、青い髪のすらりとした背の高い男性がいた。


「小さいほうが、ルーカスだ。」


ギルド長、その紹介は酷いと思います。


「本当にこの小僧がか?」

「確認する為に準備はしてある。ただ、本当だったら…」

「貴重な人材を神殿に盗られる訳にはいかぬ。」


神殿?もしかして俺が光属性持ちだって話したのか?


「ルーカス、アンドリュー、こちらは魔法ギルド長のウィリアム殿だ。後ろの青い髪のはギャレット。ルーカス、お前の指導役になる予定だ。」

「アンドリューだ。ルカの師をやっている。」

「ルーカスです。よろしくお願いします。」

「魔法ギルドの長、ウィリアムじゃ。」

「魔法ギルド所属、ギャレット。」


俺の指導役になるから俺の属性を教えたのか。でもなんで予定なんだろう?


「では、早速始めるとしようかのう。」

「そうだな。ルーカスこっちに来い。」


ギルド長の傍に行くと両手を出すよう言われ、言うとおりにすると見覚えのある水晶玉を持たされた。


「まだ魔力は込めるな。あと、そこから動くなよ。」


そう言ってギルド長たちが俺から離れる。魔法ギルド長のウィリアムさんが手に持っていた杖で床を叩くと俺を包むような膜が張られた。


「これで大丈夫じゃ。始めて良いぞ。」

「よし、ルーカス魔力を込めろ。」


言われた通り水晶玉に魔力を込める。変化はすぐに現れた。ゆっくりと赤く染まっていき中心まで赤く染まると外側から中心に向かって茶色に変わっていき中心まで茶色に染まると、また外側から中心に向かって黄色に染まっていく。完全に黄色に染まると、次は中心から一気に白くなった。そしてまた外側から赤く染まっていく。

色が変わるのを観察していたが、3周目に入っても制止の声が掛からない。ちらりとギルド長たちを見てみると、真剣な眼差しで俺の手にある水晶玉を見ている。なにか問題でもあるのだろうか?


「すみません。もういいですか?」


呼びかけてみたら、全員ハッとした顔で俺を見た。


「あぁ、すまなかったな。もういいぞ。」


マクレーンギルド長の許可が下りたので、魔力を込めるのを止める。水晶玉の色が透明に戻ると、俺の周りに張られていた膜も解除された。

マクレーンギルド長の傍に行って水晶玉を返すと、ウィリアムさんが俺の手を掴んだ。


「お主、魔法ギルドに入れ!」

「ルーカスは冒険者ギルド所属だ!引き抜くな!!」

「何をいっておる。この者の素質を無駄にする気か!魔法ギルドで育てる!」

「いいや!ルーカスは冒険者ギルドで育てる!」


なに、この親権(?)争い。唖然としたまま、本人そっちのけの言い争いを見ていると肩を叩かれた。振り返ると師匠とギャレットさんが立っていた。無言で俺の腕を掴むと、ドアに向かって歩き出す。そのままギルド長達の親権(?)争いを放置して踊るシルフ亭に向かった。そのままギャレットさんも一緒に夕飯を食べて、今俺達は師匠の部屋にいる。


「話を聞いた時は半信半疑だったが、本当に光属性を持ちか。」

「おい!その話は、」

「心配するな、遮音結界を張っている。部屋の外に俺達の声は漏れない。」

「そういう事は先に言っといてくれ。」


師匠ががっくりと肩を落とした。俺も無駄に緊張してしまった、


「ギルド長達よかったんですか?放置してきましたけど…。」


師匠とギャレットさんがまったく気にしていないようだが、大丈夫だろうか?


「ほっとけ。勝手な事言いやがって。ルカは俺が一人前に育てる。」

「・・・・・・・」


いや、間違いではないよな。きっと冒険者として一人前にって意味だ。


「ルーカスに魔法を教えるのは私なんだがな。」

「魔法だけだろ。」


あれ?なんか雲行きが怪しい気がしてきた。


「もちろん魔法以外の事も教える。」

ルカ(・・)には俺がしっかりと教えてやるから必要ない。」

「「・・・・・・・・」」


師匠とギャレットさんが睨みあっている。


逃げよう。俺の第六感がビンビン反応してる。ここは退いた方がいい。退却も大事な戦法だ。

そっと扉に近づいて、後ろ手にドアノブに手を掛ける。落ち付け、静かに、そっと、気付かれないように外に出るんだ。ゆっくりとドアノブを回す。


「ルカ、どこに行くんだ?」

「ルーカス、どこに行く?」


汗が滝のように背中を流れる。怖い。どうすればいいんだ!?誰か助けて!!


トントントン


俺の願いが通じたのか、誰かが扉を叩いた。これぞ天の助けだ!


「おい、ルカ待て!」


師匠、申し訳ありませんが、待ちません。

俺はためらわず扉を開けた。


バタン!!


俺は勢いよく扉を閉めた。


「だから待てと言っただろうが。」


涙目で振り返ると師匠とギャレットさんが、呆れたように見ていた。

どうして!どうしてこうなった!!


トントントン


「ひっ!?」


再び扉を叩く音がして悲鳴が零れた。


「ルカ、俺がいいよな?」

「ルーカス、私がじっくり教えてやろう。」


もう、泣きたい。

じりじりと近づいてくる師匠とギャレットさん。逃げ道は、無い。


俺はアンドリューさんの目を真っすぐ見る。


「……俺、冒険者になりたいです。だから、師匠今まで通りいろいろ教えてください。」

「もちろんだ。」


今度はギャレットさんも目をまっすぐ見てお願いする。


「ギャレットさん、俺どうしても冒険者になりたいんです。だから、魔法を教えてください。」

「元よりそのつもりだ。私もルカと呼んでもいいかい?」

「もちろんです。ありがとうございます。これからよろしくお願いします、ギャレット先生。」

「『先生』か、なんだか照れくさいな。こちらこそよろしく頼むよ、ルカ。」


良かった。冒険者になるのはどうしても諦められないから、駄目だって言われたらどうしようかと思った。

背中を預けている扉から激しい震動を感じるが、気にしたら負けだ。


「ギャレット、ルカは冒険者になる。それでも本当にいいんだな。」

「ルカが何になるかはルカ自身が決める事だ。私達が口を出すことではない。」

「それもそうだな。お前使えるのは魔法だけか?」

「棒術は使える。」

「じゃあギャレットが魔法と棒術、俺が剣と体術と投擲、その他についてはその都度詳しいほうが教える。これでどうだ?」

「ルカは俺達が二人で育てる。ということだな。」

「そうだ。」

「なら問題ない。」

「これからよろしく頼むぜ。」

「こちらこそよろしく頼む。俺達でルカを立派に育てよう!」


師匠と先生の俺の教育についての話し合いは終わったようだ。なんだろう?なんかおかしい気がする。俺はこれから本当に大丈夫なんだろうか?ものすごく不安だ。


「ルカ、こっちに来い。」

「私達の後ろにいるんだ。」


師匠と先生が呼ぶので素早く、二人の後ろに滑り込む。

師匠が扉を開けるとそこには、満面の笑み(目は笑ってない)のギルド長達がいた。


「「ルーカスはどこだ?」」


怖い。絶対近づきたくない。


「ルカは冒険者になりたいそうです。ウィリアムギルド長、ルカの事は諦めてください。」

「あれだけの才能をもっておるのにか!?」

「本人の意思です。」

「そうか、そうだよな!ウィリアム殿、ルカは冒険者ギルドで育てます。諦めてください。」

「マクレーンギルド長、ルカは私とアンドリューが育てます。あなたもルカの事は諦めてください。」

「ギャレットの言うとおりだ。ルカは俺達が育てる。」


またしても俺の親権争い(笑)が勃発したが、この争いは翌日の朝まで続いたらしい。俺は途中で様子を見に来たおかみさんに回収されて自分で部屋で寝ていたので詳細は知らないが、無事に師匠と先生のペアが俺の親権争い(笑)に勝利を納め、師匠と先生との修行に日々が幕を開ける事になる。


『普通の先生がいい。』というささやかな願いが叶わなかったのを俺が思い知るのは数時間後の事だった。



ありがとうございました。

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