表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽の勇者と月の巫女  作者: 涙花
勇者召喚されたけど人違いでした。
26/100

ギルドへの報告 

夜もう一話投稿します。

ギルド支部に着いた俺たちは、冒険者ギルドのカウンターにまっすぐ向かった。


受付のお姉さんが歩いてくる俺達、いや、アンドリューさんをみて明らかに安堵した表情をみせた。


「アンドリューさん、良かった。ご無事でしたか。」

「どうかしたのか?」

「アンドリューさんが森の行かれた後に、森でブラッディーウルフの変異種を見かけたとの報告があったんです。Cランクなので、大丈夫だろうとは思っていたのですが心配しておりました。本当に無事で良かったです。」

「「・・・・・・・・・」」


嬉しそうにしているお姉さんには大変申し訳ないのだが、全然無事じゃありませんでした。アンドリューさんを見ると、バツが悪そうにお姉さんを見ている。


「あー、そのブラッディーウルフの変異種は何体目撃された?」

「?1体ですよ。変異種が何体もいるわけない……ですよね?」


アンドリューさんの問いに笑って答えていたが、なにか察したらしい。口元が引き攣っている。


「魔石を持った変異種が4体だ。」


アンドリューさんの声が妙に室内に響いた。先程までガヤガヤと話し声が聞こえていたが、今は静まり返っていた。


だが、


「もう!アンドリューさん、私の事からかってるんですか?魔石持ちの変異種が4体もいるなんてありえないですよ。いいですか?魔石は稀に変異種が持っていることがある物で、変異種全部が持ってる訳ではありません。特に、魔石持ちの変異種は普通の変異種より凶暴なんですから異状な事ですよ?森への侵入禁止を出さないといけなくなる場合もあるんですから、変な冗談はやめてください。」


受付のお姉さんのその言葉に、室内は爆笑の渦に飲み込まれた。


「魔石持ちが4体もいるなんてありえないだろう!」


「かわいい姉ちゃんだからって、からかっちゃ駄目だろう!」


周りからも、笑い声と野次が飛んでくる。


ドゴン!


気が付いたら、俺はカウンターを思い切り殴りつけていた。少しへこんだような気もするが、それはどうでもいい。


「冗談ってなんだよ。なにが、冗談だって言うんだ!!」


室内に俺の怒声が響く。


頭が沸騰しそうだ。激しい怒りがこみ上げてくる。なにが『冗談』だ!なにが『ありえない』だ!実際に魔石を持ったブラッディーウルフは4体いた!アンドリューさんの腕は、その内の1体に奪われたんだ!それなのに、なにが、冗談だって言うんだよ!!


「冗談を冗談だと言って何が悪いんですか!それより、こんなことしてただでは済みませんよ!」


硬直から一番最初に回復したのは冗談だと言いきった受付の女だった。


「へえ、どうなるんだよ?先に喧嘩売ったのはあんただろ!責任者だせよ!!」

「おい、落ち付けルーカス。」

「なんでだよ!本当のことなのに、冗談だって断言されたんだぞ!魔石も、剥ぎ取った毛皮とかだってあるのに、確認もしないで、冗談だって、それに、腕だって……」


目が熱い。視界が歪む。

情けない顔を見られたくなくて、俺は下を向いた。


「本当にしょうがない奴だな。荷物置いて、先に宿に戻ってろ。俺も後で行く。俺の分の夕飯と部屋が空いてたら部屋も頼んどいてくれ。」


口を開くと情けない声が出そうで、黙って剥ぎ取った素材の入ってる荷物を置いて外に出ると、宿に向かって全力で走る。


結局、迷惑ばかりかけてしまった自分が悔しくて、情けなかった。


宿に着き、少し呼吸を整えて中に入る。


「ルーカスじゃないかい。おかえり、今日は早かったんだね。」

「ただいま、おかみさん。あの、部屋ってまだ空きがありますか?」


余計な事は喋らず、アンドリューさんに頼まれた事を聞く。


「空きはあるけど、どうしたんだい?」

「アンドリューさんが、空いてたら頼んどいてくれって。あと夕飯も。」

「いいけど、すぐ来るのかい?」

「終わったら来るって言ってた。」

「分かったよ。ルーカスはどうする?先に食べるかい?」


食欲はないけど、食べなかったら心配するだろうしな。


「アンドリューさんと一緒に食べます。あの、俺、それまで部屋にいるので。」

「じゃあ、アンドリューが来たら呼びに行かせるよ。」

「すみません。お願いします。」


おかみさんにお願いした後、俺は逃げるように部屋に戻った。マントや防具、剣を外してベッドに上がると、頭まで布団をかぶり、目を閉じる。もう何も考えたくない。俺の意識はそのまま闇に飲み込まれた。

読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ