金色の瞳と新たな呪い①
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急いで宿屋に戻った俺が、中に入ると食欲をそそるいい匂いがしていた。
「おや、お帰り。遅かったね。」
おかみさんが気が付いて声を掛けてきた。
「ちょっといろいろあって。」
「?すぐ準備できるけど食べるかい?」
不思議そうにしながらも、すぐ飯を食べるか聞かれた。
「よろしくお願いします。」
すぐに準備ができるとのことだったので、お願いする。
「じゃあ、適当に座って待ってな。」
「ありがとうございます。」
室内を見渡し、空いていた隅の席で待っていると聞き覚えのある声が聞こえた。
「だから、その無知な子にあげたのよ。腕に嵌めちゃえば、その子が新しい所有者になるもの。」
「本当に持ってないんだよな?あの腕輪。」
「どこにも持ってないわよ!これで私は自由よ!!」
俺に腕輪を押し付けていった奴だ。どうやら腕輪が無くなっても呪いの効果は継続中らしい。
それにしても、腕輪がないのにおねえ言葉なのに気づいていないのだろうか?
まあ、周りの奴らはドン引きしてるがな。
「それにしても、その無知な子はどんな呪いだろうな?少し気になるな。」
それは俺も気になっている。なんの呪いだろう?
「どうでもいいじゃない。忌々しい腕輪も無くなったし今日は祝杯よ!」
わいわい騒いでいる奴らを眺めていると、おかみさんがご飯を持ってきてくれた。
「今日は、モーモー鳥と季節の野菜シチューとサラダとパンだよ。」
見た目は普通のシチューだな。とてもいい匂いだ。
「ありがとうございます。いただきます。」
テーブルに並べられた料理を食べようとしたが、おかみさんが不思議そうに俺を見ているのに気付いた。
首を傾げておかみさんを見返す。
すると、おかみさんも首を傾げつつ口を開いた。
「間違ってたらごめんよ。その眼は元々その色だったかい?」
眼の色?カラコンとかもしてないし、生まれつきだけどな。この世界じゃ珍しくないはずだけど。
「元々ですよ?」
「そうかい。すまなかったね、蒼色だったと思ったんだけど別のお客さんと間違えたのかねえ?」
「おーい。注文頼む!」
「今いくよ!」
お客さんに呼ばれたおかみさんが注文を取りに向かう。
しかし、俺はそれどころではなかった。俺の眼は間違いなく蒼色のはずだ。だけど、おかみさんは『蒼色だった思った』と言った。つまり、今現在の俺の眼の色は蒼ではないという事だろう。心当たりは、この腕輪ぐらいしかないので、間違いなく腕輪の呪いだろう。
でも、目の色が変わるだけの呪いなのか?見え方は今までと変わらないし、視力が低下したわけでもない。
眼の色が変わるだけならずいぶんと可愛らしい呪いの効果だが・・・・・・。
考えていても仕方ないな。冷めないうちに食べよう。
味も普通のシチューだな。具が多くて食べ応えがある。
サラダもシャキシャキしていて美味しかったが、パンは固かった。
周りを見てみると、ちぎってシチューに浸しながら食べていたので俺も真似して食べてみたら美味しかった。お腹もいっぱいになったし、大満足だ。
食べ終わった空の食器を、カウンターに持っていってから俺は部屋に戻った。
俺に腕輪を押し付けた奴は、結局俺には気がつかなかった。
ありがとうございました。