買い物に来たら呪われました②
「はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」
大きな溜息が零れる。
だって仕方ないだろう。買い物にきて呪われるって最悪だろう。
寝ている間に異世界召喚されるは、勇者の偽物扱いされるは、挙句の果てには呪われるってどんだけついてないんだよ。
そういえば、俺にこの腕輪を押し付けた奴の呪いってなんだったんだ?
俺とはまた違った呪いって事だよな。しかも同情されるような。どんな呪いだろう。
「この腕輪を俺に押し付けた奴の呪いはなんだったんだ?」
「知りたいのか?」
「ああ。どんな呪いがあるのかは気になるしな。」
「そうか……。あいつの最初の呪いはな、『早漏』だ。」
「・・・。」
「しばらくは気付かなかったようだがな、あいつは気付いてすぐに腕輪を捨てた。だが、次の日の朝気がついた時には腕にあったらしい。そして2つ目の呪いに掛かっていた。2つ目の呪いではな、小さくなったんだと。」
「・・・なにが小さくなったんですか?」
「なにって、アレだよ、大事な息子に決まってんだろう。」
「・・・・・・。」
「そしたらあの野郎また捨てたんだよ。捨てると呪いが追加されて帰ってくるって気づいてなかったみたいでな。3つ目の呪いで毛が無くなった。」
「・・・・・・・・・。」
「一夜にして全身ツルツルになっちまってな。そこでようやくあいつは呪いが増えてる事に気付いた。だが、あいつはまたしても腕輪を捨てた。そして4つ目の呪いで女と喋るときは女言葉でしか喋れなくなった。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「こうしてあいつは呪いが増えると分かっているのに、腕輪を9回捨てた。5つ目で今度は体が縮み、6つ目で喋るとき、くねくねするように。7つ目で、女言葉しか喋れないように。8つ目で内股でしか歩けないように。9つ目でスカートしか履けなくなり、そして10個目の呪いでとうとう不能になった。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「そりゃあショックだよな。俺もな、流石に同情したよ。同じ男としてこの呪いはあんまりだと思った。どうにかしてやりたかったが、呪いが増えすぎてもう解呪できなくなってしまってな。残った解呪方法は腕輪を別の奴に押し付ける事。だが、呪いの腕輪の話が広まりすぎて、誰もあいつに近寄らなくなった。うかつに近づいて腕輪を押しつけられたら困るからな。そんな状況の中で、現れたのがお前さんだったって訳だ。本当に運が悪かったな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「おい。大丈夫か?」
「ダイジョウブダヨ。」
「いや、なんか喋り方おかしくないか?」
「ソンナコトナイヨ。」
「・・・俺は奥にいるからなんかあったら呼んでくれ。」
そう言って店主は奥に引っ込んでいった。
呪いについてはかなり衝撃があった。確かに同じ男としてその辛さは分かる。
でもなんだよ。この呪いのチョイス。途中から明らかに変な方向にいってるだろう。
新しい世界の扉を開かせるつもりなのか!?
俺にはそんな趣味はないし。これからもその世界の扉を叩くつもりはない。
そして俺は気になっている事がある。それは、
「あいつ、すげえ内股で走ってったけど、ホントに呪い解呪されたのか?」
一番大きなのは内股ってとこだけど、あとは腕の振り方とかもなんか女の子っぽかった。
考えられるのは、呪いが解呪されなかった。または、新しい扉を開いてしまった。このどちらかだろう。
まあどちらにしても俺には関係ない事だ。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。