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チートな俺と歌姫な俺と  作者: 真幸
◆◇ 第一章 -オーディション- ◇◆
9/54

2-1 <始まり。だがそれはチート>

 軽く補足です。

 クオリアの一人称は『私』。二人称は『貴方』。ユキのことを『ユキ様』

 ラファの一人称は『あたし』。二人称は『あんた』。ユキのことを『アリス』

 シャルナの一人称は『アタシ』。二人称は『お前』。ユキのことを『絶氷』


 です。ややこしいですね。すいません。


 携帯端末でアップデート内容を覗いた。


====================================================================


○月×日(土)定期メンテナンスにて予定しております項目は以下の通りとなります。


■スキル「歌」実装

・先行スキル入手としてイベントを開催いたします。


 

■イベント「歌姫選抜オーディション」開催。

 ※イベント内容は< こちら >をご覧ください。



■新規フィールドと新たなモンスター追加

・「ザクス平原」「タフルの城」を追加実装します。



・「炎王竜-モトグニル-」「海王竜-オケアルス-」を追加実装します。



■クエスト「バアルグニル討伐」の調整。

・バアルグニルの行動を調整。

 ある条件下のバアルグニルの行動を調整いたします。



・属性ダメージの調整。

 弱点である氷属性のダメージを調整いたします。



■アイテム「封印されたお札」不具合修正。

・アイテム使用時に本来出現するはずのないモンスターが出現してしまう不具合の修正。



====================================================================


「結界竜のあれ。不具合だったのかよ」

『むしろオマエの暴れすぎでバアルグニル修正されてるんじゃねーか』


 携帯端末から聞こえるシュウの声にユキは苦笑いを漏らし、自室のベッドに腰掛けた。

 壁にかかった時計を見ると時刻は午後二時。

 彼らがハマっている『ドラゴンスレイヤーズ』は大型アップデータで三時まで絶賛メンテナンス中だった。メンテを開始してすでに十四時間という時間が経過している。

 興奮するシュウとは裏腹に喉から心臓が出てきそうなほど緊張しているユキ。それを知ってか知らずかシュウは昨日から携帯端末のIP電話でユキとメンテ開始から話しこんでいた。不眠不休で変なテンションのままどこかへ向かっているシュウとは裏腹に途中で寝落ちしてしまったユキは外見では穏やかにそれを聞いていた。


『もしもし、私クオリアさんです。今ユキ様の家の真下にいますぅ』

『あんたの場合本当にアリスの家にいそうだから怖いわ………』


 ついつい玄関の前を確認してしまったが、家の前にはさっきから止まっている白いレクサスだけで人の気配なんてなかった。


『アリス大丈夫?近くに怪しい車とか止まってない?』

「大丈夫だよ。たぶん………」

『ふふふ………』


 最初は二人だけだったこの会話も真夜中を過ぎた辺りで『スペシャルゲストです!!』と一時間に一回ペースでゲーム内のシュウのフレンドが会話に参加しだした。気を使ってか、ユキも何度か会って話したことある人物が多々来てくれて、『最強』の通り名のアスキラが来たときはもうユキ自身ペコペコと通話の向こうにいる彼に向かって頭を下げる始末だった。

 そんな忙しない会話もユキが寝て起きたときには昨日までのメンバー、クオリア、ラファ、シャルナが参加していたのであった。

 シュウ曰く、『華が欲しいじゃん!!』とのことだった。


『ユキ様ぁ!!こっち向いてぇ!!』


 こいつに至っては終始こんな感じだから困る。と呆れずにはいられなかった。


『ちょっと!!あたしのアリスにやめてよねぇ!!』

『いつから貴方のアリスになったんですかぁ~~』

『やめてぇ!!ラファはアタシの嫁だ!!』

「あ、あは………あははは………」


 ただでさえ緊張してブルーなユキはこの女性陣の絶えない口論に巻き込まれ、テンションというHPバーは瀕死になっていた。


『おっと………そろそろ三時だぜ?カウントダウンいっときますかぁ!!』


 シュウの発言によりやっとこの会話が終了するのか。と一息つくと、さっきまでバラバラだった息がこのカウントダウンくらい息を合わせてあげるわ。感謝しなさい!!と言わんばかりに声ハツラツに響いた。

 絶対こいつ等寝てないだろうな。と苦笑いしながらユキはその声に揃えた。



「『『『『3―――2―――1―――ッログイン!!』』』』」



 と五人同時にログインボタンをタッチするが『ただいまサーバーはメンテ中です』の文字がポップしたのはお約束であった。




 * * *




 ガウルの港。 

 

「んで?イベント会場は?」

「あんたちゃんとイベント内容見たわけ?」


 綺麗にドレスアップされた四人のアイドルの卵達とむさ苦しい鍛冶屋ルックの男が一人の一見すれば鍛冶屋のハーレムに見えるが、女性陣は頭一つ飛び出した背の高い女の子に集中していた。

 ウェーブのかかった長い銀髪にスラリとした長身、主張するポイントは主張してその淫らなアシメスカートから白くて綺麗な足に通るものの視線を集中させた。


「改めて視線が集中すると恥ずかしい………ね?」

「ん~~!!やっぱり恥じらいのアリス、チョーキュゥ~~トォ!!」

「絶氷。それは狙ってるのか?」

「よくお似合いですよぉ。アリスさん」

「や、やめてよぉ………」


 アリスがモジモジと自分自身の体を小さくして隠れようとしているのだが、逆にその行為が人の目を集めていた。


「そ、そんなことよりクオリア。クオリアもオーディション出るの?」


 クオリアの姿は先日まで見た露出度の高いローブにチラり見せるデクライニングスカートも目を引かせていたが、彼女の着ているエピック装備、ピンク色の『アプロディタ』のサーキュラースカートがふわりと広がってチラリズムが気になってしかたがなかった。

 つかクオリアさん、見えてます。


「あ。これは見えてもいい下着なので恥ずかしくありません~~」

「む、アリス!!鼻の下のばすなぁ!!」

「のばしてないってぇ!!」


 いちゃもんと変なテンションの彼女達に絡まれながらもアリス達はガウルの港にできた、海上ドームに足を伸ばすのであった。


「んじゃ俺は観客席で見てるわ」

「あいあい」

「シュウ。ちゃんとあたしの勇士を見届けるのよ!!」


 ドームに入るなり、観客席は右へ。オーディション参加者は左へ。の看板の前でシュウと別れた。

 それはすごい人だかりで気を許しているとすぐにでもみんなと離れてしまいそうなのだが。その心配はないかな。と半ば呆れるアリスであった。

 右にクオリアが、左にラファがしがみ付いてとてもいい匂―――じゃなくて両手に華―――じゃなく、とても離れ離れになるような格好ではなかった。シャルナもシャルナでアリスの背中の布を掴んで離れないようにしている。たまにギュッと強く引っ張られて衣装が破けてしまうのではないかと不安になるが、きっとゲームなんだからそれは無いはず………と祈るばかりであった。


 少しして開放されている扉が見える。その両サイドに係員と思われる人達が青いジャケットを着て参加者全員に番号の書いてあるバッチを渡している。なるほどエントリーナンバー的なものだろう。

 受け取って扉の中に入ると、スタジアムのマウンドの上に人たかりが集まっている。広々とした空間とそれを囲むようにして埋め尽くされていく観客席。今から起こることを思うだけでアリスの心臓はフルスロットルでエンジンが暴走しそうだ。

 たぶん両腕にしがみ付いている二人にはその鼓動が聞こえているんじゃないのかと思い、余計に恥ずかしさがこみ上げてくる。


 会場はざわめきと人ごみでごった返しており、まだ開始二十分前だっていうのにこの人数は………。どうやら今回のイベントで新規登録者が今までの二倍以上になったとかでファイブゲーマーというゲーム情報サイトに記事が載っていたことを思い出した。つまりは今までこのゲームをプレイしていたユーザー以上の数がこのイベントに参加すると見ていい。

 なんと言ってもこのイベントの最大の特徴は国籍、年齢、性別問わず誰でもアイドルになれるというものだ。これはチャンスであると誰もが思うだろう。

 そもそもなぜこのようなイベントが起きたのかという話になる。

 近年、バーチャルアイドルというものが流行りだした。昔の音声合成・DTMソフトウェアの『VOCALOID』というものが流行ったのが一端だとか。もともと日本製コンテンツを好む国外の人々にも関心を集めたらしく、しばらくして車の広告に起用されたり、日本国外で単独ライブをするようになっていたと聞く。それをきっかけにしてか、日本国内、世界各地でバーチャルアイドルというものが流行りだしたのだ。

 その波に乗ってなのか今回、この『ドラゴンスレイヤーズ』の運営会社、LC社と芸能プロダクション、ワンダーランドとのタイアップ企画が発案されたのだ。今巷で人気のあるVRMMO内でアイドルを誕生させ、ゲームの広告を兼ねたバーチャルアイドルとして売り出そうとしていたのであった。

 到底最初期のバーチャルアイドルのように世界へ羽ばたける人材が発掘できるわけがない。だがいいネタにはなると踏んでいる二社はかなりの広告料をかけて今回のイベントを一年かけて企画した。

 それがこの会場にいる人数なのだと、アリスは緊張を通り越して唖然とした。一向に足並みを止めないその参加者の入場にその場にいた他の四人も驚きを隠せずにいた。


「一体何万人参加してんの………?」


 その問いは誰もが内で秘めていたが、答えだけは返ってこなかった。


「そういえば。絶氷のバッチには数字が描いてるけどアタシのは違うみたい」


 アリスが手に握るバッチには数字で『8241』と描かれているが、シャルナのバッチには『WIP』と描かれていた。


「あれ?あたしのは数字とアルファベットだ」


 四人の視界に三つ目のバッチが登場する。ラファの右手のバッチには『W9F』と描かれていた。


「もしかしてぇ、三十六進数で表記してるのかもしれませんねぇ」

「36進数?」

「こう人数が多いとすごい桁のバッチを用意しないといけないじゃないですかぁ。それを三十六進数を使って少ない桁数で表記してるんじゃないでしょうかぁ?」

「ねぇ、アリス。三十六進数って何?」

「普段俺―――ゴホン、僕らが使ってる0~9までの数字での表記の仕方を十進数って呼ぶんだよ」


 一人称を慌てて変えたら三人に笑われて、少し照れたアリスだった。


「そこからアルファベットを足して表記するのを十一進数って呼ぶんだ。その場合、10って数はAと表記される」

「つまりAは10で10は11なんだな、絶氷」

「Aは10で?10は11?」


 すでに混乱しているラファ。普段使い慣れている十進数という当たり前が効かないもんだから混乱しているんだろう。慣れれば理解できるのだが、そういうのにあまり触れないとそういった物は理解できないものだ。


「この場合ですとぉ、一グループ辺り三十六人と思うのが妥当ですねぇ」

「そうだね。たぶんそっちのが管理しやすいからそうしたんだと思うよ」


 とりあえず持ってても仕方ないのでバッチを右胸につけ、フワっとしたアリス自身の胸の感触を感じて少し頬染めた。


「絶氷。さすがに自分の体で………」

「違う!!違うから!!」

「アリスさんが望むならいつでも私の体を好きにしていいんですよぉ」

「アリスの変態………」

「誤解を招くからやめてぇ!!」


 色々と慌てふためいて余計に周囲の目を集めてしまうアリスであった。



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