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チートな俺と歌姫な俺と  作者: 真幸
◆◇ プロローグ ◇◆
6/54

1-6 <スキル。だがそれは見えない>

 今回はスキルのお話です。

 プレイヤーズハウス。

 ユキはログインするなり深いため息を漏らした。

 昨日のクオリアの不機嫌っぷりはユキ自身意味がわからなかったようだ。彼女自身の要望に応えて全力でバアルグニルを倒し、一番望んでいた嵐王の宝玉を一発で出たと言うのに彼女ときたら………。


「俺なんて出すのに三回やったっていうのに何が不満なんだ………」


 こちらもよくわからない言葉を吐きながら支度をしていた。「無属性武器持ったし、外装とかは………このままでもいいか」とアイテム欄を眺めながら点検している様子はどこかにでかけるようだ。


「よし」


 と確認を終えるとユキは青のロングコートを羽織り、身長ほどある大剣を背にしまって家を後にするのであった。

 目的地は………。




 * * *




 アイルの村。

 待ち人はまだ現れないようだった。

 アリスはメニュー欄を操作しながら影になるとこら復活の神殿をチラチラと覗いていた。が一向に来る気配はなかった。

 フレンドリストを見てもラファがオンラインになっている様子はない。もしかして忘れているのではないだろうか………。

 本日何度目かわからないため息をつき、アリスは影になっている建物の壁を蹴り、ウォールランする。ウォールラン自体は慣れると推奨Agiがあるだけで誰でも簡単にできる。と思っているがそれは中層のレベル帯がなんとかできるのであって、低レベル、しかもレベル一であるアリスができるのは逆におかしいのであった。これこそ激運持ちのサガ、チートエンチャントの効果であった。

 このゲームではレベルアップごとにステータスポイント五ポイントが振り分けられるようになっている。カンストレベルが九十九で合計して四百九十五ポイント振り分けられるわけだ。しかし、上位層になってくると装備のエンチャントによってそのポイントを上乗せすることができる。それが上位層での見栄の戦いというものであった。

 そんな見栄なんて関係ないぜ!!と言わんばかりに強運を発揮する彼は大鳳装備一式に全ステータス上昇(全ステ+五)の効果がついている。装備部位には、頭、腕、胴、腰、足、外装、武器、アクセが一から四まであり、要約すると全部合わせて十一個にエンチャントしたわけだ。それに全ステ上昇効果、五つのステータスが+五十五されるわけなので………レベル一なのに約レベル五十五相当のステータスが各ステータスに振られている計算になる。

 これをチートと呼ばずしてなんと呼ぶ。だから幼馴染の言葉を借りてこう呼ぼう。


 チート乙!!と。


 話は逸れたが、ウォールラン自体はAgiが五十くらいあるとできるので、今のアリスではよほどのことがない限り成功すると言える。


 建物の屋根に到着し、そこから復活の神殿を覗くことができた。さっきまで隠れていた理由は、こんな初心者いっぱいのところでこんなレア装備着てるとやたらと注目を浴びてしまったので恥ずかしくて隠れてしまったのだ。いずれにせよ、ラファがきたらその格好の二人で狩りをするのだから変わらないことなんだよ。と恥ずかしそうに顔を染めているアリスを見てカワイイと胸を高鳴らせるクオリアの存在を彼は知らなかった。


「いい!!顔は女の子だけど。内面はユキ様のまま!!これはイケル!!」


 と完全にストーカーと化していたクオリアなのであった。


 そうこうしている内に「ピコン!」とシステムのSE音が鳴る音が聞こえ視界右下を見てみると【ラファ が イン しました】と表記された。


 やっと着たか。とアリスはメニューを操作してラファに念話を送ることにした。


『も、もしもし………?』

「もしもし。どうしたの?」

『いや………念話ってはじめてだったからちょっと緊張しちゃって………』

「ふふ……。とりあえずアイルの村で狩りしようと思うからおいでよ」

『わかった。今行くね』

「道大丈夫?」

『うん。大丈夫ありがとう』

「それじゃアイルで待っているね」

『はいはーい』


 最後らへんには念話もなれたようでこれで大丈夫だろうと、笑みをこぼした。今ではなれてしまったけど自分も最初念話のやり方がわからなくてよくシュウに「なんで念話出ねんだよー!!」と怒られたっけ。とクスリとするのであった。(その様子も絶賛スクショ撮影中のクオリアさんであったりする。)


 少ししてから復活の神殿から現れた少女はその場所ですごく浮いていた。すぐさまその場から降りて合流することにした。


「ごめんごめん。待った?」

「ううん。今来たとこ」


 と、まさか自分がこんな台詞を吐けるようになるとは思わなかったと内心呟きつつ、二人の大鳳の卵がフィールドに出るのであった。





 * * *




 アリスは来る途中で買ったスキルをセットし、装備も店で売っている低レベル用の双剣を装備した。


「まずは僕からお手本を見せるよ」

「もしかしてあたしのために双剣とかのスキル買ったの?」

「まぁ。お手本だからね」


 ニコっと作り笑いをし、辺りに人がいないことを確認してから装備を構えた。

 えっと………スキル説明についてる動画を見る限りだと………。


 逆手に構えた双剣。すぐさま右手を後ろに左手を前に持っていくとシステムがモーションを読み取り、ライトエフェクト共に体が勝手に動く。

 赤い光に包まれながら後ろに回した右手が左上へ、それと同時にして後ろへ引き右手の終了と同時に左手が正面へと突き抜けた。これが双剣初級スキル【ダブル】だ。


「おぉ………」


 スキル硬直が終わると同時にラファから拍手が起きた。アリスはスキル後の硬直の短さに驚き、さすがは初級スキルと結論づけた。上位のスキルになるにつれ、システムアシストを介したスキルだとどうしてもシステム的に硬直ができてしまうのだ。硬直というよりも大技を使った後の隙だと言えばわかりやすいだろう。それが威力の高い技に連れて硬直も大きく、威力の低いほどそれが短いというのがこのゲームのスキルというものだ。さすがにスキル云々とは別の普通の攻撃というものには硬直は起きない。だがシステムが関与する分、速さもさることながら威力も桁違いなのでなんともいえない。それこそ『状況に応じて使い分ける』という誰かさんの十八番の言葉通りなんだろう。


「ヘクシュ!!」

「なんか聞こえなかった?」

「え?何も?それより今の何が起きたのか全然わからなかった」

「え?………あぁ。もしかして速すぎちゃった………?」


 そういってアリスは無意識に人差し指で頬をかいた。

 キャラクターの能力は振り分けられるステータスで変わる。ステータスには五つの項目が存在しており、Str、Dex、Vit、Int、Agiがある。これらはレベルアップ時やアイテムでの上昇で増やすことができ、キャラクターを補助する作用を持っている。例えば重たい物を持つときはそのキャラクターのStr値に依存し、自分よりも大きな岩などもStrを必要値まで振ることによって持ち上げたりすることができるのだ。それと同様に武器を振りまわしたり、体を動かしたりするときはキャラクターのAgi値に依存するのだ。動体視力もAgiに依存しており、その相手のAgi値に近ければ近いほど視認しやすくなるとも言える。現在Agiが五十五になっておりアリスの速さはその辺の初心者には見えないスピードで技を繰り出していることになる。


「ん~~……じゃあ」


 と、アリスはラファの後ろに回り、両の手を同じ手で掴んだ。


「アリスだいたぁ~~ん!!」

「茶化さないで」


 と困りながら笑うと、アリスはさっき自分で動かしたようにラファの腕を動かすとそれを感知してラファの体が機械のように動いた。

 同時に掴んでいたアリスの腕が攻撃された扱いになり、血の様な赤いエフェクトが両腕から飛び出した。


 痛くは………ないかな。


 針にでもさされたような感じしかしなかった。が、ラファは「ごめんごめん!!」と一生懸命に謝ってきた。そんじょそこらの初心者だったらHPを結構削られただろうがここにいるのはチートでできたレベル一なので全然平気だった。

「大丈夫、大丈夫」と泣きそうになっているラファをなだめながら次のステップにいくことにした。

 何度かその場で素振りをさせ、十回目くらいにコツを掴んだラファはそこから連続でスキルを使うようになっていた。

 その姿を見て、アリスは最初のステップクリアだねと微笑んだ。


「はい。レモンティー冷たいよ」

「ありがとう」


 水筒に入れてもらったレモンティーをラファに渡すアリス。来る途中にクオリア行きつけのカフェ『リアン』で購入したアイスレモンティーだ。甘さ控えめで冷たく、動かした体に癒しを与えるそんな気分に浸れた。


「これであたしもそこそこ強く慣れたかな?」

「そうだね。あとは実践でどれだけ使えるか、かな」

「実践ねぇ………そういえば魔法ってどうやるの?なんかこぉ―――呪文的なもの詠唱するんでしょ」


 「我、汝。とか!!」と言っているラファに何それ~~と笑いアリスはこの世界の魔法というものを見せることにした。


 空に顔と同じくらいの円を描くと、それを追うようにして指先へ光が灯り空に円が現れた。

「これがこの世界の魔法のモーションキャストなの」

「もしかし魔方陣的なものを空に描くの?」

「そう。正解正解」

 

 数秒経つと、その円は消えた。モーション受付時間が過ぎたのだろう。


「さっきの丸は光属性と闇属性の受け皿みたいなもので、その中に書くんだ」


 そう言ってアリスはまた丸を描いて円の中に左から右へVの字を書き、描いていた指先をラファへと向けた。

 向けられたラファの体に白い光の粉が舞い。その後頭上に『七七〇』という数字が浮かびあがった。

 光属性初級魔法『ヒールライト』。

 初めてのことでテンションがあがるラファに「やってごらん」と言うとラファは一発で魔方陣を描き、アリスを対象にしてヒールライトを発動した。


「面白ぉ~~い!!」

「最初は簡単なんだけどね。上位のになってくるとこんな感じに―――」


 とユキで使い慣れた氷属性最上級魔法『光り輝く氷嵐(ダイアモンド・テンペスト)』の詠唱を開始するも、Dex不足で時間内に間に合わず空に描いた魔方陣はあっけなく消えていった。


「うわぁ………何今の………」

「火と氷の受け皿は三角形でね。その中の淵際に文字を書いていくんだ。YとかFとかそんな感じの文字をね」

「英語?」

「そうじゃないみたい。確かルーン文字だったかな?それを淵に描いて次にまた三角描いて違う文字を描いて、真ん中を真っ二つにするように振り下ろすと完成」


 これを五秒以内でやらないといけないというシビアさ。何気にこの魔方陣系詠唱システムが新しく、このゲームの特徴の一つとなっている。


「慣れると右手で剣を振りながら左手で詠唱とかできるんだよ」


 そういってアリスは双剣を握り、右手で片手剣初級スキルの『スラッシュ』を。左手は武器を持ったまま人差し指でヒールライトを詠唱した。モーションを読み込み、右手でライトエフェクトで輝いている最中、ラファの体が光りだしヒールライトが発動した。

 またラファは「おぉ!!」を歓声をあげ「あたしもやってみる!!」と双剣初級スキルであるダブルをしながら左手で詠唱するのだが上手くいかない。


「その場合だと、両手でモーションしちゃってるからだめなんだ。どちらか一方の手が空いていて、尚且つその空いている手で詠唱しないと駄目なんだ」

「つまりは双剣だとできないってこと?」

「掻い摘んで言えばそういうことだね。だから片手剣スキルを入れるこのテンプレ双剣構成が強いとされてるんだ」

「確かに双剣強いかも」

「その分武器の攻撃力差があるから片手剣単発の威力とリーチで負けるんだけど。手数で勝つのが双剣なんだ」

「へぇ………なるほど上級者って感じがする」

「だからあまり初心者向けではないんだ」

「でもでも!!極めたら強くなれるよね!!」

「うん。現状最強と言われてる『アスキラ』っていう人は双剣使いらしいし、理論上最強なのは双剣とも言われてるね」


 段々とラファの目がメラメラ燃えてくるのを感じ、熱くしすぎたかな………と若干後悔したアリスだった。

 アリスはハッと思い出したとメニューを開き、またスキルをいじるなりラファに目線を戻した。


「あとは魔法の注意点かな」

「注意点?」

「注意点というか………過信しすぎるなってところかな。ねぇラファ、自分にヒールライトかけてみて」

「え?わかった」


 そういってラファは空に丸を描き、アリスも真似るように丸を描き、ラファよりも早く右から左へとVの字を描いて対象をラファに選択した。それと同時にラファはさきほど教えたヒールライトを自身へとかけるのだが、さきほどのような緑の癒しはなく、黒ずんだバリア状のものに阻まれ、反射するようにアリスが回復した。


「何したのぉ!?」

「これが魔法の注意点。まったく相手と描いてる魔方陣と逆の効果があるものを唱えると相殺することができるの」


 今アリスがやってみせたのは闇属性初級魔法の『ヒールシャット』だ。


「でもそれって相手の魔方陣見てからいっぱいある魔法の中で相手が使ってきそうなのを読んで発動させるってことでしょ?できるの?」


 正直、初級魔法の相殺はほぼむりだと思っている。だって丸描いてVだ。どんなに遅くても一秒以内にかけてしまうのだ。そのレベルになると読みとかのレベルになってくるので役には立たないが、上位のものになってくるとまた違うようになってくるのだ。


「面白いことにね、光と闇属性の受け皿は丸。火と氷は三角。風と土は四角になってるんだ。まず受け皿を見るだけで属性二つまで絞れるわけ。それで相手のスキル構成とかを考えて使ってくる属性魔法を半減にする魔法をかけることだってできるんだ」

「相殺は無理だけど半減はできるってことなんだ」

「全魔法の魔方陣を覚えてたり、魔道姫とか言われてる上位層の魔法使いは簡単に半減とか相殺とかしてくるから怖いんだよね」


 後ろでドキっとした音が聞こえたが………気のせいだろうとまた思うことにしたアリスだった。

 最初のころから考えていた魔法の詠唱、スキルモーションの話でした。

 呪文を喋るよりも魔方陣を描く。この話を書いてる最中にこんな感じ。と何度丸描いてVを空でやったことやら………

 次回は実践で、終わり次第本編のオーディションいけそうです。

 

 ご意見ご感想ありましたらお願いします。

 質問等ありましたら活動報告のほうにでも書いていただけたら答えれる範囲で答えるつもりですのでよろしくお願いします。


(2012/05/16)

 魔方陣描く速度をあげるステータスをAgiからDexに変更しました。

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