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チートな俺と歌姫な俺と  作者: 真幸
◆◇ 第二章 -幸運と不幸- ◇◆
50/54

3-18 <凍る。だがそれは穿つ>

 


 斧や槍を構えた猛者達が俺に向かって突貫してくる。

 左上から右下への振り下ろし。

 左後方から二連撃スキル。

 真後ろから単体魔法っ!!


「――ッ!!」


 前方の通常攻撃は難なくかわす。

 左後方の槍使いが放つ初級ニ連撃は、同じ初級ニ連撃で相殺。

 相殺時に激しいライトエフェクトが当たり一面に乱反射すると、Str(筋力値)の差が出たのか、相手は数メートルノックバックしていった。

 ノックバックすると同時、左手で魔法を詠唱。

 予測通り、無数の火の玉が襲いくる。難なくそれを捌き、放った魔法使いに準備しておいた渾身の魔法をお返しする。


 遅い。遅すぎるッ!!

 ちょっと前の俺でもこれくらい捌けた。

 直感がある今。


 欠伸がでるほどヌルゲーだ。


 二人の武器を一つづつ弾き、がら空きの胴体に勢いづけた一閃をおみまいすると、音をたてて崩れるプレイヤー達。

 こっちは見えないが、きっと半透明のキャラクター達が「回復班! リザをくれ!」って叫んでいるんだろう。

 ならばさっさと回復魔法が使える≪光魔法≫使い(ヒーラー)を消さないと。


 この乱戦の中、わかったことが数点ある。

 まず一つ。この周辺にいるギャラリー含めた俺も、全員名前が"赤"になっているってことだ。

 それもそのはずだ。こんな密集状況で剣を一振りすれば、緑プレイヤーに当たり、"行為的にプレイヤーを攻撃した"事になる。

 実際俺も何度か当てて謝ってるし。

 次に、直接俺へ攻撃してくるのがいる。もちろんニブル達のギルド、『ロキ・フェンリル』のエンブレムをつけた奴等もそうなんだが、もうここまで来ると全員参加型のお祭りだ。もう訳のわからない奴等も俺に直接挑んでくる。

 よし、こうなったらトコトンやってやる。

 俺の【カルマ値】も既に"100"を超えている。

 もうどうにでもなれ。

 

「――っ!!」

「もらった!」


 視認できるエンブレムをつけたヒーラーを倒すと、一人の少年に不覚をとった。

 いや、不覚と言ってもちゃんと防いだのでダメージはない。

 しかし、おかしい。直感が囁かない。

 直感が囁かなかったもので、目視して防いだ。なんか不覚。


「おらおらぁっ!!」

「――あれ?」


 発言の勢いとは別に、少年が握る双剣の攻撃はすごく遅かった。てか遅すぎて直感で軌道とか読まなくても防げた。

 なんなんだコイツは?

 攻撃が遅い。といってもこっちが攻撃に転じると猛スピードでそれを防ぎにくる。

 何がしたいのかわからない。その猛スピードで攻撃してくればいいのに。

 わざと遅くしている? 何のために?

 俺よりも幼い見た目の少年はぴったりと俺に張り付き、ちょっとやそっとじゃ離れようとしない。

 何度目かの攻防戦の末。

 ニヤリと口元を歪ませ、外見同様幼い声が聞こえた。


「そろそろかな………」


 その台詞と同時、コイツの意図を知ることとなった。

 少年の視線の先、それは俺の握る大剣だった。


「――これでっ!!」

「っ!!」


 まるでハンマーや石砕機で岩を叩き割るような、そんな爽快音が当たりに木霊し、呆気に取られる俺の顔がそこにあった。

 何が起きた?

 え? まさかと思うが、武器破壊か?


 そんなことよりも、もしかしてコイツは、わざと俺に武器で防御させ、武器の耐久値を減らしていたのか。

 それも気づかれずに。

 おいおい。まさかそんな猛者が俺に挑んでくるとは。

 そいつの掲げるエンブレムはニブルと同じ『ロキ・フェンリル』の紋章が表示されている。

 

「いつ聞いてもいい音……しかもレジェンド級武器の破砕音。カ・イ・カ・ンッ」


 まるで甘美な夢心地。うっとりとヨダレまで垂らすその緩みきった顔。それを見せ付けるように少年は俺を見る。

 とんだ曲者がいたもんだと。冷静を装いつつ、口元を歪ませた。


「大したお手前で」

「ありがとう。僕の通り名は【武器破壊(ソードイーター)】で通ってます。どうぞお見知りおきを。"元"【絶氷】のユキさん」


 最後の発言と同時に、見た目相応のはにかんだ笑顔を見せた。

 なるほど、直感が囁かなかったのは"俺へ攻撃する意思"がなかったからだろう。

 確かに、防御させることが目的なら殺気もないし、攻撃意思もない。俺の直感囁かないのも頷ける。

 大剣の状態を確認すると、(つば)先からパックリと逝っており、そこから線香のように霧散している。

 なんという職人芸だ。相手に気づかせないなんて。

 それよりも剣だ。スペアの剣。

 コイツ以外のスペアは――ない。

 そういえば今の今まで使ってたのは、氷属性の大剣『氷覇王竜・逆震』――ニブルに奪われて、ついさっき俺自身の手で破壊した大剣――のスペアとして使っていた無属性大剣『覇王竜・森羅』だった。

 スペアのスペアなんて持ち合わせていない。

 俺は霧散する大剣の柄を投げ捨て、無手の魔法使いになってしまった。


「無手になった魔法剣使いなんて格好のカモ。お見せしましょう。【武器破壊(ソードイーター)】による"元"魔法剣使いの食し方をッ!!」

「――っち」


 確かに。俺には剣が無い状態での戦いなんて今までやったことがない。

 右手と左手で魔法を詠唱。

 左手で氷魔法初級【氷の礫(アイスストーン)】を速射し牽制、右手で最大魔法である氷魔法最上級【光り輝く氷嵐ダイヤモンド・テンペスト】を準備する。


「遅い!!」


 左手の速射を掻い潜り、少年は懐に戻りこんだ。すぐさま構えた双剣で俺の右手を攻撃。

 詠唱に集中できないッ!! すかさず詠唱をキャンセルしてそれを直前で避ける。

 左右からの少年の猛攻。

 防げない。クリティカルコースだけを避けたが、HPが二、三割削れる。

 俺のHPゲージが動いた。


 ここは距離を置くのが先決だ。

 今の俺は魔法使い。オーソドックスな魔法使いの戦い方は、自分の距離を保ち、近づかせないことだ。

 むしろその逆をされるのが一番ダメだということでもある。それが現状。自分のペースではない。まずは自分のペースにするんだ。

 足元に判り易く設置系魔法を設置する。

 少年の注意がそっちにいくのを確認した後、バックステップで距離をおく。その際、少年は離れるわけにはいかないので突貫。そこを魔法で牽制して行動を阻害する。

 よし。ニブルのときとは違ってちゃんと動けた。

 実践に勝る修行はないってことか。

 いや、どうだろうか。それでもあのニブルならHPを犠牲にしてでも俺から離れることはなかった気がする。

 ニブルを否定している一方で、ニブルというプレイヤーを認めている自分がいる。不愉快だ。


 少年と距離をおけたことで、思考がクリアになった。

 冷静になったことでこの状況が何かにデジャブる。

 こんな無手の魔法剣士状態なんて………いや、一度だけある。こんな状況に似た場面。――60キャップ時代のシュウを助けたときか。

 あのときは色々あったな。クオリアに然り、シュウに然り。


 そうだ。シュウを探す。

 あのときもシュウは俺を助けてくれた。

 こんなときシュウなら。

 シュウならこんなとき。


「ユキィ――――ッ!!」

「シュ、ら、ラファッ?!」


 シュウかと思ったが、ラファの声だった。

 声のする方向に視線を向けると、なんとまぁ。取っ組み合いを続けていたラファとテルプの姿があった。


「だから、ワタシが持っていくって!!」

「いらないってのぉ!! あたし一人で十分だってのぉ!!」

「ほらッ!! 一人じゃ持てないんだからぁ!!」

「………? ――ッ!!」


 危ない。

 二人のやり取りに気を取られすぎた。よそ見するなよと、少年からお叱りの攻撃が襲う。

 せっかく、距離を置けたというのに振り出しに戻ってしまった。

 こんなとき体術スキルでも入れておくんだったと後悔する。面白半分で入れていたのはいい思い出だ。システムアシスト無しで再現ならできるが、それだと威力が数倍にも劣り、さらには速度もでないので、レベルカンストの超人集団に向かって放っても、軽々避けられるのが目に見えていた。。

 大魔法をぶっぱさせないようにイーター――名前がわからないので仮――は常に張り付いている。こうなると早々離せれないし、対処もさっきまでとは別次元になる。

 大魔法さえぶっぱできたら、足元に放って自分を守る結界ができる。

 それは相手として、どうしても防ぎたいものだ。

 だから詠唱させない。

 常に張り付き、詠唱などするものならすぐさまキャンセルさせる。

 上手い。魔法使い対策がよくできている証拠だ。


 こちらのHPが五割をきったあたりで、ラファ達の行動に決着がついたようだ。


「「ユキィ!!」」

「なに――え」


 死闘を繰り広げている中、視線を向けてみると。グルグルと円を描いてでかい刃物がこちらに向かってきた。

 イーターは援護射撃か何かと勘違いしたようで、すぐさまバックステップで避け、俺はというと援護というよりも友軍誤射、フレンドリーファイアにしかみえなかった。


 直感が囁く。絶対当たるからしゃがめ、と。

 頭を抱えながらしゃがむと、頭上をかすめ、俺の横へとソイツは突き刺さる。

 これに当たったら死んでいたかもしれない。そう直感する。

 え? 技でもない、ただの武器を投擲しただけであと五割も削れるの? 嘘でしょ?

 恐る恐る地面に突き刺す剣を抜いてみると、サクッとスポンジにでも刺さっていたのか、剣は軽く抜けた。


「お、おっと――」


 引き抜くのは軽かったが。この剣、やたら重い。

 俺がさっきまで使ってた大剣や、氷属性大剣よりも重い。

 あの二本は現状最強の剣だ。つまりはあれよりも要求Str(筋力値)を持つ武器なんて存在するはずが――いや、俺がついさっき言ったじゃないか。『もしかしたら今回のアップデートであれよりも強い剣が作れるようになったかもしれない』って。

 アップデートで追加された剣。

 その剣は流麗な片刀の刀身に、この月光を反射し仄かに極彩色を放っていた。刃に浮かぶのは二対の竜が綺麗な弧を描いて象る姿。

 鍔もなく、護拳もない。抜き身の大剣。

 蛮族風な雰囲気を醸し出す中、属性である冷ややかなオーラがそのイメージを相殺し、神秘的な、まさに伝説級の宝剣。


水氷ノ竜、穿凍すいひょうのりゅう・せんつう


 武器の詳細ウインドウを開いた。

 思った通り、製作者のところに【シュウ】の名前があった。

 レア度はレジェンド。

 要求Strは俺が使ってた大剣よりも高く、能力値も高い。

 ってか、複合属性? 氷属性と水属性を併せ持ってる。

 エンチャントも―――。


「俺の相手も忘れないでよ」

「ッ!!」


 悠長にこの武器を確認している暇はないようだ。

 イーターの攻撃を防ぐと、鍔迫り合い(つばぜりあい)という形になった。

 少年の吐息がかかる距離。そうとう興奮しているようで、嫌に荒い息がかかる。

 たぶんこの武器を壊したくてしょうがないのだろう。もう壊すことで頭がいっぱいのようだ。


「はぁはぁ……新しい武器だね。えへへ、その輝きは間違いなくレジェンド級。さぞかし甘美な"()"なんだろうなぁ……」

「っち………」

「いいのかい? 鍔迫り合いに持ち込んだ時点で、僕の術中にはまってるようなものなんだよ? 僕の双剣、ソードブレイカーは剣をへし折るためのものだからねッ!! さあ、この剣はどんな音を奏で―――え?」

「え?」


 お互い驚きだった。

 鍔迫り合いをしていると、イーターの握る剣がいきなり凍り出したのだ。

 え? え? え?

 お互い状況を理解できない。

 二人同時に慌て、すぐさまイーターは俺から離れた。


「……どんな"魔法"を使ったの?」

「し、知らない」


 俺は物凄い勢いで頭を振った。

 え? なにこれ? 俺自身、何もしてないんだけど。


「――いいね。ますます"(味見)したい"」


 涎をたらすイーター。

 さすがにこればっかりは壊されるわけにはいかない。

 シュウが俺のために作ってくれた剣だ。せっかく作ってくれて、気を使って俺に渡してくれたものだ。それをその日に壊されてはシュウに合わせる顔がない。


 イーターが構えると同時に、俺も肩で担ぐようにして構える。

 来るッ!

 猛スピードで地面を蹴り飛ばして飛び込んでくる。

 直感が囁かないので、どうやらまた武器破壊のようだ。


 すかさず肩に担いだ構えから、横一線にスキルではない攻撃。

 もう一度言おう。

 スキルではない、ただの通常攻撃の横一線を放った。


「「え?」」


 ハモった。イーターと俺の驚きの声が、確かにハモった。

 それもそのはずだ。

 たった一撃で、しかもただの通常攻撃で、さっきまで苦戦していたイーターを一撃で倒したのだ。

 それよりもあの一瞬、イーターは武器でガードしていた。のにも関わらず、その武器ごとたた斬った。

 手ごたえも、なんというか豆腐を斬るような感覚で。これは夢です! と言われたら納得してしまいそうなほど。現実離れしていた。


「な、なんだこの剣」


 困惑する俺の表情とは裏腹に、覗き込んだ大剣の刀身は、人をおちょくるように俺の顔を映すのであった。

 レベルアップしたことにより、ユキちゃんの能力≪行動予知≫を開眼させたのち、前々からチート臭ただよわせた新武器装備。

 こっからユキちゃん無双はじまります。


 感想、評価等していただけたら幸いです。

 不躾なお願いですが誤字脱字等ありましたら報告していただけたら嬉しいです。 


 あと、活動報告の方にちょっと設定載せてます。

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