3-16 <二刀流。だがそれは越えるべき壁>
無職転生面白すぎ。
「そうだ。この剣の名前は氷覇王竜・逆震だッ!!」
「―――ッ!!」
二本の剣が下段から左右、上方へと斬りかかる。
予感していたので、すぐかわし、距離を取ってもう一度コイツが握る剣を凝視した。
見間違えるはずがない。あれはどう見ても俺の剣だ。
厳密には―――。
「おい。あれって」
「そ。"元"俺の武器」
そう。"元"だ。
装備アイテムには取得権限というものが存在し、三日(正確には七二時間)を過ぎるまでに所得者がその武器に触れなければ所得権限が無効となり、フリー。つまりは誰の物でもない装備となる。
そして。あれから一週間が経過している今。
完全にあの武器はニブルという剣士を主としている。
この二刀流。使用スキル的には≪双剣≫に分類するようだ。やっかいだ。さっきまでの攻撃速度が二つになって攻めてくるってことは回避する行動をさらに最小限にしないといけない。間違って大雑把に避けるようならHPをジリジリと削られてしまう。
「へぇ~~やるじゃん。あのニブルって奴。二刀流の片手剣使いって稀に見るけど、あいつのは別格だな。元々のPS(プレイヤースキル。その人のゲームの腕)が高いってのもあるんだろうけど」
「………」
≪双剣≫スキルは双剣武器以外にも片手剣を二本持っても効果を発揮する。しかし双剣本来の持ち味である高速の連撃とはまた別で、片手剣二本での二刀流は双剣よりも速度は劣るものの、≪片手剣≫スキルの連続使用が可能となっている。その分キャラクターのステータスである筋力値である"Str"をかなり振り、さらには両手に持った剣の総合攻撃力は半減される。そういった制約の元、"二刀流"という仕様が存在している。
しかし箱を開けてみると、片手剣の二刀流の攻撃力は双剣と同等、そして二刀流は双剣よりも攻撃速度が遅い。あえての利点を言うならばリーチといったところだ。
彼、"自由正義運命"の知るところでは"二刀流"とは伊達や酔狂の類だと思っていたが、大剣を使うという選択は思いのほか良好のようだ。
「アスから見て、あの二刀流は………アスキラ?」
返事を求めたが、求めた友人の顔を覗き込んだ。
なんともまあ、歪んだ表情だった。
「こんなものか………【絶氷】」
【絶氷】。それは今戦っている二人が賭けている呼び名。
"アスキラ"が怒っている。何に対して?
二人に対してか?それとも呼び名に対してか。
否。俺は知っている。戦闘しか考えてないこの戦闘狂のことだ。
どちらにも言えることなのだろう。
ニブルにはそんな腕を持っているのにその程度で増長していることに。
ユキにはもっと上のステージに立てるのにその場でうずくまっていることに。
俺を超えれるポテンシャルを秘めているのに下のステージで遊んでいることに苛ついているいるのだ。
それを理解できる俺も俺か。とため息混じりに微笑した。
そう言いますがねぇ。アス、お前に勝てる奴なんて"ユニークスキル"でも使わん限り無理だって。
「さて、そろそろ勝負が着くかな」
やれやれ。今日もうちのマスターはご機嫌ななめだ。
「っく………」
だめだ。早すぎて俺の予測を超える。
いや、違うか。リズムを狂わせられ、足並みを揃えるのに必死なだけだ。まずは自分のリズムに戻すことが先決だ。
と、思ってるけど距離を離してもピッタリとついてくる。
さすが俺よりも実戦経験を積んでいる分、この差はなかなか埋められない。なんとかしてリズムを戻さねば。
チラリと自分のHPを見てみると、既に五割を切っている。ついでに決闘の残り時間を確認すると、すでに六〇秒をきっていた。
なかなか手痛いものだ。ここから挽回とか想像するだけでも御免被りたい。
「どうした"腰抜け"!!お前の本気はその程度か!!」
うるさい。うるさい。
こっちはどうやって挽回するか。それを考えるので必死なんだよ。
二、三度ステップを刻み、距離を離そうとするが初級≪双剣≫スキル、初級≪片手剣≫スキルの突進スキルでまた距離を縮め俺のHPをジリジリと削る。
なにか………きっかけがないと………。
「こらぁ―――ッ!!ユキィ―――ッ!!」
「え」
「しっかりしろぉッ!!」
一瞬、このマルチエリアの観客も、二人の剣劇音も掻き消え、場違いな大声をあげているプレイヤーに全プレイヤーが視線を向けた。
ラファだ。今の今まで見えなかったプレイヤーの登場で俺やシュウ達は目をパチクリとするのだが、ニヤリと笑う彼女に「隙作ったよ!!早く行!!動!!」そう言われたような気がした。
すぐさま俺はニブルの片手剣を後ろに飛ばし、後ろに下がりながら牽制と≪氷魔法≫と≪氷魔法剣≫遠距離スキルを飛ばして距離を取る。
ニブルは飛ばされた片手剣を拾い、この牽制が届かないところまで下がってくれた。
この距離はありがたい。絶好の好機だ。
「ごめん。遅くなった」
「遅かったですねぇ~~~。でもグッジョブです」
サムズアップするクオリアに、少しムッとするテルプの姿があった。
俺もラファと目が合ったため、ウインク一つして感謝した。
あぁ。これが運がいいってことなのかな?
一つ深呼吸し、下段に構えた大剣を両手で強く握り締めた。
自分のリズムを刻め。自分のペースさえ手に入れたら勝てる。
勝てる。
そう言い聞かせてもう一度肩に担ぐ形で構えなおす。
そして突貫。
『ニブルの前方に設置魔法』
「ッ!?」
走りながら俺の感がそう囁く。
この数秒でそこまで仕掛けたか。
もしかしたらと思い、俺が左手で詠唱すると、ニブルは感づいたようだ。
すぐさま初級範囲氷魔法【凍る半月】を前方に向かって放つ。
ヒット音が三つと金属音が一つ。
三つは設置魔法だろう。この数秒で三つか。さすがはニブル。と相手を褒め称えてもHPバーが変動するわけではない。
発生と破壊と同時に白い埃が舞い。お互いの姿は見えないこの状況。
さきにこのカーテンを抜けてきたのはニブルだった。
二本の剣をクロスさせ突貫してくる。初級双剣突進スキル【ダブル・ディセクト】。
囁く直感は場所も教えてくれた。おかげで現れる前に彼の横へと隠れスキル終了と同時に斬りかかった。
こっからは一方的だぁ!!!!
初級氷魔法剣【雪】の二連撃。
すぐさま左手で中級設置系氷魔法【凍てつく大地】を準備しながら、中級氷魔法剣【雪月】を繋げる。
中級からは技後硬直が長くなるため次のスキルに繋げれない。そのための魔法だ。
設置魔法をニブルの足元に設置し、発動。
後ろ姿のままのニブル。硬直が終了と同時に上級スキルを準備、すかさずニブルからも初級範囲氷魔法【凍る半月】が放たれるがそれを掻き消さんばかりに上級氷魔法剣【雪月花】と、氷魔法上級技【凍える突風】を放つ。
相手のHPは残り三割。時間は十秒を切った。
次で終わりだ!!
そう思うのだが、予感が囁く。
『氷魔法剣初級全方位技【氷剣技・氷月】の二連』
一発目を剣で防ぎ、ニ発目を同じ技で弾いた。
「よくも………ッ!!」
残り五秒。それを切られたら例えHPに差があっても引き分けとなってしまう。ならばその五秒で決着を。
ニブルとしては必死だった。あと五秒乗り切ればこの勝負は引き分けになり、黒星という結果が残らない。
時間稼ぎなら経験上いくらでも知っている。
ニブルは嫌な笑みを浮かべ、様子見に徹した。
ニブルは引き分けに持っていく気だ。しかし、俺の考えも良くて引き分けだ。
すぐさま牽制スキルで目元を塞ぐように邪魔し、俺は姿勢を低くして勝負を着けいく。
最上級氷魔法剣【夢幻の雪月花】の十六連撃を放つ。
きっとこの十六回全て決めたところで引き分けだ。
だから、俺にも考えがある。
先にニブルの右手に握る片手剣を吹っ飛ばす。
一、二、三、四、―――五ッ!!
そこで握力を無くし、吹き飛ぶ片手剣。
残り三秒。
スキルは残り十三撃。
六、七、八、九。大剣にヒビが入った。
武器単体のダメージが大きくなるように攻撃しているのでヒビが入ることはわかっていたが、やけに早い。
きっと手入れをおろそかにしていたのだろう。
「壊れる寸前じゃねーか。武器の手入れもできねーのかよ」
少し前のニブルの言葉を思い出す。自分だって同じじゃないか。
十―――さらにヒビが入る。
十一、十二、十三―――反対側にもヒビが。
十四、十五―――亀裂が線を象る。
これで――――ッ!!
十六連撃全てを叩き込むと、綺麗な一閃を描き。ニブルが握る大剣を粉々に粉砕した。
欠片はデータの藻屑となり、あそこまで粉砕してしまえばもう直しようもない。
「よくも………よくも"俺の剣"を!!!!!」
聞き間違いかな?今"俺の剣"って言ったかな?
まぁ。確かにデータ上は彼の剣だ。
だけどなぁッ!!
「違う!!それは俺の剣だッ!!」
乗り越えるべき壁を越えたような、ニブルを見下ろしている俺は少し晴れた心地がそこにはあった。
暇つぶしに読んだ無職転生が面白すぎて小説とか書いてる場合じゃねえええええええ!!!!
書いてる場合じゃねーぞ!!!!
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