3-6 <出会い。だがそれは哀れ?>
モチベあがらず更新遅れました。申し訳ありません。
目を覚ますと携帯端末が催促するように荒々しく光っていた。気が進まないまま端末をタップした俺は予想通りな文面にため息を漏らした。
シュウから大量の着信とメールが着ていた。
シュウくらいには事情を説明しようと思い、昨日あったことと、旅にでることを書いて送るとすぐさま返信がきた。
『一人でどっか行くのはいいが、お前が拾った素材は全て俺に渡せよ!!』
「―――ふふ。相変わらずだな」
晴れやかに笑い終えるなり端末を閉じ旅支度をはじめることにした。と言ってもイクスフィアを被るだけ。
ベットに腰掛け温もりが残る場所へ横になった。
目をつぶる。もう一眠りしたいと邪念が通り過ぎるも、押し殺して「ダイブイン」の言葉を発した。
◆◇◆◇
旅といってもソロで一つのクエストをやるだけだ。
クエスト名は『双竜の暴風』。二頭の大型竜を討伐するだけのクエストだが、出てくる場所がMobが大量に沸き無計画に突っ込むとすぐHPがゼロになってしまう。PTの連携が物をいうクエストだ。
それをソロでクリアする。
前にソロで挑戦したときは簡単だった。片っ端から凍らせて動けないところを斬りつけるだけだったから。当時、そのレアドロップが市場で高騰してよくシュウに行ってこい! と駆り出されていたのを思い出す。既にクオリアは【魔道姫】と呼ばれるようになって他PTに引っ張りだこになっていて、俺はというとクオリアからの束縛が無くなりソロプレイヤーとして楽しんでいたな と懐かしんだ。
だからこのクエストの何が難しいのだろう? とさっきまで思っていたが、マジで死んじゃう五秒前。『帰還のラピス石』を使わざるおえないと判断し、命からがら街に戻って今に至る。
ラピス石を使わずにあのままやっていたら間違いなくデスペナを食らっていたいただろう。ソロで一番痛いのは死に戻りでデスペナを食らうことだ。PTならすぐ蘇生でデスペナを食らわずに済むのだが………。それがソロのきついところだ。
カンストレベル『99』でデスペナを食らってしまうと半日は動けなくなってしまう。そうなると腕を鍛える前に暇すぎて別の物を鍛えてしまいそうで本末転倒だ。そしたらアリスでも動かすか?いやいや、まてまて。そんなことしたら【絶炎】とかに捕まって―――。
「………」
考えただけでゾッとする。変なことは考えないようにしよう。と二の腕辺りから感じる寒気を払い、その想像を投げ出した。
そもそもクエストに出てくるMobや双竜自身に【氷結耐性】がついていて全く凍らない。【氷結耐性貫通】がついていたあの大剣【氷覇王竜・逆震】の凄さをなくなった後に知るとは―――レジェンド級氷属性大剣。昨日のことを思い出すだけで色々な感情がこみ上げ、視界を閉じる。しかし今はそんなことをしている場合ではない、切り替えろ。
視線を前へと向ける。ちゃんと俺は立っている。大丈夫だ俺ならできる。
そう言い聞かせて止めた歩みを進めた。
「すいませ―――んっ!!どいてくださ―――いっ!!!!」
「―――?」
クエストに向かう途中、通りかかったマルチエリアでのこと。
緑生い茂る深い森のどこかに双竜が潜んでいる。その竜達を倒すべく探索していた最中、後方より地鳴りと少年の叫び声が聞こえた。
「おいおいおいおい―――っ!!!!!」
盛大にMobの軍団を引き連れて逃げている。つか何十匹だ?むしろ二桁であってるのか?三桁いってるんじゃないか?
もしあれが故意ならばMPK―――Monster Player Killerの略。モンスターを利用してPKする行為。―――になるがあの涙や鼻水を垂らした情けない顔。さらには片っ方の足装備をどこかに落として素足でなりふり構わずに駆けているあの姿。
どう見ても本気だ。マジとかガチとかで読まずに本気だ。
あれが本当に故意で俺にMPKを仕掛けようとしているなら本職の役者か詐欺師の類だと納得するだろう。
さすがの俺もこんなイベントに出くわしてしまったら『助ける』『助けない』の選択肢を突きつけられたら『助ける』を選んだ。
だって本当に可哀想なんだもん。
俺は背に収めた大剣を肩で担ぐようにして剣を構え、柄を握る手に力を入れる。
Mobはレベル『85』のドラムーというイノシシに小さな羽が生えたドラゴン。もうここまでくると名前にドラとか付けばなんでもドラゴンになると思ってるんじゃないか?ついでに羽があっても飛べないのでタダの豚。さすがにあの大群はちょっと足が竦む。
リンク属性―――一匹攻撃すると近くにいる同種のMobが反応して襲ってくるタイプのMob―――のため、下手に手を出すとこんな感じに痛い目をみる。きっと何かの拍子に誤って叩いてしまったのだろう。
前列に三、四匹とその後ろに多数。一撃では倒せない相手、だが氷結耐性はない。ならば―――。
少年が通りすぎるのを確認したのち、大剣を腰に納める。瞬間剣が青白く光り輝いた。
氷魔法剣最上級前範囲技【氷剣技・氷月天衝】。
数秒溜め、気と魔力を剣に乗せて扇状に青白い半月がなぎ払う。射程は自分を中心に半径二〇メートルあるが貫通せず、当たった物より後ろには当たらない。威力は高いが溜めと硬直が長いのでソロプレイや一対一での対人戦では向かない技でもあり、最高位の技のくせにPTプレイ以外では使えないという不遇スキルでもある。
そんなスキルをなぜ使うのかというと。前列にいるドラムーを氷結させそのまま集団転倒させてしまおうという意図だ。それにこのスキルは見た目がかっこいい。スキル発生と同時に左から右へと地面を抉るエフェクトとそれを追う青いライトエフェクトがスキルを装飾する。見た目はかっこいい、だが性能はゴミ。
ドラムーの前列が射程に入った。
よく足元を狙って―――放つっ!!!!
「あれっ!?」
放たれたスキルはズバンッ!!と激しい音を立てるも、そのイノシシ達の進行を阻止できなかった。一匹くらいは凍ってもおかしくはないのだが一匹も凍らない。
―――やば。俺も彼と同じ顔してない?
今から必死に逃げるので俺の顔だけは見ないで。
「あ、あの………大丈夫ですか?」
「ぎ、ぎりぎり………大丈夫」
走り去ったドラムーのあと、なんとかドラムーの索敵範囲外まで逃げ切った俺達は激しく動く肩を落ち着かせるべく各々寝そべったり木に寄りかかったりとしていた。
しかし助けるつもりであった相手と一緒に逃げたことを思い出し無性に恥ずかしくなった。もう今すぐ穴掘って入って氷で蓋したい気分だった。
呼吸を落ち着かせ視線を前に戻すと一緒に逃げていた少年と目が合う。何か希望に満ちた笑顔だ。
え?何?俺の顔に何かついてる?むしろまだあんな顔してるとか?
やめて!見ないで!
「あの………もしかして【絶氷】のユキさんですよね?」
「え?………」
「あ、いえ。間違ってたのならごめんなさい」
「………」
【絶氷】―――か。
俺は視線を下に流した。
「確かに俺はユキだけど………もう【絶氷】じゃないんだ―――」
「そんなのどうでもいいんですっ!!」
「へ?」
「あ、すいませんっ。僕の名前はクーリン。ユキさん、あなたの力をお借りしたいんですっ!!!!」
「俺の………力?」
「えぇ。あなたの幸運をお借りしたいんです」
「いまいち飲み込めないんだけど………」
「えっと、ユキさんって幸運の星に生まれたラッキーボーイなんですよね!?」
「いや、それシュウが勝手に言ってるだけだから………」
「それでお願いなんですが………ク、クエストを手伝って欲しいんです!!」
「クエスト?」
◆◇◆◇
「忙しい中ありがとうございます」
「いや、そのクエスト俺もやるつもりだったからね」
どうやら彼、クーリンも双竜のレアドロップが目的のようだ。ソロで生と死の狭間を危なげに渡るくらいなら、少しでも攻略の糸口を見つけるためPTを組んだ方がいいだろう。
しかしクーリンの装備から自分よりも下のレベル『75』かと思ったが、少し下のレベル『95』だった。装備の色違いか?いや違う。一度しか見たことがないから忘れていたんだ。
この装備はNPC店で売っているノーマル装備だ。こんな装備付ける人いるんだ………。
何か手持ちであげれる装備でもあればいいのだが、そんなもの持ち歩いてるわけもなく。あとでシュウに何か送ってもらうことにしよう。『90』台のレアかエピック級装備があれば彼のステータスもかなりあげれるだろう。
そもそもなぜそんなノーマル装備なのか聞いてみた。
「え?だって装備なんて高価なもの、買えないですよ」
「お金がなくてもクエストしてたら普通に素材集まって作れない?」
「え?オークションで買って集めるんですか?」
「ちょっと待って。いつも狩りでなにしてるの?」
「お金集めとクエスト報酬でのお金集めです」
「素材は?ドロップするでしょ?」
「ドロップするんですかっ!?」
なんだろ………会話が噛み合わない。
確かにMobを倒せば極小ながらお金を貰える。クエストをクリアすれば少ないがお金を貰える。
あれ?ドロップは?むしろレアドロップ目当てでクエストをやるんじゃないの?高く売れる―――この間シュウからレアドロップは高く売れることを教えてくれた―――からお金稼ぎ=レアドロップ集めと思っていたんだけど………。あれ?
「ちょっと待って」
ちょっと前に手に入れたレアドロップ。アイテムストレージに入っていたレア素材『光り輝く龍血★4』をクーリンに見せた。
確か………相場にして一〇〇k(10万)くらいで売れたはず。血とか液体系は材料として大量に必要なので値段は少し安くなる。
「おぉ!!これがレアドロップですか………」
「大したレアじゃないけど。アイテム名の横に星マークが書かれてるでしょ?この数字が多ければレアなんだ」
「でも僕。Mobがレアドロップするところ初めて見ましたっ!!」
「いや………大丈夫?別のゲームとかやってるんじゃないよね?」
「あはは。よく言われます。昔から運が悪くって、ホントはこんなゲームやってる間でもリアルで火事とかしょっちゅう起きるので怖くて」
「………」
「この間とかもいきなり接続切られて、驚いて起き上がったら家が燃えてて助けにきた消防士さんに『また君か!』とか言われちゃいまして」
俺は彼になんて声をかけたらいいのだろうか―――。逆にそんなことがあってよく生きていられるなと驚き通り越して関心してしまうのは俺だけか………?
「と、とりあえずクエスト一緒にがんばろう」
「よろしくお願いします!!」
・補足・
***【百人斬り】***
補足してなかったのでここで。
始まりはギルド【SEED】内、ギルドイベントの一環としてアスキラとのタイマンデュエルが月に一度行わていたところ、ギルド外の人間も俺も俺もと参加しだすようになってしまった。
なら俺が百人までなら相手してやんよーと冗談交じりでやってみたら本当に百人斬りしてしまったというのが始まりである。
そこから恒例行事と化してしまい、ルールも決まっている。
1、毎月一人一回。
2、複数人同時に名乗りだした場合はアスキラが指名する。
現在四ヶ月連続百人斬り達成中。
***【クーリン】***
新キャラ。主人公ユキの激運とは正反対の超不運を持つ少年。ゲームしている最中にリアルで事故や事件がしょっちゅう起こるのであまり長々とゲームできない。
基本的には常に金欠。Mobを倒してもレアドロップなんて見たことはなく、POT―――回復剤―――と装備の修理で常にカツカツ。装備もNPCが販売するノーマル装備で固めていたりする。
外見はユキよりも若干小さく、メタリックシルバーの重量装備の鎧で固めている。武器は両手斧。
名前の由来は『クーフーリン』を可愛くしただけ。初めは槍使いだったが、当時槍は人気大爆発市場で高騰していて、当時安かった斧に乗り換えた。
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イクシオンサーガとかいうネトゲやってて更新遅れてたわけじゃないんだからねっ!!!!ホントなんだからねっ!!!!
そろそろ真面目な次回予告。
自分と正反対の超不運を持つ"クーリン"と出会うユキ。
二人でクエストに向かい、そこでユキは衝撃を受けるのであった。
次回 チートな俺と歌姫な俺と 二章 第七話 【 幸運+不運=?? 】
感想、評価等していただけたら幸いです。
不躾なお願いですが誤字脱字等ありましたら報告していただけたら嬉しいです。




