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チートな俺と歌姫な俺と  作者: 真幸
◆◇ 外伝 -鍛冶師な俺とチートなアイツと- ◇◆
28/54

0-1 <槌を振るう理由。だがそれはアイツの性>

 一ヶ月ぶりの更新っす。

 またこれからも更新していきたいと思ってます。

(2012/09/13)改変しました。


『ドラゴンスレイヤーズ』というゲームがサービスを開始して、半年という月日が経った。

 トッププレイヤーともなると、カンストレベル六〇。

 次のレベルキャップ開放はよ! キャップ開放はよ!

 そんな声と共に日夜、現状最高レベルの装備を揃えたり、キャップ開放時に備えて貯蓄するなど、切磋琢磨している。


 トッププレイヤーとは言えないが、彼も日々切磋琢磨していた。

 名はシュウ。

 幼なじみの、ユキと肩を並べトッププレイヤーとなるべく、一緒にフィールドを駆け巡っていた。

 しかし彼の、ユキのプレイスタイルは異質を極め、『異端』と昇華させていた。




 話は少し遡る。




「ちょっとお前のストレージ(アイテムを入れている場所)見せてみろよ」

「ん? はい」


 シュウは何気なくユキに訊ねた。

 見せられたものはレアドロップのオンパレード。

 むしろ本来出るもの、NPCの店で売るしか価値のない、俗に言う"ゴミドロップ"が少ない。

 所変わってシュウのストレージはその"ゴミドロップ"のオンパレード。

 装備の素材にもならないものばかりだ。

 わかっていたことだが、幼馴染の激運チートにため息が零れる。

 あんなにレアな素材があれば、金の力ですぐさまトッププレイヤーになれるだろう。


 シュウは焦っていた。

 もうまもなくレベルキャップが開放されようとしているのに、トッププレイヤーに、レベルカンストすら見えてこない。

 MMOでくらい有名になりたいと思うのは至極当然なこと。

 ユキの幸運ならばいずれ彼は勝手に有名になるだろう。

 こいつが有名で、俺が無名でいいのか?


 それが彼、シュウの悩みであり、今彼を駆り立てている焦りの正体だった。


 一つ息を吐いたのち、シュウはNPCの商人というゴミ箱にそれを突っ込む。

 それと同じくして横でユキもウィンドウを操作している。

 しかもやけに長く。


 自分と同じくらいの時間をかけてやっているもので、シュウはユキに問うてみた。


「おいお前。一体なにしてんだ?」

「え? "ゴミ"売ってるんだけど」

「ゴミ? お前のストレージの中にゴミなんて………ちょっとストレージ見せてみろ」


 見せられたストレージは綺麗にレアドロップだけが消え、残っているのはさっきシュウが捨てた"ゴミ"ばかり。

 この馬鹿は………。


「見ろ! このアイテムの下! 星がついてるだろ? それの数が多いほどレア度が高いんだ」

「え? 逆だろ? だってこの星一個のやつ全く出ないんだけど。シュウ言ったよね? “出やすいアイテムはゴミ”だって」

「そうだけどそうじゃねーんだよ! だからお前は『異端』なんだよ! 一人だけ別ゲーしてんじゃねーぞっ!!」


 そりゃレアドロップ出てる割に持ち金が同じくらいで変だなと思ってはいたんだよ。

 大抵レアドロップは【鍛冶師の心得】というスキルを持っているプレイヤーに渡して装備を作ってもらうか。商人スキルを持つプレイヤーに渡すか、オークションに出品することで金にするかの三つ。

 装備を作るか、金にするかの二択だ。


 しかしこのバカはそんなこともせず、他のゴミドロップと同じ値段で買い取るNPC商人に全部、まさにゴミのようにはした金で放出していたのだ。

 確かにクローズドのときに面白半分でユキに変わってレアドロップをオークションに流して市場崩壊させたことがあるが………。


「お前この半年何してたんだよっ!!!!」

「そんなのお前と一緒だよ」


 やばい。頭痛くなってきた。

 一緒だよってことは………何か。毎日俺と狩りして、ドロップ品売って………。

 待てよ。


 気づいたときには遅かった。

 横でユキが装備を全て外し、『修理の砥石』を使って装備の耐久力を回復させていた。

 一件この風景はよく街で見かける光景だが、シュウだけはこの"違和感"を知っている。

 『鍛冶師の心得』のスキルを装備していない状態で『修理の砥石』を使うと一割しか装備の耐久力が回復しないことを。

 こいつはそのスキルを持っているのか? 彼の記憶が定かであるならば………。


「おい。ユキ」

「なんだよ」

「お前―――【鍛冶師の心得】って持ってたっけ?」

「そんなもん"持ってるわけない"だろ」


 シュウは大げさにため息を吐いてみせた。


 昔からコイツはこうなんだよ。

 人への勘はいいのに自分に対して鈍感で、持ち前の激運を無駄にするんだ。

 それだったら………。


 シュウの中で一つの考えが過ぎる。

 こんなチートが横にいるんだから本格的に"鍛冶師"を目指してみるのもいいかもしれない。

 ちょっと前から"鍛冶師"に興味が湧いて、コツコツとスキルレベルをあげていた。

 このゲームにおいて鍛冶屋の需要は最も高く、それゆえ商戦も激しい。


 そもそも一番の難題は素材を買って装備を売る"循環システム作り"だ。

 大抵の場合は自分も狩りに向かい、素材を集めて装備を作って売るの繰り返しだ。

 ただこの場合だとどうしても効率が悪い。

 店を構えて鍛冶屋としてやっていくのは相当後になってしまう。


 ならどうするのか。

 そのために露天というものがある。

 "鍛冶師"達は各々作った装備を置いたり、素材を買い取ったり、装備の耐久を修理してお金を集めている。

 その辺の『職人』に素材を売るより、オークションに流したほうがいい値がつくが、三日と時間を待たないといけない。

 早急にお金が欲しい人や、優遇してもらうため売ってくれる人などもいる。後者の場合はお礼に無償で装備の修理をしてくれるたりする。


 シュウはシステムウィンドウのスキル欄を見る。

 【鍛冶師の心得】のレベルは三十四。

 【商人の心得】は二十。


 "鍛冶師"の方は上位の装備を作るにはまだレベルが足りないが『修理の砥石』一回で装備の耐久力を五割まで回復させることができる。

 装備修理屋としても十分にやっていける。


 "商人"の方も十もあれば露天を開くことができる。

 店舗を持つにはスキルレベルを六十まであげないといけないのでまだまだだ。

 当分の間は装備の修理を主にやっていき、ユキからレア素材をもらって装備を作っていけばなんとかなる。


 うん。なんかいけそうな気がしてきた。


「ユキ! 俺は剣を捨てるぞ!!」

「………? あ、あぁ。頑張って?」


 こうして本来目指していた剣と魔法で名を馳せるという目的は、彼が目の当たりした親友のサガによって生産職への道へと誘った。


 これはまだ、彼の幼なじみが【絶氷】と呼ばれる前。

 一人の駆け出し鍛冶師の話である。






      『チートな俺と歌姫な俺と ー 外伝 ー 鍛冶師な俺とチートなアイツと』






 とりあえずユキには「タダで装備の修理をしてやるから狩りが終わったら素材を全て俺に渡せ!!」と言って早一週間経った。 

 さすがに大量の上位素材をカンカンと装備にしていたら、凄い勢いでスキルレベルがあがっていく。(八割方『精錬に失敗しました』というロゴと『鉄くず』というゴミが現れた)

 気づいたときにはスキルレベルが五〇まであがり、ようやく上位の装備が作れるようになった。

 その間ちゃんとユキにもお小遣い程度のお金はあげている。ホントだよ?


「はい。まいどー! また来てください」

「おっすシュウ」

「よおユキ。今日は早いお帰りだな?」


 客と入れ違いでユキがシュウの露天に顔を出した。

 二メートル平方の赤い絨毯に品物を広げ、その中心でシュウは胡座あぐらをかいている。

 ユキは見知らぬ装備を手に持って出てきた詳細を覗いていた。

 どうやら客足が遠退くのを待っていたようだ。


「さっき帰ってきたんだよ。ちょっと時間潰しに付き合ってよ」

「時間って―――そういや今日ボイトレの日か」


 毎週火曜日はユキが通うヴォーカル教室の日だ。

 学校からすぐ向かい、レッスンを受け、ちょっとブースで歌って帰ってくる。

 約三年通ってるもんでコイツの歌声はプロ顔負けにまで成長してる。

 最近カラオケに行く機会があり、ユキの歌に鳥肌がたったのを思い出した。


「約束した時間よりも早く帰ってきちゃってさ。暇なんだよ」

「なるほど」


 納得したシュウは止めていた手を再度動かし、武器の制作に取り掛かる。

 使っている素材は全てユキが狩りで集めたものだ。


 ………大丈夫。

 いずれユキへの借りはちゃんと返すつもりだ。―――たぶん。


「約束って………あれか。スキルスロットが全部魔法スキルの子か」


 シュウはその話を思い出してクスリと微笑した。

 このゲームはスキルスロットに【装備】を入れなくてもステータスさえあれば着ることができる。

 だからスロット全てを魔法にすることも可能なのだが………スキルスロットに【装備】スキルを入れるメリットが存在する。

 それは大きな"ステータスボーナス"だ。

 そのボーナスも防御力だけではなく、他のステータス、攻撃や素早さにもボーナスがあるので、スキルが無いと有るとでは天と地ほどの差が開く。

 公式では明確に発言されていないので、初心者にはありがちなミスだなと再度シュウは笑ってしまった。


「笑うなよ。俺だって誰かさんのせいで氷魔法取ったんだから………まぁ。おかげさまで『氷魔法剣士の心得』とかいうレアスキル手に入ったんだけど」

「悪かったって。なんだかんだ類は友を呼ぶっていうじゃん?もしかしたらその子、お前に似た大きな力持ってるんじゃね?―――知らんけど」

「なんだよその大きな力って………でもやっぱり誰かとやるのは楽しいよ。これぞMMOって感じ」


 そう。MMORPGの醍醐味といえば他のプレイヤーと協力してプレイすることだ。

 一人だとただの遠足が、多人数によって思いがけない冒険になったりする。

 シュウもユキとやってなければこのように鍛冶師として美味し思いをしなかったであろう。


 ほくそ笑みながら作業していると、手持ち無沙汰なユキは近くにあった大剣を手にして軽く振っていた。

 どうやらその剣が気に入ったのか「いいなこれ」と感想を漏らした。


「お客さん御目が高いねえ。そいつは巷で有名な属性がつけれる大剣。【|ロイヤルオーダー(精霊王の誓い)】だ」

「へぇ~~~………」


 結構要求『Str』が高かったはずなのだが、ユキは軽々と片手で振り回していた。

 そういえばコイツ『Str型』だったと思い出す。

 さすがはチート。

 某匿名掲示板で晒されてる上位ランカーでもこの大剣【ロイヤルオーダー】を片手で持つなんて数えるほどしかいないはず。


「いいね。いくら?」

「あ、えっと―――こんくらい」


 ユキに向けて人差し指を一本立てる。

 この一本をどう捉えたのかユキは表情を明るくした。


「一〇〇k(十万)?」

「ちげーよ一M(一〇〇万)だ」


 それを聞いて一層訝いぶかしげな表情に変え「ぼったくりだ………」とつぶやき、恐る恐るその武器を床に置いた。

 ユキがシュウの店にかなりの貢献をしているので、正直無料提供してもいい。

 だがコイツがいい思いをしてるのが嫌にしゃくにさわるものでシュウはそれを拒絶した。


 それから学校での他愛のない会話をしながらシュウは作業を続け、ユキはというと最初は作業を眺めていたが飽きたようで外部サイトにアクセスして『ドラスレwiki』などを覗いていた。


「ぉ。とうとう"極赤竜"倒したPT現れたらしいね」

「あぁ聞いた聞いた。あそこだろ、『SEED』の"アスキラ"だろ? 前回もあのギルドだったよな」

「巷じゃ【最強】の通り名だからね。俺も"アスキラ"みたいになりたいなぁ………」


 強さに憧れるユキ。

 正直なところ、彼、シュウはユキの"異端"をよく知っている。それは一種の"才能"であり彼の強さでもある。

 いずれは―――きっと―――。


「おっと。もしもし――――」


 どうやら今のパートナーから念話がきたようだ。

 ユキはそのまま席を立ち、離れた場所で通話する。

 数分後には近くの道具屋でアイテムを揃え、準備万端になるや。


「んじゃ一狩りしてくるよっ!!」


 清清しい笑顔で去っていった。

 そんなユキに、シュウも笑顔で送り、心では(いっぱいレア素材取ってこいよ)と思いを込めた。


 さてさて、俺も頑張ってスキル上げをせねばと、止めていた手を動かすと同時。


「すいません」

「はい。いらっしゃい」


 新しい客が現れた。

 舌打ちが零れそうだったが、客は神様だ。

 満面な営業スマイルを浮かべるが、すぐさま凍りついた。

 客は女性二人組。すんげー美人。それが第一印象だった。


「武器を作って欲しいんです」


 まさかこの出来事から、巷で有名なレア武器ばかりを扱う"鍛冶師"【ヴァルカン】のシュウへとなるとはそのときのシュウには想像もつかない出来事が起こるのであった。

 お久しぶりです!

 更新速度も気分ごと落ちてやる気も何もなかったんですが色々なことに追い回されるうちに逃げるように執筆してました。どうも真幸です。

 またちょくちょく更新していく予定ですので応援よろしくお願いします。


 さてさて、始まってしまいました番外編。

 最初は意気込んでいたんですが

『ネタがない』

 となってしまい一ヶ月もポゲーと過ごしてしました。

 この番外編も2、3話で終了するのを見越して書いていきたいと思います。

 番外編書いてて本編早く書きたいと思うとは思いませんでした。。。




 それでは感想等ありましたらよろしくお願いします。


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