2-13 <後半戦開始。だがそれは………>
「とりあえず一位で終わったのはいいんだけど………なんだよ、お前等その顔」
ちょっとした表彰式のあとユキは急いでキャラクターチェンジし、すぐさまアリスでINをするとそれをにやけた顔で迎えるシュウ達の図である。
「いやぁ~~……アリスさん。なかなか立派な騎士様でしたよ?」
「【絶氷】、ウラヤマ」
「なんだよ!!お前等キショク悪いなぁ………」
迎えたシュウとシャルナはニヤニヤと目を吊り上げて気色悪い笑顔を浮かべている。どうやらユキとテルプの映像が音声付きで流れていたようでラストの【属性の斉唱】の件から会場内は歓声があがるほどに熱を帯びたとか。
それを聞いた瞬間ユキ本人赤面で逃げ出したかった。ユキはそんな視線から逃げるためにキャラクターを変えたのだった。
アリスがその二人の合流すると同時に逆方向からクオリア達も来た。
「あ。アリスだぁ~~!!」
「早いお帰りですねぇ~~アリスさん」
ラファは小走りでアリスの腕に抱きつき、クオリアは自分の頬に手を当て細い目で迎えた。なぜかラファはアリスのときに限り彼の腕に抱きつく。アリス自身ちょっと困ってたりするが、彼自身いいカモフラージュだと思ってたりする。
「アリス聞いてよ!!この狸が―――」
「いいんですかぁ~~?ラファさん」
クオリアを指差して目を釣り上げるラファと絶えぬ笑顔のクオリア。見た感じ力関係がはっきりしているようだがラファ自身それに抗ろうとしていた。その様子をよくわかってないアリスはクオリアとラファのいつもの調子と捉え微笑してその場を流すのであった。
そんないつものメンバーに新手の訪問者が訪れた。
「ねぇ―――」
「あれ?あんた………」
さきほどまで見ていた黒髪の少女アバター。
「ヘルプ!!」
「だからテ・ル・プっつんでしょーがぁっ!!」
テルプは「まったく………」とバツの悪い顔でその長い黒髪を掻揚げた。
「どうか―――したの?」
アリスはさっきまでの感覚で話しかけようとするのを慌てて口調を直し、要件を聞いた。
しかしテルプは「そ、そのぉ………」と歯切れが悪い返答のみでそれからは詰まったように口を閉じ、視線はあちらこちらに泳いでいた。それを見かねたラファが。
「はっきりしなさいよ。まさか本当にヘルプってるのわけ?」
「な、何上手いこと言ったと思ってるわけっ!!そんなんじゃないんだからねっ!!」
そこからまた「えっと………」っと濁らせラファからため息が漏れた。
「さっきのユ―――アイツ!!どこにいるのぉ?」
「アイツって?」
「あ、あ、あ、アイツはっ!!―――あいつよ」
徐々に彼女の頬が赤く染めていく。『アイツ』という単語を理解したのはアリスとラファを除く三人のみでわかっている三人したらニヤニヤと悪戯に笑みを浮かべてアリスを見た。
「ユキか?あいつなら用事があるとかでさっき落ちたぞ」
「そ、そぉ。ふ、ふぅ~~ん―――」
テルプは『ユキ』という単語を聞いて反応示したのち、用事があると聞いた瞬間テルプは視線を逸らした。当の本人は複雑な気持ちでその光景をただ見つめた。
「じゃ、じゃあ………その………あ、"ありがとう"………って伝えてもらえる?」
「そういうのは直接本人に言った方がいいですよぉ~~?」
「そうそう。基本ゴールデンタイムとか俺の店"ヴァルカン"にいるからさ。暇なときにでも来てよ」
悪戯にクオリアとシュウが言う。その二人の様子を見たシャルナは「やれやれ」とため息を吐き。アリスは苦笑いを漏らした。まんざらでもなかったようでテルプ自身上目遣いでアリスを見た。
「い、行ってもいいの―――?」
「あぁ。暇ときにでも来なよ」
一瞬、一瞬だけ。テルプは花開くように笑顔を見せてすぐさま視線を逸らし、髪をかき揚げながら
。
「べ、別にアイツに会いに行くとかそんなんじゃないんだからねっ!!アンタ達が来ていいって言ったから行くだけなんだからっ!!」
隣にいたシュウから「ツンデレ乙」とボソリと聞こえ四人は微笑した。
「うん。待ってるよ」
それはユキとして言ったのかアリスとしていったのかわかならないが同一人物だと知らないテルプにとって第三者からセリフに鼻を鳴らし、踵を返して去っていった。
「これでまたハーレムが一人増えるわけだ………」
「なんか言ったか?シュウ」
「なんでもねーよ………運がいいとハーレムって関係あるんだろうか」
何やらよくわからないことをつぶやいているシュウに対してアリスは小首をかしげるのであった。
『まもなく後半戦を開始いたします。二五一番以降の方は壇上前にお並びください』
「そういえばお前何番だよ」
「二五一番」
尋ねるシュウにアリスは自分のバッチの番号を見せた。
「あんまりパッとしない数字だな」
「何が言いたいんだよ」
「お前なら七の数字引くかと思ったけどさっき引いたもんな」
「【絶氷】。行くよ」
「―――?あ、あぁ。今行くよシャルナ。行ってくる」
シャルナを後を追うように後ろを着いていく。シャルナの番号は確か三六六なので十列ある列の中間で別れ、アリスは一番後ろの左から一番目の人を見た。胸には確かに自分と同じ"二五一"のバッチをつけたプレイヤーがいた。
「ガッハッハ。お前が俺のパートナーか」
アリスのパートナーと思わしき人物は「ガッハッハ」と漫画みたいに笑い声をあげるキャラクターだった。背丈はアリスよりほんの少し高く。黒の短髪に群青色の瞳。装備は赤いロングコートと中には黒いバトラースーツを着込み、腰には赤い片手剣を付けていた。
見た目的にはアリスよりも年上に見えたが、声が幼い感じに聞こえたのでアリスと同じかそれの前後と思われた。
装備を見た限りだと炎属性強化の装備と炎属性の片手剣といったところだろう。
(この片手剣―――どこかで見たことあるような………)
彼が装備している片手剣を見るアリスに対しその男は気分をよくしたのか、また「ガッハッハ」と笑い、片手剣を鞘から抜いてみせた。一振りするたびに熱で空間が歪み、周囲に陽炎を漂わせた。
「こいつはレジェンド級の片手剣【炎帝のツルギ】だ」
(思い出した。ちょっと前、ユキで装備してた【氷帝のツルギ】の炎版か)
現物と名前を聞いて思い出したアリスは以前まで使っていた片手剣を思い出す。使ってた時期は一瞬で、すぐに大剣が片手で扱えるようになったんだっけ。と感傷に浸っていた。
「おっと。自己紹介が遅れたな。―――といっても俺みたいな有名人自己紹介など必要ないか」
「………?」
彼は何を言ってるいるのだろう?アリスは小首を傾げとりあえず自己紹介しようと軽く頭を下げた。
「えっと………アリスです。レベル―――1です」
改めて自分のレベルがまだ1のことに気がついた。そういえばラファとの狩りも一匹しか狩ってないし、結界竜のときもユキで倒したもんだからレベル1のままなのかと納得した。
「おっと。初心者か、そりゃ俺の名も知らないのも頷ける。―――俺の名は炎真。周りからは【絶炎】と呼ばれておる」
―――【絶炎】。
自分以外の"絶"付きを見るのが初めてだったアリスは驚き、その表情を読み取った炎真は「気づいたか………」と零した。
「さすがに【絶炎】の通り名は有名か。アリス殿、ここは大船に乗ったつもりでこの炎真に任せておれ。ガッハッハッ!!!!」
このときはまだアリスは知らなかった。"絶"付きのエンチャントがユキのそれと一緒だとアリスはずっと思っていたのだから―――。
絶炎、炎真くん登場。 とりあえず同類を何と呼べばいいのかわからなかったので「"絶"付き」という風にしてみました。
感想等いただけたら幸いです。




