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チートな俺と歌姫な俺と  作者: 真幸
◆◇ 第一章 -オーディション- ◇◆
11/54

2-3 <歌スキル。だがそれはチート>

 アリスが歌スキルの発動条件に感づいたときにはラファも発動条件に気づいていた。


「ド………ミ………シ………」


 ラファは楽譜なんだと理解した。五線譜は引かれてはいないが五線譜の感覚で音符を置いてるのはわかる。だが、それがどの音程なのかがわからない。

 なるほど。これは一種のテストなんだとラファは察した。

 優に十万は超える参加者をふるいにかけるなら必要としていない人材を切り捨てるのは有効な手段だ。今回の場合だと必要としているのは歌姫、『歌』。

 この一次予選の内容は楽譜が読めるのか?ある程度の音感を持っているか?の二つであろう。前者の方は一般教養なのでだいたいの人は理解してると思うが後者に限っては違う。音感を持っているかどうかはどれくらい音楽を扱っていたかがよくわかるものだ。天性的に絶対音感を持っている人も稀にはいるが、極稀である。幼少より音楽に触れている人ほど強い音感を得られるという。

 ラファは唇を強く噛み、首を振ってまた違う音を発してみた。


「ラ………ド………ソ………」


 この答えが合ってるかどうかはラファにはわからなかった。だけどまだ見つからないのであれば試してみる価値はある。そう思ってラストの音を試すと一層急に騒がしくなった。否、騒がしいのではなく、一つのBGMが彼女の聴覚を占領したのであった。


「なに………これ………?」


 オーケストラが奏でたような多種多様の楽器での伴奏の音が頭に響いて聞こえる。周りを見渡してみるがどうやらラファにしか聞こえていないようだ。

 誰かのために思い、誰かのために歌う曲。それの音楽を例えるなら子守唄だった。

 視界左下にあるログには、確かに『 ラファ は 魂の揺籃歌(スピリアララバイ) を 発動させました 』と確かに成功させた証拠が残っていた。

 しかし成功させてみたはいいがその効果が現れなければ意味が無い。そういえばとさきほど成功させた人のを見たときは一人眠って倒れた人がいたと思い出す。もしかして対象を指定しながらスキルを発動させないとダメなのではないか?

 指を刺しては気づかれてしまう。視線指定でもきっといけるはずだ。とすぐ横にいる縦ロールの少女に指定してスキルを使ってみた。

 脳内で響くBGMを少しして音を立て、まるで劇団の一こまのように少女は倒れた。なるほど、視界指定で対象を指定し、スキルを使うことで対象を状態異常にするスキル。それが『歌スキル』。人ごみが集まりだしたので自分も野次馬にまぎれるようにしてその場から離れる。次は指定距離だ。目算で一メートルづつ離しながらスキルを使っていこう。


「一メートルは―――成功。二メートルは―――あれ、失敗?なら三メートルは―――成功。確立は一〇〇パーセントではないのね」


 失敗したらもう一度その距離を試し、絶対成功しない距離を探すと十メートルまでの距離で確立は約九〇パーセントというものを導き出した。それは確かに高いものなのだが、『睡眠』の効果時間が短いのでそれだけで人を倒すというものにはできない。なら状態異常で人を倒すとなると―――。自分が蓄積させた知識の中を探すと一つの答えを導き出した。


『石化』だ。


 このゲーム『ドラゴンスレイヤーズ』は他のゲームとは違い、石化後の時間経過によって死亡扱いにされることがある。他のネットゲームだと時間経過でその石化も解かれるのだが、このゲームに限っては死亡扱いにされる。といってもパーティー狩りが基本のネットゲームにおいて状態異常をそのままにしておくことがまずない。パーティーメンバーの一人が石化にかかったとしても他の五人が石化を解く『錬金の針』を持っていないわけがないのでソロ以外では死ぬことはない。


 つまりはここでスキルレベルをあげて石化の歌を覚えて、全員石化させないといけないわけだ。途方もない計画だけどやる気がこみあげてくるのがわかる。

とりあえずは暫く様子見でスキルの使い方を試してる奴等の名前を覚えていこうと壁越しに移動するのであった。




 * * *




「予想外すぎる………」


 悩む思考につい漏らしてしまった。

 そりゃそうだよ。普通に考えればわかることなのに………。


 彼、アリスはラファ同様にスキル発動条件を理解し、発動させてみると。本来なら対象を指定して発動させるのが、この口元で踊っているユニーク級武器『カリダ・ニンブス』のレア効果『広域化』によって自分から半径十メートルのキャラクターを『睡眠』状態にさせてしまった。彼の強運での確立も九十九パーセントをマークし、周囲の人という人を全て眠らせてしまったのだ。


 どうしよう、このままではいつかは起きてしまう。


 まるでモニターを見ているシュウ辺り「チート乙」って言ってるのがわかるほどに自分のチート具合を再確認させた。とりあえずは石化の歌を取るまではスキルのレベル上げをしないといけないわけだ。

 苦虫を噛み潰した顔でアリスは自身のメニュー欄からスキルのページを開き、今現在の歌スキルのレベルを確認した。


「………二十五?はや。さすがに五百人近く眠らせるとそうなるか」


 取得したスキルを見てみると『女支配者の夜想曲(メデューサノクターン)』メデューサの文字からしてこれだろうと理解する。音符も数が多くなって理解しやすかった。


「シ、ラ、ラ、レ、シ、ラ、ファ」


 暗い雰囲気を持った夜想曲がピアノ、バイオリンなどの多種の楽器が頭に響いた。

 もしかしてそのうち発動後の曲に歌詞つけて歌えとか言われるのではないかと目を細めたがそれは後になってから考えようと思考を明後日の方に投げ捨てた。

 スキルが発動するなりその場にいた全員が石化し、石化と同時にプレイヤーは全員転移してしまった。密室に残されたのはアリスただ一人となり、さっきまで人で埋め尽くされていた部屋も一人いなると殺風景なただの白い部屋にしか見えなかった。

 さて、どうしたらいいものかと宙に浮かぶマイクと一緒に苦笑いを浮かべた。


 あとで聞いた話だがアリスの規格外のチートっぷりに予定していた二時間はかかると思われた一次予選も三十分で終了し、チート容疑がかけられていたのは言うまでもない。


 これからどうしようか。

 とりあえずスキルレベルあげてるか。


 そう思うなりアリスはスキル欄にある歌スキルを片っ端から歌うのであった。




 * * *




「―――ッ!?」


 視線を遮るために近場にあった石像に体を重ねる。ラファは失念した。そりゃ水面下の潰しあいになるならお互い秘密を知ってるもの同士での潰しあいになるの目に見えてのことだった。歌スキルの発動条件を知らない者は知らない者として最後にでも潰せばいいのだ。それだったらあとで潰しあいになる戦いを先にするのは定石の定石だ。

 一旦相手との距離を取ってから気づかれないように後ろに回るしかない。

 これが範囲攻撃でなくてよかったと本当に思う。範囲攻撃だった場合はこういった視線遮断とかも無視して気づけずに確立頼りになってしまうだろう。むしろそれこそチートだと思ってもいいだろう。

 しかし、逃げるとなると他の気づいた者にもラファが気づいている者と知られてしまう。ここはある程度一般人を装って尚且つ急がずに逃げないといけない。言葉として破綻してる気もするがそれを実行しないといけない。

 とりあえず外装を勢いよく逆サイドに投げる。燕尾の青白チェックの外装は装備ロックしてるので数十秒経ったら自分の装備として手元に戻るのでそこは問題ではなく上手く外装をラファと誤認してくれることである。少ししてから逆サイドに走る。これっばっかりは運だ。なんとかして相手の裏を取ればそこで相手のチェックをメイトできる。

 ある程度の距離を離したところでラファは歩みを緩め、メニュー画面を見ながらスキル選択に悩んでいるのを装う。チラリと横を見るとキョロキョロと誰かを探してるプレイヤーを発見する。

 ニヤリと口元を吊り上げる。どうやら外装を誤認してくれたようだ。ちょうど帰還時間が経過したようで光とともにブレザーがラファの外装として戻ってきたところだ。

 さてと、と口を開けて呪文に近い音を発する。

 気づいたときには遅いだろう。だってすでに石化が進行してるんだから。


「ごめんね。でも恨むならアタシに当たってしまった自分の不運に恨んでね」


 ニンマりと視線を下に戻してその場を後にした。



 あれ?一次予選終われない。だと?

 自分的に最後のところ相手視線でもいいかもしれないと思ったのですが時間がなかったのでこんな形になってしまいました。

 相手視線のがいいと思う方いらっしゃいましたら書き直しますのでコメントの方までできましたらお願いします。


 それではご意見ご感想お待ちしております。


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