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もし信長が生きていたら ― 本能寺から始まるもう一つの天下 ―  作者: マーたん


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世界会議

戦国の武将である織田信長が、もし世界中の王たちと同じ席に座ったなら。


その場で語るのは武力でしょうか。


それとも平和でしょうか。


国が違えば文化も違います。


言葉も違います。


考え方も違います。


しかし、人々が願うものは昔も今も変わりません。


安心して暮らせる毎日。


家族の笑顔。


子どもたちの未来。


この章では、一人の武将ではなく、一人の人間としての信長が描かれます。


剣ではなく言葉で未来を切り開こうとする姿を、ぜひ最後まで見届けてください。

第九十五章


世界会議 ― 信長、王たちの前に立つ


朝日が王都全体を黄金色に照らしていた。


王城では朝早くから慌ただしく人々が行き交っている。


衛兵たちは城門を固め、使用人たちは広間の準備に追われていた。


信長は庭園を歩きながら、その様子を静かに見つめる。


「今日は何かあるのか」


そこへ王レオンが歩み寄る。


「信長殿、おはようございます」


「今日は年に一度の世界会議です」


信長は少し驚いた。


「世界会議」


「それは何だ」


レオンはゆっくり説明する。


「この大陸には大小さまざまな国があります」


「その王や代表者が一堂に会し、争いを減らし、交易や平和について話し合う会議です」


信長は静かにうなずく。


「戦だけでは国は豊かにならぬ」


「話し合いの場があるのは素晴らしいことだ」


レオンは少し困ったように笑う。


「ですが現実は簡単ではありません」


「国同士の対立も多く、毎年激しい口論になります」


「今年は海賊問題や帝国の勢力拡大もあり、さらに荒れるでしょう」


信長は空を見上げる。


「それでも話し合うことをやめてはならぬ」


「剣を抜く前に言葉を交わす」


「それができる者こそ真の王だ」


やがて大広間の扉が開かれる。


赤いじゅうたんが奥まで続き、左右には各国の旗が並ぶ。


東の砂漠王国。


北の雪国。


西の海洋国家。


南の森林王国。


さらに山岳国家や島国など、さまざまな国の王や使節が集まっていた。


色鮮やかな衣装に身を包み、それぞれが威厳を漂わせている。


しかし、信長の姿を見るなり広間がざわついた。


「誰だ、あの男は」


「見慣れない衣装だ」


「あれが東の島国から来た武将か」


「ただの剣士ではないのか」


レオン王は玉座の前へ進み、力強く宣言した。


「皆様、本日は特別な客人を紹介します」


「遠い東の国、日本から来た武将」


「織田信長殿です」


再び会場がざわめく。


ある王は腕を組み、疑いの目を向ける。


「武将が会議に何の用だ」


別の王は笑う。


「戦しか知らぬ男ではないのか」


信長はゆっくりと一歩前へ出た。


静かに全員を見渡す。


その視線には恐れも迷いもない。


「初めまして」


「私は織田信長」


「遠き東の国より参った」


「今日は剣を持って来たのではない」


「言葉を持って来た」


その一言で広間は静まり返る。


信長は続ける。


「私は多くの戦を経験した」


「勝った戦もある」


「負けた戦もある」


「仲間を失い」


「敵を討ち」


「数え切れぬ涙を見てきた」


「だからこそ思う」


「戦に勝つことより」


「戦を始めないことの方が、はるかに難しく、そして価値がある」


一人の老王が立ち上がる。


「では、国を守るためにはどうする」


「敵が攻めてきても話し合えと言うのか」


信長はうなずいた。


「守るために戦うことはある」


「だが、戦うことだけが答えではない」


「互いを知り」


「互いを信じ」


「互いに利益を分け合えば」


「剣を抜く理由は少しずつ減っていく」


今度は若い女王が口を開く。


「理想論です」


「現実はそんなに甘くありません」


信長は微笑む。


「理想を語らなくなった時」


「人は未来を失う」


その言葉に広間は再び静まり返った。


誰も反論できない。


レオン王は静かに拍手を始める。


やがて一人、また一人と拍手が広がっていく。


大広間は大きな拍手に包まれた。


その時だった。


城の外から警鐘が鳴り響く。


カーン


カーン


カーン


衛兵が息を切らしながら飛び込んでくる。


「大変です」


「帝国軍が国境を越えました」


「数は五万」


「この国へ向かっています」


一瞬で会議の空気が凍りつく。


王たちは顔を見合わせる。


誰も言葉を発しない。


信長はゆっくりと立ち上がる。


「世界会議の本当の意味が試される時が来た」


「ここで互いに疑えば、この国は滅ぶ」


「だが」


「ここで手を取り合えば」


「歴史は変えられる」


世界中の王たちは、その言葉を胸に静かに立ち上がった。


世界を守るための戦いが、いま始まろうとしていた。

歴史は、一人の英雄だけでは動きません。


多くの人が考え、語り合い、ときには意見をぶつけ合いながら、新しい時代は築かれていきます。


信長が世界会議で語った言葉は、すぐに世界を変えるものではないかもしれません。


ですが、一つの言葉が誰かの心を動かし、その誰かがまた別の誰かを動かしていく。


そうして歴史は少しずつ前へ進んでいきます。


しかし、平和を願う者がいる一方で、それを壊そうとする者も現れます。


世界会議の終わりとともに、新たな戦いの幕が上がろうとしています。


信長は世界を守るために剣を抜くのか。


それとも、新たな道を切り開くのか。


物語はここから、さらに壮大な世界へと進んでいきます。


どうぞ次の章も、お楽しみください。

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