山崎の終焉
光秀の一言
「人は我を逆臣と呼ぶだろう。
されど、この決断にも信じた正義があった。
信長公――。
この戦いの果てに、真に天下を治める者が誰なのか。
今こそ、その答えを見届けよう。」
第七章 山崎の終焉
山崎の戦場は、なおも激しい戦火に包まれていた。
織田軍と明智軍は入り乱れ、槍と刀が激しくぶつかり合う。
戦場の中央では、織田信長が堂々と馬を進めていた。
「余は生きている!」
その一声は雷鳴のように響き渡る。
「天下は、まだ終わってはおらぬ!」
兵たちは歓声を上げた。
「上様!」
「信長様だ!」
その声に呼応するように、織田方の兵は勢いを取り戻し、一斉に明智軍へ襲いかかった。
一方、明智軍では動揺が広がっていた。
「信長が生きている……。」
「我らは何のために戦っているのだ。」
兵たちの士気は急速に低下していく。
光秀は馬上から必死に叫んだ。
「怯むな!」
「まだ勝負は終わっていない!」
しかし、その声は兵たちの心には届かなかった。
次々と兵が武器を捨て、戦場から離脱していく。
その様子を見た秀吉は軍配を振るった。
「今だ!」
「総攻撃!」
法螺貝が鳴り響き、織田・羽柴連合軍は一気に攻勢へ転じた。
明智軍の陣は崩れ始める。
光秀は最後まで刀を握り、退却する兵たちを見送った。
「これまでか……。」
信長は静かに馬を進める。
「十兵衛。」
光秀は振り返る。
「信長。」
「私は、お前に敗れた。」
信長は首を横に振った。
「違う。」
「おぬしが敗れたのは、己の迷いだ。」
光秀は苦笑した。
「最後まで、お前らしい言葉だ。」
そう言い残すと、光秀は残る家臣たちとともに戦場を後にした。
信長は追撃を命じなかった。
戦は終わった。
夕日が山崎を赤く染める。
秀吉は信長の前にひざまずいた。
「上様、ご無事で何よりにございます。」
信長は秀吉を見つめる。
「猿。」
「よく戻った。」
秀吉は深く頭を下げた。
「すべては上様のために。」
その頃、徳川家康も山崎へ到着していた。
「信長殿。」
家康は静かに一礼する。
信長は笑みを浮かべた。
「三河殿。」
「また共に天下を目指そうではないか。」
夕日に照らされた三人の姿は、新たな時代の幕開けを告げていた。
本能寺で終わるはずだった織田信長の物語は、今、新たな天下統一への道として再び歩み始めるのであった。
秀吉の一言
「上様がお戻りになられた。
この秀吉、生涯変わらず織田家のために尽くしまする。
乱世を終わらせるその日まで、猿は最後まで走り続けましょうぞ。」
――次章へ続く。




