吹雪く風
吹き付ける風は凍える寒さ、頬は赤く染まり、まつ毛に霜が降りるときも、少年は村特有の装飾を施した弓を引いた構えのまま微動だにしなかった。
目線の先には狩りをし終えたキツネが周囲を警戒しており、少年はキツネが油断して食事を始める瞬間を待っていた。
待って待って、獲物が安心して狩ったものを食べ始めた瞬間、風切り音が鳴り、キツネは眉間を貫かれて倒れた。
「このサイズだとあと2、3匹は欲しい所だな。」
少年はそう言ってキツネを倒したところまで近づき、その場で血抜きをして、狩りが長丁場になった場合でも鮮度が落ちないように内臓を取り出した。
内臓は罠に使う為に瓶に詰めて、一応血の匂いに釣られてくる獣の為に大きめの罠を仕掛けてその場は去り、次の獲物を探す為に少年は雪の山へと歩んで行った。
少年が家に着いた頃には辺りは暗くなっており、長い間凍てつく山に居たせいか思っていた以上に身体が強張っていた為、急いで火起こしをした。
少年の手つきは慣れたもので、ものの1分で炎は立ち上がった。
身体が温まり、筋肉の緊張もほぐれた頃に扉を叩く音が聞こえた。
「アガスはいるか!」
少年、アガスが扉を開けるとそこには見知った顔があった。
「バーゼル、何もこんなに吹雪いている日まで来なくてもいいんだぞ」
バーゼルは寒さで鼻を赤くさせながら屈託のない笑みで返した。
「いいじゃねぇか!俺がお前と飯食いたかったんだよ」
アガスは呆れた態度をとりつつも、嬉しそうな顔をしながらバーゼルを家に招き入れた。