In fact Impact
突然かかってきた愛からの助けを求める声。
おれ秋原光志は急いで愛の所へ駆け付けた。
だがそこで待っていたのは完全におれの記憶と誤差を生じた事実だった。
ジャラジャラジャラジャラ…
『ありがとうございました〜!!』
パチンコ屋から冬の寒空の下、肩を落としながら一人の男が表れた。
今日の気温は例年以下。
とても寒い。
男の財布の中も寒い。
財布の中身は見事に数百円。
免許証の名前は
『河内 光志』
つまり…
おれのことだ。
あの不可解な事件以来どうもスッキリしない。
ツキも落ちているみたいでスロットに勝てない。
あいつのせいだ。
あの電話のあった夜。
未だによく理解と整理が出来ていない。
「あれは何だったんだ?」
―3日前―
308号室の前。
おれは乱れた呼吸を整えるため一度深呼吸。
ピンぽーん。
インターホンを押した。
扉が開くまで何を考えていただろう?
かなり長く感じたのか、すぐだったのか?
それすらもわからない。
今更ながら、頭は完全に混乱していた。
つい半刻前にかかってきた一本の電話。
泣き声、嗚咽、過呼吸。
普通の生活をしてるかぎり、彼女でもない成人した女性のそれらなど、滅多に聞けないものである。
と言うか聞きたくない。
先刻、深呼吸をした意味がまるでない。
焦燥と混乱で落ち着いていられずに、もう一度インターホンを押そうとした。
その瞬間。
ガチャ。
その時、おれは深夜ということも忘れ、近所迷惑という言葉を置き去りにして、叫んだ。
「大丈夫か!?」
その発声とほぼ同時に少し開いた扉を思い切り開いた。
開ききった扉の先に女がいた。
えらく顔の整った色白の女だ。
『八尾 愛』
さっきまで瀕死と思われる状態でおれに電話をかけていた。
間違いなく泣きながら、鬱々とし、助けを求めてきていた。
はずだった。
しかし…
「こんな時間に何か用?」
大きな目でこちらを睨み付けている。
タンクトップにジャージ、すっぴん。
おまけにくわえ煙草。
風呂上がりなのか左腕にはタオルが巻かれている。
「愛…大丈夫か?」
「何の話?とりあえず中入りなよ?ホントいきなりだからびっくりするじゃん。」
「何だよこれ…。」
びっくりするのはこっちの方だ。
一体全体どういうわけなんだ?
何か用だと?
しかも、瀕死の状態どころか泣いてすらなさそうな調子じゃねぇか。
…はめられた。
間違いなくからかわれた。
おれは確信した。
そして怒りが沸き上がり、富士山なんて生温い。
キリマンジャロやエベレスト以上の高さまで怒りが達する。
しかし、今は扉が開いた瞬間とは違いある程度の平常心を保っている。
ここで怒鳴っては近所迷惑だ。
とりあえずおれは部屋に入った。
2DKのその部屋には必要最低限な物しかなく、一人暮らしの女にしては飾り気がまるでない。
あと一人暮らしにしては広すぎる…。
「そこに適当に座ってよ。」
おれは愛の言葉に促されテーブルの椅子に腰掛けた。
愛はおれの向かい側に座った。
早速おれは怒りをぶつけることにした。
「お前質の悪い冗談はやめろよな。本気で心配したんだぞ?」
怒鳴ってはいないがかなり怒り口調だ。
だが、またしても理解し得ない返事が返ってくる。
「はぁ?だから何の話よ?」
「お前が泣き声で電話かけてくるから必死になって来たんじゃないかよ!」
「そっちこそ冗談言わないでよ!あたし光志に電話なんかかけてないし。」
おれの中の時間が一瞬出遅れた。
「待て待て。何だって?」
「あたしは光志に電話なんかしてません。」
かなり語調を強めている。
「いやいや、実際かかってんだよ。ほら着歴見ろよ。」
そう言いながらおれは携帯を見せた。
「あれぇ?ホントだ?間違ってかけたのかな?」
違和感満載。
おれの中の事実と目の前の事実が一致しない不快感。
おれは思ったことをそのまま口に出してみた。
「間違ってかけたにしても、おれはお前と話したんだぜ?しかもただの会話じゃなくお前泣いて助け求めてたじゃん?」
愛はずれかかった左腕のタオルを巻き直しながら淡々と答えた。
「勘違いじゃない?」
「そんなわけないだろ!?有り得ねぇよ!だからこそこうして今ここにいるんじゃねぇか!」
少し声を荒げてしまった。
愛はその声に驚いた表情を見せつつ、それでも事実を認めない。
「怒ったならごめんね。でもホントに知らないもん。私寝呆けてたのかな?」
ごめんと言われても…。
寝呆けてどうこうの問題ではなかったぞ。
しばしどういうことか考えていると愛が一言。
「光志には悪いんだけど明日も仕事だし、私もぉ寝ていい?せっかく急いで来てくれたし泊まる?」
確かに時間も時間だ。
大学にろくに出席しないおれと違い、愛は毎夜、サラリーマン達の癒しのために働いている。
どういうことかは分からないが仕方がないだろう。
「折角誘ってくれて悪いけど帰るわ。お前大丈夫そぉだし。」
「そっか…。」
愛の返事を聞くとおれは玄関に向かっていった。
靴を履き、扉を開け、振り向きざまにおれは言った。
その言葉は社交辞令に近かった。
「まぁ大丈夫だとは思うけど何かあったらまた電話してこいよ。」
「ありがとう。」
おれは部屋を出てマンションを後にした。
まるで納得はしていない。
あいつは全く電話の事実を認めなかった、無論、おれの勘違いは絶対にない。
愛の言うとおり寝呆けていたのか?
そんなに寝呆ける奴がいるのか?
おれは様々な推測をしながら家に帰った。
何かの間違いだった?
気のせいだった?
どうであろうと何事もなかったこともまた、事実だ。
これで終わり。
そう思いたかった。
この3日後、おれがさらなる謎に出会うなんて誰が考えれただろう………。
―3日前―
308号室の前。
おれは乱れた呼吸を整えるため一度深呼吸。
ピンぽーん。
インターホンを押した。
扉が開くまで何を考えていただろう?
かなり長く感じたのか、すぐだったのか?
それすらもわからない。
今更ながら、頭は完全に混乱している。
つい半刻前にかかってきた一本の電話。
泣き声、嗚咽、過呼吸。
普通の生活をしてるかぎり、彼女でもない成人した女性のそれらなど、滅多に聞けないものである。
と言うか聞きたくない。
先刻、深呼吸をした意味がまるでない。
焦燥と混乱で落ち着いていられずに、もう一度インターホンを押そうとした。
その瞬間。
ガチャ。
その時、おれは深夜ということも忘れ、近所迷惑という言葉を置き去りにして、叫んだ。
「大丈夫か!?」
その発声とほぼ同時に少し開いた扉を思い切り開いた。
開ききった扉の先に女がいた。
えらく顔の整った色白の女だ。
『八尾 愛』
さっきまで瀕死と思われる状態でおれに電話をかけていた。
間違いなく泣きながら、鬱々とし、助けを求めてきていた。
はずだった。
しかし…
「こんな時間に何か用?」
大きな目でこちらを睨み付けている。
タンクトップにジャージ、すっぴん。
おまけにくわえ煙草。
風呂上がりなのか左腕にはタオルが巻かれている。
「愛…大丈夫か?」
「何の話?とりあえず寒いし中入る?ホントいきなりだからびっくりするじゃん。」
「何だよこれ…。」
びっくりするのはこっちの方だ。
一体全体どういうわけなんだ?
何か用だと?
しかも、瀕死の状態どころか泣いてすらなさそうな調子じゃねぇか。
…はめられた。
間違いなくからかわれた。
そして怒りが沸き上がり、富士山なんて生温い。
キリマンジャロやエベレスト以上の高さまで怒りが達する。
しかし、今はある程度の平常心を保っている。
ここで怒鳴っては近所迷惑だ。
とりあえずおれは部屋に入った。
2DKのその部屋には必要最低限な物しかなく、一人暮らしの女にしては飾り気がまるでない。
あと一人暮らしにしては広すぎる…。
「その辺に適当に座ってよ。」
おれは愛の言葉に促され席に着く。
愛はおれの向かい側に座った。
早速おれは怒りをぶつけることにした。
「お前質の悪い冗談はやめろよな。本気で心配したんだぞ?」
怒鳴ってはいないがかなり怒り口調だ。
だが、またしても理解し得ない返事が返ってくる。
「はぁ?だから何の話よ?」
「お前が泣き声で電話かけてくるから必死になって来たんじゃないかよ!」
「そっちこそ冗談言わないでよ!あたし光志に電話なんかかけてないし。」
おれの中の時間が一瞬出遅れた。
「待て待て。何だって?」
「あたしは光志に電話なんかしてません。」
愛もどうやら本当にかけていないと思っている様子だ。
「実際かかってんだよ。ほら着歴見ろよ。」
そぉ言いながらおれは携帯を見せた。
「あれぇ?ホントだ?間違ってかけたのかな?」
知らを切っている…
わけではなそうだが…
おれは思ったことをそのまま口に出してみた。
「でも、実際に電話がかかってきてるしさ。しかもおれはお前と話したんだぜ?」
ずれかかった左腕のタオルを巻き直しながら淡々と答えた。
「勘違いじゃない?」
「そんなわけないだろ?寝呆けてるのか!?」
少し声を荒げてしまった。
愛はその声に驚きつつ、それでもはっとして、
「そうかもしんない。あたし一時間くらい記憶ないし寝呆けてたかも。ごめんね。」
ごめんと言われても…。
寝呆けてどうこうの問題ではなかったぞ。
しばしどういうことか考えていると愛が一言。
「明日も仕事だし、あたしもぉ寝るね。せっかく来たし泊まる?」
「いや、帰るわ。お前大丈夫そぉだし。」
「そっか…。」
返事を聞くとおれは玄関に向かっていった。
靴を履き、扉を開け、振り向きざまにおれは言った。
その言葉は社交辞令に近かった。
「まぁ大丈夫だとは思うけど何かあったらまた電話してこいよ。」
「ありがとう。」
おれは部屋を出てマンションを後にした。
まるで納得はしていない。
しかし、あいつが嘘をついているようにも思えなかったし無論、おれの勘違いは絶対にない。
愛の言うとおり寝呆けていたのか?
そんなに寝呆ける奴がいるのか?
おれは様々な推測をしながら家に帰った。
何かの間違いだった。
気のせいだった。
これで終わり。
そう思いたかった。
この3日後、おれがさらなる謎に出会うなんて誰が考えれただろう………。




