いつか観覧車〜私も二人で〜
クリスマス当日、女子高生がショッピングモールに来てる。連れは兄。ある計画のために。
彼をショップに連れ込む。目当てのコートを手に取り、姿見でチェックする。
「似合う?」
「あっ」
「可愛い?」
「キモっ」
「お兄様、こちらを購入致します」
「んっ?」
上目遣いの彼女に彼は察した。
「金ねぇぞ」
「おバイトなさってるわ」
「そのキャラなんだよ。ねぇぞ」
「お兄様のお財布には御壱萬圓紙幣が」
「見たのか?」
「えっ?」
「いくらだよ? それ」
「御弐萬圓ですわ」
「高っ! ねぇぞ」
「御貧乏なお兄様に全額お出ししてとは言いませんわ。御肆千圓ほど融通して頂けないかと」
「てか残りどうすんだよ」
「朝、スイス銀行から引き出してきましたの。なかなかの強敵でしたわ」
「母ちゃんから前借りしたのかよ」
「あっ! バレた」
「仕方ねえな。ほらっ」
「メルスィ」
分捕り彼女はカウンターで購入する。そしてレシートの裏面に印を押され、ある物を貰う。彼を目的地まで連れて行く。
「観覧車乗りてぇのか?」
「どうかな〜」
彼女は辺りを見回す。すると、前方から女子が二人来る。その一人に目配せした。
「あっ、先輩」
「偶然〜。何してんの?」
「兄と買い物です」
「廻じゃん」
「おっ、恵……揺と一緒なんだ」
「本当ごめん、揺」
「もういいよ、恵」
「どした?」
「観覧車のチケット落としてさ」
「そっかぁ〜」
「先輩。私、服買ったら偶然チケット二枚貰ったんです。良かったらどうぞ」
「いいの?」
「もちろん」
「でも、ウチ気分悪くてさ。揺、乗ってきなよ」
「でも」
「先輩、私も体調が。兄ちゃん、乗ったら?」
「えっ!」
彼女は兄に目配せする。断るなと。
「揺、行きなよ。あんなに乗りたがってたじゃん」
「そうだけど。廻君が……」
「兄ちゃん! 観覧車、大好物じゃん」
「……おっ。揺が嫌じゃなければ」
「全然嫌じゃないよ」
「じゃあ、行こうか」
「うん」
初々しい二人は一緒に歩き出す。残った二人は見守る。
「ちゃんと金出させた? 廻の金じゃないと意味ないし」
「四千円です」
「えっ! 二千円もボッタの?」
「マッチング料金ですよ〜」
「プラチケだしな。あ〜、ウチらクリスマスに何やってんだ?」
「先輩が両想いだから引っ付けよって」
「だったね〜、一華」
「いいなぁ〜観覧車」
「ウチが買った二枚余ってっけど。乗る?」
「そういう事じゃないです、見守先輩」
「だよねぇ〜」
「一華は好きな人と乗れるかな?」
「ウチも、いつか乗りてぇ」
二人は観覧車を見上げる。