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20世紀少女

作者: こがね

「次は~終点~ふるさと~ふるさと~」

 間の抜けた車掌の声で目が覚めた。

 どうやらいつの間にか眠っていたらしい。

 何気なく窓の外に目を向けると、切り分けられたスイカの様な半月が輝いていた。


 「お腹がすいたな……」

 車内販売にスイカは無いかなと思いつつ、何を食べようかと考えを巡らせた。

 子供の頃は一日中星を眺めて親に怒られるくらい天体観測が好きだったのに、いつの間にか興味を失ってしまった。

 今の私は花より団子だ。

 次に車内販売が来たら何でもいいから買ってしまおう。


 車内販売を待っていると後ろの座席の女の子の声が私の耳に入った。

 「私も20世紀のうちにふるさとへ行きたかったんだよね~」

 姿は見えないが話の内容から察すると自分と同年代だろう。

 どうやら私と同じくふるさとに行く目的のようだ。

 もっとも終点までのこの列車に乗っている時点で他の人も同じ目的だと思うけれど。

 何人くらい私と同じ場所に行くのか気になり、周りを見渡してみると若い女性や男性が多いように見受けられた。それもグループが多い。

 

 「私も本当は二人で来る予定だったんだけどな……」

 親友のスミレに「一緒にふるさとへ行こう」と誘ったけれど断られてしまったのを思い出した。

 常に一緒にいて、意見を違えたことなんて無かったから断られるなんて思ってなかった。

 でも今ならスミレの気持ちも少しわかるかもしれない。

 そんな事を考えていると後ろの座席で楽しそうに話している女の子が羨ましくなってしまった。

 

 別の事を考えようと思い、ポケットの中のパンフレットを取り出した。

 ふるさとの事が書かれているパンフレットだ。

 ふるさとには自然の山や自然の海が沢山あり、魚や動物も沢山いるらしい。

 スキューバダイビングをしようか、バーベキューするのもいいな。

 思いつく限りの色んな贅沢をしてしまおう。


 他にふるさとで何をしようか色々と考えていたら、ようやく車内販売が来た。

 さて、何を食べよう。もうすぐ終点に着くからあまり時間はない。

 ハンバーガーにしようかな。でも嫌いなタマネギが入っていたらイヤだ。

 桃のスイーツも気になるけど、なんとなく縁起が悪い気もする。

 あれこれ悩んで、何気なく窓の外に目を向けると映像で何度も観た光景が広がっていた。

 ふるさとだ。

 「……やっぱりスイカにしようかな」

 このスイカは食べずにふるさとへ持っていって、スイカ割りをしよう。

 なんだか楽しくなってきた。

 

 

 「また会おうねスミレ」

 最期にそう呟くと彼女は再び長い眠りについた。

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