不法侵入
アイクス王国王都オルトナ、別名水の都市オルトナとはここか。
ここまでやってくる途中、この都市について色々と情報を集めてきてわかったのは王都にはそう簡単には立ち入ることが出来ないということだ。
「ここを通らせてもらえるか?」
王都の入り口にそびえ立つこの大きな門。ガッペル凱旋門というらしい。
門の前に立つ二人の兵士と思われし男は俺のほうを見てクスクスと笑みを浮かべている。
ここは治安が悪いらしい、いな俺の姿形が醜いのかもしれない。
だが俺はそれを認めない。
「そうはいかないねぇ兄ちゃん。ここは王都なんだ。君みたいな薄汚れた者は中に入れることのできない決まりなんだよぉ。ごめんねぇ。さっさとおうちに帰りな」
「どうしてもか?」
「どうしてもだ」
「そうか分かった」
次の瞬間、男の首は吹っ飛んだ。
「これでも俺は通してもらえないのか?」
「い、いえ。どうぞどうぞ。通行手形でございます」
「ありがたくいただく…あとこいつの血液ももらっていくぞ」
「あ、はい」
男は俺に手を擦り合わせながらの苦笑いを浮かべている。
そんなに驚くことか。まぁいい。
通行手形にはこの国のマーク、水が砂時計の中で上と下を交互に移動する様子が表されている。
行く場所は聖隷堂一つ。そこで勇者召喚のことについて何か知識をつける。
勇者召喚という聞き覚えのある言葉、俺の正体を探るには最適だ。
とりあえず食糧調達だ。金はすでにあつめてある。
この金貨10枚もこの国では貴重というのだから相当な価値があるものであろう。
多くの食糧を得ることのできるはずだ。
チョウ商店
「この店にコメはあるか?」
「コメはございませんね。大変人気なものでしてなかなか手に入れることが難しいのですよ」
「そうなのか。それは残念だ」
「ならこの金貨一枚でこの店にあるものを出来るだけ全種類くれ」
「金貨一枚ですと、このようなラインナップになりますね」
不自然なものが中に混ざっているな。
いかにも身体に悪そうだ。
「おいこれはなんだ?」
「それは…今です」
「おっと。槍?なるほどな」
「ちっ、逃したね。あんたを殺したらこの国から大きな報酬がもらえたというのに」
もう俺が不法侵入したことが国家にばれたのか。厄介だな。相当な手練れがいたら余計厄介だ。
「俺はそう簡単に殺せないよ。自殺しようとしてもできなかったからね。見えない光と闇の手で無理やり抑え込められたんだ」
「もういい。早く私を殺しな。王宮兵士をワンパンなあんたじゃ私はごみ以下だろ」
「そう自分を卑下しなすんな。あんたにも助かる道はある」
「本当かい?」
「俺はうそをつかない」
「なら」
「今すぐここから逃げ出すことだよ」
「わかったわ。あんた以外に悪い奴じゃないのね」
「その代わりこの店、もらえるだけもらっていくよ」
「好きにしな。私はどうせここにいたら駆けつけた兵士に殺されるだけだしね」
「なら今死んでも何も問題なくない?」
「えっ」
人の生首は美しい。