表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

君"生き"たまふことなかれ

初めまして、日野萬田リンと申します。小説家になろう様の公式企画「秋の歴史2022」の参加作品です。ショートショートな作品なので気軽に読んでいただけたらと思います。


 私の弟が戦争に行くことになった。どうやら、厳しい戦いに身を投じることになったらしく、生きて帰ることができるかは分からないそうだ。

 

 戦争へ行き、お国のために死ぬことは名誉なこととされている。私もそういう風に教育されてきた。


 そんな折、一冊の雑誌に投稿された前代未聞の詩のことを知った。与謝野晶子による『君死にたまふことなかれ』。日露戦争に従軍した弟のことを想って詠んだ詩。この詩は明らかに反戦を詠んでいる。世間はやはりこの詩に対して、批判的な感想が多かったそうだ。

 

 だけど、実の弟が戦争に行くことになった今、この詩を詠んだその人の気持ちが非常によく分かる。

 

 私は弟へ手紙を認める。会いに行くことができないため、ほんの少しでも私の気持ちを伝えたい。しかし、手紙は検閲されてしまう可能性がある。今の気持ち(・・・・・)をそのまま書き綴ったら、間違いなく私の最後の手紙は弟の元へ届かないだろう。

 

 だから、私はたった一言だけ紙につづる。

 

 「君生きたまふことなかれ。」

 

 涙でくしゃくしゃ(・・・・・・・・)になった便箋(・・・・・・)を封筒に入れて、私はこの手紙を弟に送った。


読んでいただきありがとうございます。評価・感想など全部お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 秋の公式企画から拝読させていただきました。 批判を受けたにしても与謝野晶子さんがあのような作品を発表出来たということはまだ日露戦争の頃の日本は余裕があったのかもしれません。 ただ、太平洋戦…
[良い点] たとえ相手が家族であっても本音を伝える事が許されない時代というのは、何とも悲しいです。 主人公の真意が弟さんに届くと良いですね。 [一言] 始めまして、大浜 英彰と申します。 秋の歴史20…
[良い点] 読ませて頂きました。 切ないです。本当の気持ちを書けないなんて。 ヒロインは例え生き残れたとしても被害者なんですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ