【colorful world】
三題噺もどき―ろくじゅう。
お題:彩り・モノクロ・筆
《ヨウコソ【colorful world】ヘ》
いつも通りの機械音声が頭に響く。
目を開けると、そこに広がるのはモノクロの街。
白と黒。
たった二色で彩られた世界。
―ここは【colorful world】というゲームの世界。
実体がここにある訳ではなく、意識のみがここに転送されている。
身体自体は眠っているような状態というか、なんというか…まぁとにかくここがゲームの世界というのだけ分かっていればいいかもしれない。
【colorful world】は、モノクロになってしまった世界にプレーヤーが〈彩〉を加えていくという単純な色塗りゲームである。
指定された建物や場所に、指定された色を加えていく。
立体的な建物も多く存在しているので、単純なようで案外動きがある。
いつも通りに、装備(と言っても筆ぐらいだが)の確認と、色の補充をしていく。
「よし。カンペキー!」
自分の背丈より少し大きめの筆を持ち、パレットを引き出す。
目の前に現れた“game start”のアイコンを筆で勢いよく叩く―
《Ready―Go!》
頭に響く、その合図と共に、大きく踏み込んで、空へと跳ねる―!
《前方建物・赤―》
パレットの赤を選び、大きく筆を振り下ろす。
《後方―》
次の指示が飛んできた瞬間―
ブォン―!!
真横を真っ白な筆が横切る。
「―っぶな!!!」
そう。こいつらを忘れてはいけない。
ウサギの頭を持ち、執事のような服に身を包んだソイツは、“モノクローム”と、呼ばれている。
〈彩〉を加えていく邪魔をし、プレーヤーをモノクロに変えようとしてくるのだ。
“モノクローム”は、それの持つ目の色と同じ色で染めてしまえば倒すことが出来る。
その時は運良く、赤だったので、そのまま振り向きざまに、筆を横に薙ぎ払う。
続いて、青のパレットを選び、後方にあった建物を染める。
難易度があがると、色を混ぜていく必要があったりするのだが、プレーヤーのレベルが高ければ、その混ぜた色を保存していくことが出来るようになる。
それなりに【colorful world】をプレイしている今は、色の種類はそれなりにある。
初めての頃はそれなりに苦労したが、今では楽々クリアである。
その後も、建物を塗り地面を塗り、モノクロームを塗り―
《―上・空色》
最後に空の色を加えて、ゲーム終了。
ゲームクリアの文字が、大きく掲げられている。
〈彩〉を加えたその世界は、名前通りのcolorful worldだった。