急なお願い事
〜3ヶ月前〜
その日、仕事帰りに浩樹は友人の孝之に呼ばれた都内の隠れ家レストランに向かっていた。
孝之は浩樹の大学時代の友人だ。先日、結婚した。当時、彼は大学の学園祭の実行委員、その学祭の紹介ムービーを映像サークルに所属していた浩樹が担当した時に知り合った。話してみると同じ授業も多く、映画鑑賞という共通の趣味もあり、仲良くなるのに時間はかからなかった。
そんな大学時代の友人とも今では、年に数回しか会うことはない。特に仲が悪くなったというわけではない。単に皆、それぞれの人生に忙しいのだ。だけれどもそれでいいと浩樹は思う。だからこそ、孝之の結婚は嬉しかったし、彼女も以前会ったことのある素敵な人だ。素直に祝福したい。
店に着くと店員に個室に通された。
「おう!浩樹、久しぶりだな!今日は急に悪いな。」
「ご無沙汰してます、雪です。急にすみません〜」
孝之の妻、雪も続いて挨拶をする。
「孝之、雪さん、全然大丈夫だよ。ちょうど飲みにでも行きたいなーって思ってたとこだし。というか改めて結婚おめでとう!」
「ありがとうございます!実はもう1人、今日は私の友人を呼んでいて、2人にお願いしたいことがあって、、」
「そうなの?何、お願いって?」
「それはもう1人が来てから詳細話しますね。」
「おう!それより久しぶりなんだし、浩樹近況教えてくれよ。不動産の仕事はどうだ?彼女は?」
頼み事の内容が気にはなりつつ、浩樹は孝之に聞かれるがまま、仕事の愚痴や先月、彼女に振られた話などを自虐混じりに話した。お酒も入り、頼み事が待ち受けていることなど忘れかけていた頃、個室の扉が空いた。
ガラガラッ。
「お待たせしてごめんなさい!仕事が長引いちゃって、、」
「ひろパン、、?」
浩樹は目を疑い目を擦った。なぜなら自分の前に現れたのが毎週テレビで見ている朝の情報番組“サタデー•ステーション”の女子アナウンサーだったからだ。
「はじめまして、ですよね?上西ひろなです。よろしくお願いします。」
「山下浩樹です。よ、宜しくお願いします。」
「てか雪〜、いきなり頼み事って何よ!とんでもない頼み事されそうで、なんか怖いんだけど笑」
「はいはい、ごめんごめん」
そういって雪はひろなを宥めた。
「じゃあ、ひろなも来てくれたことだし私から二人にお願い事の説明をさせてもらうね!二人ともご存知の通り、私達先日結婚しました。式の案内は送らせてもらってるよね?そこでなんだけど二人には披露宴の余興ムービーを作って貰いたいと思うんだけど、お願いできるかな??」