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【書籍化】野生の聖女は料理がしたい!  作者: 枝豆ずんだ
第五章 魔女達の舞踏会
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当然では?



「船!っていうか空を飛ぶので飛行船ですね!いやぁ、便利なものがあるもので!」

「小娘、余は寛大な王であるから咎めぬが……問いはする。あれらはどういうつもりだ?」


さて、出発の日。

私の花嫁道具一式の用意や、あれこれは神官さんたちがやってくださった。えぇ、一応私は知らないところだが、聖女候補生がこの度めでたくハットゥシャに嫁ぐのだ。聖王国からハットゥシャへと、これは国同士の婚姻になる。


聖女候補生にして、ザリウス家の養女である少女が嫁ぐ、と。


ご立派なたくさんの衣装やら、持参金の類いは国が責任を持って用意して、私はドナドナされていく。


はい、どうも、こんばんはからおはようございます。ごきげんよう。前世には縁の無かったマリッジブルーになれるのでしょうか、エルジュベート=ザリウスです。次はどんな名前になるんだろうな、と達観してます。


「小娘でなくて、私はエルザですよ。王様」

「そうか、余はラムスという名がある。あるが、気安く呼ぶことは赦されぬぞ、小娘」


ノリがいいのか悪いのか。扱いが難しそうな舅である。


ハットゥシャまでの旅路は巨大な飛行船……私が知るような、でっかいバルーンみたいなのがくっついてその下に船室があるものとは違う。

海で浮かんでいるような、ガレオン船、大きな帆に風の魔術式を編み込んで飛ぶそうだ。


王様は国に着くまで私を他の王子たちとは会わせない。なので自分の傍から離さなかった。王様用の立派な部屋に連れてこられたわけである。


あれら、と王様が言うのは私が嫁ぐにあたって、連れて行く人たちだろう。


「私はまだ幼い子供ですから、いきなり知らない土地に身内もいないと寂しくて夢遊病とかになってしまうかもしれないじゃないですか?でも母親であるサーシャ様は公爵様ですし、私にきょうだいはいませんね?そうなると、かわいい孫が落ち着くまで……おばあさまがついて来てくださるのは当然では?ついでにおばあさまの料理人もご同行頂きました。他国から嫁ぐ女が料理人を伴うのは文化交流として最良ですよ」


何一つ違和感などない正当性がある!と堂々と言ってのける。


腰元や必要な人間はあちらで用意すると王様は言ったが、家族は用意できまい。ファーティマさんと竜二郎シェフ、それに本当ならアゼルさんも一緒に来て欲しかったけれど……ミシュレが消えたからか、私が狼の眠りから目覚めたとき、私の騎士は姿を消していた。


サーシャ様に聞いたらいつのまにかいなくなっていたらしい。


「白亜の小僧がよく赦したな」

「ファーティマさんを軟禁し続けるより私に恩を売っておきたかったのかと」


そうか、と王様はそれ以上はもう興味がないようで、柔らかいクッションがたくさん敷いてある寝台に寝転がった。傍には着飾った女性たちがいて、すかさず王様の靴や装飾品を外したり、世話をする。


(ところで、私は王様に聞きたいんですけど。スレイマンと同じ感じがするのはどういうことですかね)


気安く話せそうで、たぶんさじ加減がある。

まだ距離感がつかめないので、私は問いかけを口には出さなかった。


……聖女科での授業で、聖女は次の魔王を産む役目があることは学んだ。


そこで私は疑問だったのだが、スレイマンの母親は砂の聖女エルジュベート様だけれど、父親は?


というか、魔王を産むって、どういうことだろうか。


魔王の器、肉体と魂は別だ。器に、魔王の魂を入れ込む。


あの雪山でスレイマンが魔女によって死体になったとき、ラザレフさんはその死体を引き取ると言った。


……ハットゥシャは、聖女候補生をひとり国に迎える。

その聖女候補生が次の魔王の器を妊娠していても、と王様は言った。


砂の聖女様の時代、エルジュベート様がサーシャ様のように聖女候補生第一位だったのだろうか?


もし、王様の話が、エルジュベート様の時代のことだとすると、もし、本来は別の方が聖女になるはずだったところを、ハットゥシャに嫁がれた……魔王の器を宿したまま。器に魔王の魂は宿らず、出産した?


私は王様が、スレイマンと「同じよう」に感じる。


王様は砂の聖女のこどもではないはずだから、そうなると、そうすると、考えられるのは……。


「小娘、貴様は料理を好むと言っていたな」

「え?あぁ、はい」


思考に沈み、何かたどり着きかけた私は王様に呼ばれ、考えを中断させた。

寝そべり、黄金の杯でなにやらお酒を飲まれている王様はとても偉そうだった。実際偉いんだが。


「我が国の神官が妙なことを申しておってな。鷹の星屑種の抱える聖女は、料理に神性を込められる。死人も生き返らせられると、そう申しておってな」

「死体は咀嚼できないので無理だと思います」


なんだそのデマはと私は即座に否定した。

王様も「で、あろうな」と頷く。けれど話は続いた。


「死人は無理でも、病人はどうだ」







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