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私の使い魔、凄すぎ……?

はい! 案の定ありました。


そう! アレ、こと、魔法!


とは言え、誰でも使えるわけじゃないらしい。

使い魔と契約できた者のみが、魔法をつかるようになるそうだ。

そして、使い魔はそこら中どこにでもいるものではない。

この世界には『使い魔の元』なる存在があり、それと運良く遭遇できた人間が何らかの形でコンタクトして契約を結ぶ、らしい。

大体の人間は使い魔を従属させて契約を成立させるのだが、ごく稀に契約に失敗する人間もいて、そういった人間は存在を消されてしまう、と、この前読んだ絵本には書いてあった。

失敗する人間は主に、強欲な人間である、といった感じのお話だったので、子供向けの教育のための設定のような気もしてしまうが、まあそれはいい。

大事なことは、だ。


今この目の前にいる何か、ふんわりとした光の塊みたいなこいつが、その使い魔の元なのではないか、ということだ。


ちょっとした街の郊外にある自宅は林が周りをコの字に囲んでいて、二歳を過ぎて行動範囲が広がった私は、この林の調査と体力作りも兼ねて、この辺りを走り回っていた。

最初の頃は心配ばかりして付きまとっていた両親も、最近は慣れたもので庭から目の届く範囲にいる分には放置している。

そこからちょっとだけ奥へ行ってみようと好奇心を出したところ、この謎の存在に出逢えたのだった。


「もしもし? あなたは、使い魔さんですか?」


…………。


「もしもーし?」


返事はない。


「ちょっと失礼しますね」


なので、おさわりさせて頂く。


タッチ。その瞬間――、


《貴方は私にご用ですか?》


――こいつ直接脳内に……!


《決まった姿を得る前の私たちは、言葉を発することは出来ませんから。実際に触れて波長を読み取って、ようやく対話が出来るのですよ》

「そうだったのですか。ところで、再び伺いますが、貴方は使い魔さんですか?」

《そうです。人間からはそう呼ばれている存在ですね。貴方は幼いのによくご存じですね》

「ええと、まあ、はい」

《貴方は私とどのような契約を望みますか?》

「契約……その前に、教えて貰っても良いですか? 他の人はどのような契約をするのでしょうか? やっぱり、主人と使い魔という関係となる契約でしょうか?」

《そうですね、殆どの人は私たちを魔法の力を引き出すための使い魔として従属させるという契約を選びます》

「それは、そうしないと魔法が使えないということですか?」

《いいえ。契約によって私たちとの間に見えない“繋がり”が構築されれば、誰でも魔法を使えるようになりますよ》

「そうなんですか。……あの、じゃあ、私とあなたがお友達になる、というのは可能ですか?」

《……そういった契約は初めてですが、貴方が望むなら可能ですよ。とはいえ、我々が“繋がり”を持てるのは一人だけなので、私は貴方だけのお友達、ということになりますけど》

「いえ、何というか、上下関係というのがなんとなく嫌だっただけなので、私はそれで構いません。貴方はそれでよろしいですか?」

《ええ、初めてのことなので、むしろ楽しみなくらいです》

「じゃあ、その、契約を、お願いします!」

《それでは、まず貴方は私に望む事を思い浮かべて下さい。そうすれば私はそれにふさわしい姿になります。人型は無理ですが、私たちはそれ以外なら結構自由な姿をとれますから、使い魔、という言葉にこだわらず、自由に想像してみて下さい。私も特別な方が楽しいですから》

「えーと、じゃあ……」


いつも一緒にいるのなら、飛んでいる方が自由がきくか、なら翼は必要かな。

せっかく友達になるのだから、色々な事を一緒にやりたいし、役割を魔法の力を引き出すだけに限定したくないな。

あとは、出来ればカッコイイ感じの方が良いか。でも、あまり目立つのも良くないかも?

いざという時には守ってくれる強さも欲しいぞ。何せ、今世の私は女の子なワケだし。


《……なるほど、貴方の記憶を覗かせて貰いました。転生者というのは契約者以外を含めても初めて出会いました。せっかくなので、その記憶の中から貴方の要望に応えられる姿を選ばせて貰いますね》


そう語りかけてきたと思ったら、突然光が強くなり、形を変えていく。

そして、光が収まり、現れたその姿は――、


翼、はある。多いけど。

なるほどこれは、確かに役割がマルチプルだ。

まあ、カッコイイことは間違いない。その上、ある意味では目立たないわな、これ。

強さ、これも間違いなくあるだろう。だって、ミサイルついてるもん。


――っていうかこれ、丸っこくデフォルメされてるけど、戦闘機だ! F-22だ!!


マルチロールとかステルスっていう言葉が、私が思ったのとちょっと意味合いが違う気がするよ!


「……」

《それでは最後に、私に名前を付けて下さい。それで契約は完了し、貴方と私の間に確かな絆が結ばれます》

「ラプたん」

《……え?》

「名前は、ラプたんで」

《……あ、はい、即決過ぎて驚いてしまいました。なるほど、ラプたんですか、分かりました、今日から私は貴方の友達、ラプたんです》

「よろしくね、ラプたん!」

《よろしく、リリィ》


あ、そういえば自己紹介が遅れましたが、私の今生の名前は『リリィ』です。


「何で名前を……? って、そういえば私の記憶を見たって言ったね」

《ええ、我々はあなた方とはちょっと存在の在り方が違いますから、そういうことも出来るのです》

「ふーん。……ところで、私の身体の中はそんなに変化が無いようなんだけど、魔法を使うのに魔力とか必要ないの?」

《いいえ。この世界の人達が言うところの『魔力』を必要としますが、貴方が考えているように、貴方の身体の中を巡るものでは無く、私から直接引き出す力なのです。試しに、貴方が頭の中で魔法をイメージしてから、私から魔力を引き出すように念じてみて下さい》

「うーん……」

さて、初魔法をどうするか。

せっかくなのでしょぼいのは嫌だな。

だけど、いきなりとんでもないことして偉い人に目を付けられたりして、色々大変な目に遭うのもゴメンだ。

……うん、やはり人間、謙虚が一番。

実用的な方向で……、そうね、喉渇いたから飲み水でいいや。


よぉし……。

おいしい水の玉が宙に浮いているイメージ。

ラプたんとの繋がりは……なんとなく解る。この巨大なトンネルの向こうから力を引っ張ってくれば良いのか……。

さあ、これでどうだ……!?



ザバーーーー。



「…………おい、ラプたん、何で頭の上から水が滝のように降ってきた? そんな想像してないはずだぞ」

《友達なので、サービスです》

「よし、仲良くケンカするか! 友達だもんなぁ! ってこら、逃げるな! 飛ぶのはずるいぞ!」

《落ち着いて下さい、冗談です。実は、貴方との繋がりが思っていた以上に強く、貴方が一度に使える魔力が普通よりも桁違いに多いのです。そのせいで現象が過剰になってしまったのであって、悪意があったわけではないのです》

「綺麗なインメルマンターンを決めながら言われてもな……。まあ、一応信じるけど。……でも、じゃあ、どうすればいいわけ?」

《慣れですね。実際に魔法を使って色々と試してみて、その中でコントロールを学ぶしかないでしょう》

「そりゃ、せっかく魔法を使えるようになったんだから、元々色々やってみるつもりではあるけどさ……。まあ、いいか。とにかく、これからよろしくね、ラプたん!」

《はい、リリィ》


こうして、私はこの世界で初めての『友達』が出来ると同時に、魔法使いになったのでした。


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