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四話目

決戦の日、だった。


「今日は学校に行かなくていい」


父からの急な話。…いや、急なのはいつものこと。

そもそも学校なんて父にとっては、私に必要ない。

社会勉強の一貫として、という暇つぶし。

その程度の認識でしかない。


だから急に欠席させるなんて言っても、問題なんてない。


無いけど……、でも。

今日は…


「お話とは、」


だから、いつもならしない質問をした。


「お話の御用向きは、何でしょうか。お父様」


一緒に乗ったリムジンの横で、父は外を眺めている。

その目には何も心を留めるものなどないかのように、ただ遠い目をしていた。


「……なぜ聞く」


「今日は私、学校で見届けたいことがあります」


――父の目が、


「友人の背中を支えたいのです」


――私を視た。

何年ぶりか、父と目が合う。

興味の無さそうな、気だるい目線。

くだらないものでも目にするような威圧感。


「………友人」


車が止まる。信号が赤のようだ。

父の口が歪むように笑う。


「その友人は、『お前の事』を知っているのか?」


私は何も言い返せない。

父は私の目を見ながら続ける。


「我々に、『友人』は必要ない」


信号が変わる。車の速度がまたゆるゆると上がって、景色が変わっていく。

知らない景色へ、進んでいる。


「それが『串灘』の道だ」


父の口癖。いつもの口癖。

でも、今回は私の心に突き刺さるよう。

外界とは違う世界。


窓の外で手を繋いで歩いている子供たち。

一瞬で遠すぎていく景色に、自分を重ねた。


「………」


私は『串灘』。

忘れかけていた自分の世界の空気を思い出していく。

そうだ。これが、私の世界。


いつもの世界。


…これで、


いいの?


頭に言葉が浮かぶ前に、私は車の扉を開けていた。

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