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バウンティ・ハンター 笑金稼ぎ物語  作者: 味噌漬けパン
2/2

能天気は世界を埋める


 皆さん、突然ですがすいまっせんしたぁぁァァ!!!


 前回の説明でこの話に魔法を入れる予定であった事を思い出しました、

 種類は文字通り何でもアリ!

 話に出したい術のリクエストなんかあったら言ってくださいまし。


 ここはセントラル・パージ。城下町。薄く雪の積もる冬の季節。ここに一人の犯罪者とクランが、深夜の闇の中、うごめいていた。


「コーヤ!そっちいったぞ」


 青髪の、パーカーを腰に巻いた少年が、味方に問いかける。


「カイトォ!てめ俺に何回回してんだ!スタンもうねえっつったろーが!」


「それは逃げてる本人に聞いてくれたまえ」


『ポイントまでの距離200-♪』


 凶器を持った強盗殺人犯を追い掛け回してるとは思えないほどの緊張感の無い会話をしているが、これは一言たりとも犯人には聞こえていない。


「だーもうッ!俺のスタンをどんだけ使わせる気だ畜生ッ!」


「それは作戦上避けては通れぬ道だ」


『残り距離100-♪』


 闇にまぎれる真っ黒な髪の少年が吐き捨てた直後、暗闇の空にいきなり太陽が出現したかのように、まばゆく発光し、同時に耳をつんざくような不協和音が鳴り響く。


「しかし、この作戦。確実に近所メーワクになってるだろうなー」


「んなこた知ったこっちゃねーよ。こっちはこっちで依頼のためにやってんだからさ」


『ポイント到達まで3、2,1、ゼーロ』


 楽観的なカウントと同時に、道が開け、噴水のある広場に出た。

 そして、黒髪の少年と、青髪の少年の出てきた通路の真ん中に当たる通路から、身軽な格好をした男が飛び出してきた。


「ハロー。ドロボーさん。ハウアーユー?」


「i am fain thank you……と言うとでも思ったか!」


「「いや、もう言ってるし」」


 相手は拳銃を持っている人殺しなのだが、それを微塵にも感じさせないのは、このクランなら日常茶飯事である。


「くたばれ!ガキ!」


「バーカめ!「くたばれ」 「死ね」 「勝った」 の三つは死亡フラグの御三家である事を忘れたかマヌケめ!」


「口を開くときにはフラグに気を使って発言しろ、スカタン!」


 罵倒を浴びせると、黒髪の少年は懐から拳大のボールを出し、犯人に向かって投げつけた。

 それは、犯人の目の前で破裂すると、中身の黒い粉を撒き散らした


「ぐおっ!?」


「喰らったか!我が自家製ムース爆弾!」


「ヒマ人め、他にすることないのか」


 まぁ、ヒマ人はともかく、ムースで目の潰れた犯人は、壁か、寄りかかれる物を探して手を前に出し、フラフラとさまよっている。


「赤ん坊のようだな」


「哀れ」

「無様」

「人としてどうかと」


「ひどすぎだ!」


 すると、犯人の出てきた通路から、もう一人の仲間が出てきた。


「あ」

「リーダー」


 黒い羽飾りの付いたコートを羽織り、腰に弾帯を巻き、肩にライフル……とかいう、最新鋭の武器をかけている。

 カイトの所属するクラン。『スケルトン・クロウ(骸骨カラス)』の、リーダーである。


「捕獲までの所要時間30分って所か、もうちょっと早いといいな」


「ムリ言うなよー」


「ってか、犯罪者とはいえ捕獲って」(笑)


「目がぁ……目がぁ………」


 そろそろ犯人さんがかわいそうになってきたので、素早く縄で縛り、顔に水をかけて、ムースを落としてやる。


「むぅ、こんどは水でも落ちない粘着性の高いムースを作るか」


「「作らんでいい」」


 これがコーヤのへんなクセである。どーも人を苦しめるのが好きらしい。まぁ、ある種理解できるが。

 しかも、研究者としてはトップクラスで、本当なら城の王宮学者・兵器部門にでも所属してそうな勢いだが、人格に問題がありすぎて追い出され、行き倒れていた所をこのクランが拾ったと聞いている。


「えーと、被疑者確認完了と。懸賞金いくらだっけ?」


「んーとね、300000ゼニーだな、まぁ、容疑が強盗殺人ならこんなもんか」


 結構な額ではあるが、その半分近くがギルドの手数料、そして、クランへの共有貯金として消える。


「気ぃ抜くなよ、ハントは換金するまでがハントだぜ」


「遠足じゃねぇっての」


 ま、しかし、依頼失敗の原因として、二番目に多いのは犯人連行時の不注意なのだが。


「あ、それはそうと、今日、シドが帰ってくるらしいぜ」


「本当か?」


「久しぶりだよな、2週間位か?」


「ああ、それじゃ帰るか…」


 これがなんとも無い、いつもどおりの日常。




同時刻。クラン『スケルトン・クロウ』本部より、北西の大樹海。


「……はぁ……はぁ……」


 相手の数は不明。何故追われているのかすら不明な状態で逃げる。生きなければならない。それだけが強く頭の中に響いている。


 肩には、ナイフでつけられた裂傷があり、そこから刻々と血が流れている。


「おい!こっちにいるぞ!」


「……!!……」


 気づかれた。恐らく、肩から出た血を辿られたのだろう。

 隠れていた大きな木から飛び出し、走る。


「いたぞ!」


 同時に、後ろから複数の足音が聞こえてくる。


 しかし、何処まで逃げればいいのだろうか?どれだけの速さで、どの方向に、どれだけ走ればいいのだろうか?


 ふとしたことを考えていると、突然足に衝撃があり、そのすぐ後に激痛が走った。


「……っ!?」


「当たったァ!」


 男の狂気の声が聞こえ、いつの間にか自分は倒れていた。

 逃げるため足を動かそうとするが、右足のみ、それも、ほんの少ししか動かず、他は痙攣して動かない。



「おいおい、ホントにバケモンだな、鯨すら麻痺で溺れさせる神経毒だぞ?」


「なんたって竜人族だからな、人の常識なぞ簡単に覆すもんさ」


 ぞろぞろと集まってくる敵たち。数は6人。


「ほぉ、結構な上玉だな」


「殺す前に少し位楽しんだっていいよな?」


 中には下卑た笑いを浮かべている者もいる。


「バカ、王宮警備隊に見つかったら、セントラルにいられないどころか、全国完全指名手配だぞ」


「盗賊としちゃ、それも一つの勲章だ」


「やってることは密猟と同じだがな」


「じゃ、とっとと殺すか」


 リーダー格らしい男が、他の物より一回り大きく、装飾を施された短刀を抜き放ち、近づいてくる。


「あ、リーダー、少し待ってくれますか?」


「ああ?ンだよ。」


 全身を覆い隠すローブに、深く被ったフードにより、誰なのかはわからない。


「……誰だテメー」


「やだなリーダー、俺を忘れたんですか?お笑い担当のシドえもんですよ~」


「ああ、シドえもんか」


「今度いつギャグやるんだ?」


「さあな………………………ってゆうか……………」


 一拍の間をおき。


「「「「「誰だっつてんだよ!!!」」」」」


「あはははははははは」


 自分を追いかけ、ためらい無く殺そうとした盗賊たちなのに、それを忘れさせるような雰囲気を持った男だったが、今度はやや声のトーンを下げた。


「いえね、何かやってるなーと思って、まぁ、希少動物の密猟ごときなら、ブン殴った程度ですまそうかな~   なんて思ってたんだがね、人。それもどうやら…竜人族を殺そうとしている。おまけに女の子を!」


 次第に口調を強めていき、間をおいて。


「赦せんねぇ、断じて!

 どうやら少数精鋭のようだが、そのアジトにいたるまで、完全に駆除してやろうか、『霞盗賊団』!」


叫ぶと同時に、フードをとる。そこには、深紅で、肩ほどまでのところで雑に切りそろえ、残りももれなくぼさぼさにクセの立った髪。少々鋭角で、精悍な印象を受ける顔つきに、切れ長の目。


「てめぇは……そうか、ギルドからきやがったか、殺せ!コイツを殺せば、また俺達の名が上がるぞ!」


「「「「おお!!!!」」」」


 各々、ナイフ、ボウガン、長剣など、武器を構え、襲い掛かった。


「元気だけはよろしい事で、ま、意気だけで成り上がれるほど、ドロボーの世界も甘くないと思うがね」


「るせぇぇぇ!!」


 勢いよく突っ込んだナイフを持った一人が突っ込む、構える力も問題なし。そのナイフは吸い込まれるようにシドえもん(?)の―――――――――――――何か(・・)に弾かれ、あさっての方向を向いた。


「え?」


「うーん、握力は値段の割には悪くないが、肩の力が弱すぎだよ?あんまり戦闘経験ないでしょキミ」


「ね、値段……?」


「そ、部下一人頭5万ゴルド、リーダーは10万ゴルドの値が付いてる。」


「おまえらみてぇなギルドの犬どもを殺してあげてきたのさ」


「だろうね、こんな値段じゃため息どころかリアクションもとれない」


「なんだと……」


 先ほどから黙っていたリーダーが、驚きと怒りを混ぜて、言った。


「こんな端下金じゃあ、リアクションすらとれないっつたんだよ」


「んだと!何様だテメェ!」


 すると、シドえもんは、それを待っていたかのように話し出した。


「…あんた等もいっぱしの盗賊団なら、先月、南の大猟団、『朱雀猟団』がつぶされた事ぐらい知ってるだろう」


「ああ、あそこには先輩もいくつかいたからな」


「それをやったのは俺だ」


「何……?」


 浮き足立っていた場が一瞬で凍りつく。


「いい仕事だったぜ、部下一人頭50万ゴルド。あんた等の10倍だ。そしてリーダーは……」


「1億ゴルド」


 シドえもんの代わりに、リーダーが震えた声で告げた。


「お、しってた?因みに六人の幹部は一人頭5千万ゴルド、六人で3億、リーダーより高いんだねー」


 合計5億位稼いだよー、と、シドえもんはなんでもないように言うが、それだけで、この男が途方も無い実力者であることは、この場の全員が悟った。


「さて、そんな俺があんた等を潰すわけであるが、どうだね?ベタなセリフだが俺も鬼じゃない。

 今すぐ武装解除してお縄に付け、でなきゃ、お前らのレベルじゃ命の保障ができん」


 このとき、この人の背中しか見えていなかった私にも、その圧倒的な威圧感が伝わってきた。

 しかも、その裏には、殺気すら混ざっていた。


「あ、ああ………」


 リーダー以外は、声も出ず、無言で武器を取り落とした。


 クラン スケルトン・クロウ。戦闘員シド。AM1:20。盗賊、『霞盗賊団』、捕縛完了。



To be continued


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