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あの後、亘くんは相当恥ずかしかったのか、早足でどこかに行ってしまった。
ぼーっと、テレビを見ていたら亘くんが私の隣に座った。髪が濡れているから、お風呂に入っていたのだろう。ふと、私はあることに気付いた。今日は日曜日だ。明日から亘くんは学校がある。
「ねぇ、亘くん明日から学校だけど、どうする?」
「・・・あー・・・」
私が学校のことを聞いた途端うな垂れた亘くん。そんなに学校嫌なのかしら。
亘くんに最初に会ったのは土曜日だったから、制服じゃなかった。まぁ、制服を着ていたとしてもあの状態では使い物になってはいなかっただろう。
という事は、家に帰らないといけないということで、亘くんの様子を伺ってみると心底嫌そうな顔をしていた。そんなに家帰るの嫌なのかしら。あ、2回目。
「明日、制服とりに帰りなさいよ」
「ええー」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・はい」
しぶしぶとだが頷いた亘くんの頭をなでる。よしよし。
もう慣れたのか普通な感じで私の手を受け入れている。
「あーあ、家かぁ・・・うわー」
嫌な事を思い出したのか眉間にシワがよっている。
「?何でそんなに家帰りたくないの?」
「んー?んー・・・・」
「・・・?」
「・・・いつか話せるようになったら、話すね。それまでは、ひみつー」
「分ったわ、・・・私も会社行くから駅までは一緒に行ってあげる。だから、頑張りなさい」
「え、ほんとっ!!」
「えぇ、本当本当」
亘くんは芦屋の方の学校って言ってたから家も芦屋の方なんだろうし、でも、芦屋って・・・もしかして亘くんお金持ち・・・?・・・うん。まぁ、いっか。きっと、いつか亘くんが話してくれるだろう。私の仕事場があるのが神戸だから、車で行ってもいいが、色々大変なので、結局電車で行かないと行けない、こんなに喜んでくれるとは思わなかったけど。
そんなことを考えていると、ふいに亘くんが静になる。
「どうしたの?亘くん?」
「・・・・綾女さん」
たまに見せるような真剣な亘くんの目に一瞬たじろぐ。
「俺、頑張るから」
「・・・・・・・・・、っ!!」
真剣な表情から一転し、ふにゃ、そう!ふにゃっとした笑顔で私にそう言った亘くん。やばい!!可愛い!!私はたまらず亘くんを抱きしめた。すっごく可愛い!!
「え、っちょ・・・綾女さんっ!?!!」
最初、何が起きたのか分からなかったのか大人しかったが、だんだん状況が分かってきたのか、慌て出した。私の腕の中でわたわたしている亘くんの顔は真っ赤で、まだ中学生だもんなー、と思った。




