少年の可愛い件について
中古で買ったけれど、気に入っている小さめの車に乗り、ちらりと亘くんの方に視線を向ける。
亘くんはさっきのような不安定さはなく、むしろ嬉しそうな表情をしていた。何か、私には分からないけれど、亘くんの中の不安が消えたのだろう。
私は、亘くんから視線をそらし、ハンドルを握った。
「やっぱり家が一番だわー。あ、ねえ亘くん、今日買ったカップで一息つこっか。何が良い?コーヒー?紅茶?ココア?」
「・・・、コーヒーで」
「コーヒー?じゃあ、私もそうしようかな」
棚からインスタントのコーヒーを取り出す、お湯注げばいいから、楽なのよねー。しかもおいしいし。
「亘くんはコーヒー好き?」
「んー、コーヒーが好きっていうより、苦いのが好きなだけ。抹茶とか、」
「苦いの?甘いの嫌いなの?」
「いや、食べれるけど・・・生クリームとか、あれは生理的にムリ」
ベー、と舌を出し嫌そうな顔をする亘くんが可愛くて、少し笑ってしまう。
「ふふっ、じゃあ亘くんはスナック菓子とかの方が好きなのね」
「うん、大好き」
「スナック菓子かぁ、あ、ちょっと待ってね、確かこの辺に・・・」
棚からお目当ての物を探していると、あった、ちょっと前にコンビニ寄ったときに気になって買っておいたお菓子が私の指先に触れる。大分奥にあるようでなかなか届かない。
こーゆーのってちょっとイラってするのよね。
少しつま先を上げてみる。あ、届いた。お菓子を取り出す。
うんうん、これこれ。チーズ味のポテトチップスにホワイトチョコがのってるってやつ。CMでやってて美味しそうって思ってたのよね。
袋を破り、食べやすいようにする。
「はい、こんなのしかないけど」
亘くんの前に置く。
「・・・・・・・・」
「・・・・?」
なかなか食べようとしない亘くんを不思議に思っていたら、・・・亘くんチョコも嫌いだったとか・・?そう思うと一気に血の気が引いたような感覚になった。
「あ、えっと・・・甘いのだめだったんだよね。ごめんね、私が食べるから」
「え?・・・あ、いや・・・チョコ好きだよー?生クリームとかが苦手なだけで。それに俺、これCMで見て食べたかったし、何焦ってんの?綾女さーん」
私が焦ったのが珍しかったらしく、にやにやした顔で私を見る亘くん。このやろう。
ぶすっとしながら、亘くんを見ていたら今度は亘くんが焦りだし、私に謝ってくる。
「・・・怒ってないから、亘くん」
「え、いや怒ってるでしょっ、怒ってるって」
「あ、亘くんはこのお菓子食べちゃダメだからね」
「怒ってるじゃんっ!!」
「・・・・・・・・・・・・・」
「すみません。無表情で無言キツいです」
参ったのか半泣きな亘くんに少しスッキリし、許したら、すぐさま笑顔になる亘くん。
何このわんこ。すっごく可愛いんだけど。
「え、何で俺、頭撫でられてんの?」
まんざらでもなさそうな表情で私に聞いてくる亘くんの頭を、わしゃわしゃ、あ、やばい、物凄く癒される。
「可愛い、髪柔らかいし、あー癒される」
この後、亘くんが止めるまで撫で続けました。
その間ずっと亘くんの耳が真っ赤だったことは私だけの秘密。
前のが少しシリアスだったので今回は明るめです。
亘くんは綾女さん限定でわんこ決定です^^




