少年と出かけました
変形ニットのセーターを着て、落ち着いた色のスカートをはく。
マスカラを塗り、お気に入りの色のルージュを唇にたっぷり塗る。
最近は仕事ばっかりで買い物出来なかったから、少し浮かれている私がいた。
でも、今回のメインは私じゃなくて亘くんの生活用品が目的。
私は、鏡で確認してから部屋をでる。すでに亘はいた。
「よかったー、私のジャージピッタリじゃない」
亘くんの服は血まみれで使いものにならなくなっていたから、私のジャージを貸したのだ。ラインとかピンクだから似合うかどうか心配だったけど普通に似合ってて良かった。上のTシャツはデザインが気に入って買ったけど、男物で大きすぎたから部屋着にしてたやつ。顔が良いから何着ても似合うなあ。
「・・・・あんま見られると、恥ずいんだけど」
「あ、ごめんね。・・・それじゃあ、行こっか」
「・・・・・・っ」
私が先に部屋から出た。
だから、知らなかった。亘くんの顔が真っ赤になっていたことを。
「亘くん何色が好きなの?」
「・・・・・赤」
私は棚に並んであるマグカップを見る。食器はあるけど、流石にカップは亘くん用に買っておきたい。お客様用のを使い続けるのはなんか悪いし・・・。
「赤ねー、んー、赤でも色んな種類があるわね」
色別に並んでいるマグカップ。赤だけでも凄い数が並んでいる。どれも可愛いのばかりで悩んでいると、ふいに亘くんがひとつのマグカップを取る。
「あっ!!」
私が欲しかったマグカップだった。買おうと思っていたが品切れで買えなかったのだ。入荷してたんだ・・・。
そのマグカップが置いてあった所を見る。
もうひとつだけあった。私が欲しかった薄いピンクのやつだ。
でも、このマグカップを諦めて別のを買ってしまっていた。今さら新しいのを買うのもあれだしなあ、・・・はあ、せっかく見つけたけど諦めよう。
「・・綾女さん?」
「へ、あ・・・ごめんね。ぼーっとしてたわ」
「・・・綾女さんとお揃いにしたい、なんて、ダメ?」
「・・・えっ」
私の方がかろうじて身長が高いから亘くんは必然的に上目づかいとなる。可愛い、いや、そうじゃなくて“お揃い”?亘くんはそんな事言うような子には・・まるで、私がそのマグカップが欲しかったのを知っているみたい。まあ、気のせいよね。昨日初めて会ったのにそんなはずないわ。ちょっと考えすぎね、私。
あ、もしかして・・・私そんなに欲しそうな顔してたのかしら。恥ずかしい。私は羞恥を感じたがそれを振り払うように首を少し振り、亘くんに言う。
もちろん、
「いいわよ、お揃いにしましょ」
棚から亘くんが持っているマグカップと同じ種類の、私が欲しかった薄ピンクのマグカップを取り出す。
「今日、帰ったらこれで紅茶でも飲もっか」
赤色と薄ピンク色のマグカップを買い物カゴにいれた。




