少年と話しました
「亘くんって今、何才なの?」
オムライスをまだ食べている亘は、私を見て「12」と言った。
「・・・12?・・・小学生・・?」
「違う、中学1年生」
「1年生・・へぇー、そうだったんだ」
中学生位かなぁとは思っていたが、まさか12才とは・・・大人ぽいなぁ。
「じゃあさ、どこの学校?ここの近く・・には無いか、どこ?」
「・・・・・・・・・・」
亘はオムライスののったスプーンを微妙な位置で保ったまま動きを止めた。
「?・・・あー、言いたくないなら別に良いわ、ここから行くならちょっと不便かもって思って聞いただけだし」
「いや・・・別に、そういう訳じゃないけど・・・」
「それじゃあ、何?」
言えない訳じゃないようだ。でも、物凄く挙動不審で、何か怪しい。
何なのかしら、そう思いながら目をキョロキョロしている亘を見ていると、亘が私の方を見ながらおそるおそる言う。
「・・・俺、さ、ほぼ学校行ってないって言ったら、綾女さん怒る、よね?」
「何か理由があるなら怒らないわよ・・まあ、サボり・・・とかだと怒るかなぁ」
私は笑顔で言った。あ、目そらした。
「どうなの?サボってたの?それとも入院とか?」
「・・・・・・・・・・・」
亘はいっこうに私を見ない。
「言ってくれないと私、分からないわよ?」
「・・・サボってました」
耳をすましておかないと聞こえないんじゃないかってくらいか細い声で言った。
「週に何回?」
「・・・入学してから2、3回しか行ってません」
ちらりとカレンダーを確認する。5月に入ったばかりだから…2週間位かしら。
「亘くん」
「・・・・・・はい」
「これから私が学校の送り迎えするから」
「・・・はぃ、・・・・・はっ!?!!」
勢いよく立ち上がったため、イスが倒れた。
「どうせ学校遠いんでしょ?なら丁度いいじゃない」
私は日課となっている食後のコーヒーを飲む。
「いや・・でも、綾女さん職場遠くなるよ?俺の学校綾女さんと逆方向だしさー」
「へっ?・・・何で私の勤め先分かるの?」
「・・初めて会った場所から考えたら、逆側だと思ったから」
「・・・あー、そっかそっか、学校どこらへんなの?」
「芦屋」
亘の言っていることは正しかった。私の会社と正反対だ。
「本当ね、逆側だわ」
「だから、送り迎え諦めて、ねっ?綾女さん」
嬉しそうな顔をする亘、そんなに私に連れていって欲しくないのかしら。ちょっとショックね。
「ちゃんと学校行くの?」
「うん!!」
「・・・・・・・・」
物凄く心配なんだけど・・信じていいのかしら、そんなことを思いながらカレンダーをもう1度見る。今日は土曜日、明日が日曜日で良かったわ、亘の生活用品買わないと。
「亘くん、明日デパート行こっか」
「デパート?別に良いけど・・・?」
ついでに私の服も買おうかしら、最近買ってなかったし・・・うん、そうしよう。
明日が楽しみだわ。




