プロローグ
神の子供であるミュージックはある童話を読みました。そして子供心に人魚姫に会いたくなりました。それを父親である神に言ってみました。神は父親であったが故に作ってあげようと思いました。
・・・それは人魚誕生のきっかけでした。
ある時人魚の島に気温変化がおきました。人魚たちは今まで自由に泳ぎ回っていた水は恐ろしい熱湯へと変わりました。そして住んでいた人魚たちは住む場所を無くしました。
王家の人々はさっさと島の安全なところを作りそこへ逃げましたが平民たちは移動するお金も安全なものを作る頭もなくそのまま人魚島に住むことにしました。
王家の人々は安全な場所から気温を操作する装置を作ろうと試みました。しかしそれは失敗続きでした。もともと人魚たちは発明する力に長けていなかったのです。
そこで銀河警察の人々に協力要請をしましたが、水温の変化から気温の変動にある程度馴れている人魚とは違い弱い人間たちはさっさとその仕事を放りだしてしまいました。
その為王家の人々は平民一人一人に一日一回バケツ一杯分の冷水を配ることで対処しました。
「お母さん!!お母さんこのお水を飲んで・・・お母さん!!死なないで・・・。」
「駄目・・・よ。あなたが、飲むの・・・。あなたが、浴びなさい・・・。」
人魚のランジュは涙を浮かべて水を飲ませようとしますが、母親は頑ななに飲もうとしません。それもそのはず。その母親の下半身――つまり魚の部分はもう腐っていたのでした。水を貰ったものの娘のランジュにすべてを渡してしまったため腐敗が早く進んだのです。・・・そのかわりランジュは健康そのものです。
「お母さんっ・・・なんで、なんで王家は何もしてくれないのぉ・・・。」
「あなたが、動かすの・・・。あなたが、変え、るのよ・・・。」
そこで一息ついて母親はより強い声で囁きました。
「あなたには、その力がある。」
――母親はその数日後に死にました。死因は下半身の腐敗です。ランジュは母の言葉を心に刻み込み、国を動かそうと決心しました。
「・・出来たわ。私がこの島を変えてみせる・・・!!そう、私にはその力があるのだから。」
ランジュはもともと頭のいい子でした。それで3か月という短い歳月の間で機械を作り上げてしまったのです。ランジュの眼には自分を信用しきった者の自信に満ち溢れていました。
「まずはサンクチュエール・フォンテーヌ《聖なる泉》に仕掛けないといけないわ。」
ランジュはそれを実行しました。彼女は人に頼る気はなかったので、すべてを自分の力でやりました。
数日後人魚島の気温は平常に戻りました。ランジュがしたと知っている者は一部の人間だけで、ほかの人魚は気まぐれな気温を恨みました。一部の人の中に入っている王様はランジュに感動し末代まで援助をすると固く誓いました。そしてランジュのことを『守護』と呼ぶことにしました。そしてランジュの血が絶えないように結婚者の準備もしてあげました。いささか過保護な気がします。
・・・それは100年たった今現在でも根強く残っています。
「はぁ!?人魚ォ?」
レイウッドは叫びました。それに対してファントムはニコニコ笑いながら契約書を突き出します。
「うん。人魚島。行ってくれる?とゆーか行って。」
「なんで俺よ。あんなに平和な国なんだからさぁ。俺じゃなくて第123隊長ガリータ君ぐらいに行ってもらったら?」
レイウッドはダルそうに地球製品の『センベイ』にかぶりつきました。
「いや、第123隊長ガリータ君は今ウルスアルヌ星で大量発生したキノコの駆除に掛かりきりになってるんだ。」
「ん~。けど、俺じゃなくていいでしょ?まだエドワードに噛まれたとこが痛いし。」
その言葉にファントムは少し顔を歪めました。
「噛まれてから半月もダラダラしてた奴のセリフかね。」
レイウッドは肩をはだけさせて傷口を突き出しました。傷口といってもほとんどかさぶた状態です。
「い・た・い・の!!だから俺がなんで人魚さんに会いに行かなきゃなんないのさぁ?あんな金にならんのに。だいたい100年無料の法とか・・・バカじゃん?」
「依頼は気温異常。行ってくれるね?」
するとレイウッドはコロッと目の色を変えてラフな服から隊長指定のマントに着変えました。
「はい。もちろん。ファントムのためなら火の中水の中、ですから。」
「やっぱり頭がイイね。レイ。火の中には行かなくて良いが水の中に行って貰いたい。」
「金のためなら。行ってもいいよ。」
ファントムはレイウッドのあからさまな言い方に眉をひそめると朗々と語り始めました。
「正確には違うね。信用のためだよ。我らが銀河警察は100年前人魚島を救う、救うと言っておきながら何もしないという卑劣なことをした。だから先代はその失われた信用を取り戻すために『100年無料の法』というのを打ち出した。内容は貰う筈である前金も報奨金も一切受け取らないといういささか無理のある法だった。もともと人魚島は平和な国だったからいっか。という考えである。んで、その100年目が明日なのだ。」
そこでファントムはレイウッドをまるで睨むかのように見ました。一方見られた方のレイウッドは眉をしかめただけでした。
「なのに・・・その一日が惜しいみたいな依頼が来た。それが100年前と同じ気温異常だよ。解かったかい?」
「分かったよ。また熱いって依頼だろう?それを100年前とは違うんだゼ!!といいながら解決しなくちゃぁならない。OK?」
「上出来だけど、違うんだなァ。これが。」
レイウッドはまさに出ようとしていた足を止め怪訝そうな顔をしました。
「熱いじゃなく・・・暑いだ。とか言わないよな?ファントム。こちとら準備があるんだからな。」
「言わないよ。君の忙しさは知ってるしね。依頼の内容は『寒い』だったんだ。水面はもう凍っているらしい。」
「凍って!?そんなん成るまで何で言ってこなかった?」
ファントムは大げさに肩を竦めながら言いました。
「僕も聞いたよ。それは。信用が無かったからだってさ。露骨な言い方するよね」
「んじゃ、その信用取り返してくるさ。」
レイウッドは悠々とファントムの部屋を後にしました。
その後人魚島に宇宙服を着た5人の人影がありました。
彼等は笑いながら近づいてきます。
私の方へ。
私が誰かは次明らかになるといいなーと思っております。