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幕が下りたあと

作者: シキカン
掲載日:2026/08/25


映写機の音が、静かに響いている。

ここは以前、僕たちが所属していた劇団の劇場だ。

明日取り壊されると聞き、独り、最終公演の映像を観ていた。

劇場がなくなる前に、もう一度だけなんとなく見ておきたかった。

スクリーンの中の僕らは、幕が閉じるのを悲しむより、まだ見ぬ未来に想いを馳せていた。

「こんな表情だったのか……」

あの頃の自分を客観的に観て、忘れていた記憶が次々と蘇ってきた。

打ち上げで酔っ払って、演技論で熱くなり、殴り合ったあの日。

真夜中の公園。酔いが醒めるまで、ブランコを漕ぎながら語り合ったあの日。

あっ、あのセット。

確か公演日当日の朝まで、徹夜してみんなで作ったっけ。

映像を見ながら思い出すのは、そんなたわいもないことばかりだ。

映写機の音が少しずつゆっくりになる。

スクリーンの中の僕らが唇を噛み締めながら手を振り、やがて暗闇に消えていく。

終わりが近づいてきた。

僕は立ち上がり、フィルムを回収し、劇場の扉を開けた。


いつのまにか日が暮れていた。

帰ろうとしたその時、そこに誰かが立っていた。

見覚えのある顔がいくつもあった。

「あっ、なんだ!お前も来てたのかよ!」

「明日取り壊されるって聞いて来てみたら、劇場の前にみんな居て…。」

「お前が中にいるなら、俺らも入ればよかったな」

「久しぶり。最近はどう?」

皆が口々に僕に話しかける。

「まぁ、ぼちぼちかな?おまえは?」

「俺? 俺は今度主演の舞台決まった!」

そう言って胸を張ったのは、昔からうちの看板俳優だった男だ。

その隣であいつが舞台の裏方をしているらしい。

「その舞台、子供も見たがって…」

そう話すのは、昔から僕らの劇団のマドンナだった。

「俺の子も…」と楽しげに話すあいつは、もう舞台を離れて、会社勤めをしている。

みんな、それぞれの人生を歩んでいる。

それでも、またこうやって集まれたことが、僕にはたまらなく嬉しかった。

僕はみんなの輪の中に飛び込み、肩を組んだ。

そして誰からともなく、この言葉が溢れた。


「「「「「またいつか……」」」」」

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