幕が下りたあと
映写機の音が、静かに響いている。
ここは以前、僕たちが所属していた劇団の劇場だ。
明日取り壊されると聞き、独り、最終公演の映像を観ていた。
劇場がなくなる前に、もう一度だけなんとなく見ておきたかった。
スクリーンの中の僕らは、幕が閉じるのを悲しむより、まだ見ぬ未来に想いを馳せていた。
「こんな表情だったのか……」
あの頃の自分を客観的に観て、忘れていた記憶が次々と蘇ってきた。
打ち上げで酔っ払って、演技論で熱くなり、殴り合ったあの日。
真夜中の公園。酔いが醒めるまで、ブランコを漕ぎながら語り合ったあの日。
あっ、あのセット。
確か公演日当日の朝まで、徹夜してみんなで作ったっけ。
映像を見ながら思い出すのは、そんなたわいもないことばかりだ。
映写機の音が少しずつゆっくりになる。
スクリーンの中の僕らが唇を噛み締めながら手を振り、やがて暗闇に消えていく。
終わりが近づいてきた。
僕は立ち上がり、フィルムを回収し、劇場の扉を開けた。
いつのまにか日が暮れていた。
帰ろうとしたその時、そこに誰かが立っていた。
見覚えのある顔がいくつもあった。
「あっ、なんだ!お前も来てたのかよ!」
「明日取り壊されるって聞いて来てみたら、劇場の前にみんな居て…。」
「お前が中にいるなら、俺らも入ればよかったな」
「久しぶり。最近はどう?」
皆が口々に僕に話しかける。
「まぁ、ぼちぼちかな?おまえは?」
「俺? 俺は今度主演の舞台決まった!」
そう言って胸を張ったのは、昔からうちの看板俳優だった男だ。
その隣であいつが舞台の裏方をしているらしい。
「その舞台、子供も見たがって…」
そう話すのは、昔から僕らの劇団のマドンナだった。
「俺の子も…」と楽しげに話すあいつは、もう舞台を離れて、会社勤めをしている。
みんな、それぞれの人生を歩んでいる。
それでも、またこうやって集まれたことが、僕にはたまらなく嬉しかった。
僕はみんなの輪の中に飛び込み、肩を組んだ。
そして誰からともなく、この言葉が溢れた。
「「「「「またいつか……」」」」」




