哀愁
中古で買ったフェアレディZには大きなウイングがついていた。丸みを帯びた車体になかなか似合っている。白いフェアレディZはマフラーの快音を響かせてあぜ道を走る。運転していると力強い感触がある、。
それにしても今日は、暑い。太陽がじりじりと照りつける。ゼミもじいじいと鳴いている。畑で農作業をしているオヤジは汗だくだ。首にタオルを巻いて大きな麦わら帽子を被って、畑に水をまいている。見ているこちらまで熱くなる光景だ。クルマのクーラーを全開にする。
「まあ、暑そう。こんな日まで畑で仕事なんて大変、かわいそう。」
助手席の女が言う。きれいな女だが、少し老けた気がする。きれいな肌も近くで見ると小ジワが目立つ。もう20年来の付き合いになる。女の店が回転するまでの時間二人でよくドライブに行く。そんなことで20年経ってしまった。
「そら野菜だって、せっかく種まいても面倒見なければ、枯れてしまうだろ。」
何も好き好んで、こんな暑い日に畑作業をしているわけでもあるまい。野菜を育てる以上はどうしようもないことだ。
「最近は、店の方はどうなの。」
喋る事も特にないので聞いてみる。いつも同じようなことを聞いている気がする。
「もうお店なんて、若い子に任せ放しよ。その方がお客が来るんだもの。この前、私が出たら経営者と勘違いされちゃった。」
「お互いにずいぶんと年を取った。時間が経つのがずいぶん早い。お前のことを必死に口説いていたのが昨日のように思い出せる。」
「嫌になっちゃう。そういえば店によく来てくれた、城山さん、死んじゃったわ。癌だって。」
「ホントか、城山のオヤジさんとはあんまり、オレの年変わらないぞ。オレももういつぽっくり逝くかわかんねえってことだな。」
最近は女の店に行くことも減った。店に行っても、知らないヤツばかりになってしまった。店の女も若いやつは全然オレに興味を持たない。何十年も通って扱いがずいぶんと雑になった。客も知らないヤツばかりで話し相手がいない。それで余計、この女に会いたくなってしまう。コイツとドライブをするのはいい。緊張しないで話せるし、結構物知りだ。時間があるときにはカラオケに行ったり、ホテルに言ったりする。それにしても、城山のオヤジが死んだか。ずいぶんと色々世話になった。オレ達もいい年だ。
町に出てくると国道の両脇に色々店が立ち並ぶ。女の店もこの道沿いにある。
「あれ、あそこのラーメン屋潰れてる。確かこの前までやっていたのに。」
「先週通ったときはやってたよ。」
「ずいぶん急になくなっちゃうのね。」
このあたりもずいぶんと変わった。子供の頃は一面ずっと田んぼだった。それがいろいろ建つようになって店もいっぱいできた。最近、店はどんどん減ってきている。使われてない空き地がこのあたりにも増えてきた。
「ありがとう。助かったわ。」
店についた。これでオレの日課も終わった。いったいオレは何十年も何をやっているんだ。こんなところでこんなことばかりしてどうするんだ。
「あら、どうしたの。涙が出てるじゃない。」
もう帰ろう。そんなことは考えても仕方がない。
「オレは団塊の世代だ。」




