顔の在処
最新エピソード掲載日:2026/03/16
映像ディレクターの野口渉は、スタジオの廊下でひとりの若い女優と短い言葉を交わす。
「自分しか顔を履いていないので」
その台詞だけが、帰宅したあとも渉の中に残った。
数日後、過去に手がけた映像が賞にノミネートされ、その映像に一瞬だけ映り込んでいた女優・朔田玲への使用確認が必要になる。名前を知る前に顔を見て、顔を見たあとで名前を知る。仕事として始まった接触のなかで、渉は玲の輪郭に触れた気がする。だが近づくほど、「知っている」と「分かっている」のあいだの距離だけが、はっきりしていく。
期待に応え続けることで見られてきた女優と、見る側に立つことで自分の輪郭を曖昧にしてきた男。
承認が増えるほど、「自分」への承認はゼロに近づいていく。その構造の中で、ふたりがどこまで相手に届けるのかを、静かにたどる現代恋愛小説です。
「自分しか顔を履いていないので」
その台詞だけが、帰宅したあとも渉の中に残った。
数日後、過去に手がけた映像が賞にノミネートされ、その映像に一瞬だけ映り込んでいた女優・朔田玲への使用確認が必要になる。名前を知る前に顔を見て、顔を見たあとで名前を知る。仕事として始まった接触のなかで、渉は玲の輪郭に触れた気がする。だが近づくほど、「知っている」と「分かっている」のあいだの距離だけが、はっきりしていく。
期待に応え続けることで見られてきた女優と、見る側に立つことで自分の輪郭を曖昧にしてきた男。
承認が増えるほど、「自分」への承認はゼロに近づいていく。その構造の中で、ふたりがどこまで相手に届けるのかを、静かにたどる現代恋愛小説です。
第一話 廊下
2026/03/11 19:00
第二話 声で分かった
2026/03/12 19:00
第三話 カメラを回す
2026/03/13 19:00
第四話 受賞した夜
2026/03/14 19:00
第五話 では、なぜ
2026/03/15 19:00
第六話 今日はここまでにしましょう
2026/03/16 19:00