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サタナ大陸にて

「くそ...とりあえず山の方へ向かって歩けば何かしら見つかると思ったんだがな」


 俺はあれから半日近く歩き続け、海岸沿いから森へ入りひたすら北の方角へ向かっていた。気付けばもう辺りは暗くなっている。今日はどうやらこのまま野宿になりそうだ。

 木を背に適当な場所に腰掛けると、ふとギフトについて思い出した。そういえば結局どういうギフトを俺は授けられたんだ...。


「...マズルカが言っていたことが本当だとするなら俺はこの世界の人間ではないし、授けられるギフトも本来では持つことができないものが与えられるって話だったか...」


 自分の手を見つめてみる。いつもと変わらない俺の手だった。だがふとそこで何か"違和感"を感じた。それが何なのかは分からなかったが、何となくこの状況がおかしく思えてくる。一体何がーーー。


パキッ......グルルルッ


 そこで何かが近付いてきていることに気が付いた。俺は立ち上がると辺りを警戒する。自分の腰にある剣を引き抜きーーーはできなかった。そんなものは海に落ちた時に失っている。

 だがそれでも俺は慎重に辺りを見回し警戒する。どこから来る...?右か?左か?それとも...前から?

 瞬間、先ほどから感じていた違和感の正体に気付いてしまった。森の中、空は暗く、草木も眠るような宵闇の中、どうして俺は、ーーー周りが見えている?


「ガァアアアアッ!!!」


 突然、目の前の木々の間から何かが飛び出してきた。それは200リージュはあるかという熊のような魔物だった。しかし飛び出してきたがどうにも様子が変だ。とても動きが遅く見える。


「一体どうなってんだ、こりゃあ」


 俺はそのとてつもなく"遅い"熊の突進を何なくかわす。ひょっとしてとてつもなく弱い魔物なのだろうか?

 ーードォオオオン!!!瞬間、熊の突進が俺が背にしていた樹にぶち当たる。その衝撃でなんと樹が折れていく。木片が辺りに飛び散るがそれすらもとても遅く感じた。...何が起こっているんだ。


「グルァアアアアッ!!!!」


 熊は樹を薙ぎ倒すと方向転換し、再び俺の方へ突進してきた。ーー俺は何となくもしかすると熊が遅いのではなく、目がそう錯覚させているのではないかと思い至る。

 足元に感触を感じ視線を移すと、熊が吹き飛ばした樹の木片が転がっていた。俺はそれを素早く拾うやいなや、とろとろこちらに向かって突進してくる熊の動きを避け、熊の"急所"へ木片を突き立てた。


「ガッ!?ガフッ!!」


 熊は俺が突き立てた木片で断末魔の声を上げるとそのまま倒れ込んだ。俺は息を吐き出すとその場に崩れ落ちた。武器もないまま魔物と戦うことになるとは思いもしなかった。


「...何でおれこの魔物の急所がわかったんだ?」


 もう疑う余地もないことだが、おそらくこれらはギフトの影響だろう。しかしどんなギフトなのか神様に聞こうにも、あの球体は消えてしまった。こうなると自分で調べていくしか方法はない。


「夜なのに周りも見えるし生き物の気配すらわかる」


 くそ...一体おれの体はどうなっちまったっていうんだよ。色々考えてみたが答えは見つかるはずもなく、そばに死んだ魔物の死体もあるというのは何となく気持ち悪いので俺は野宿をやめて歩くことにした。

 

「...そういや方角も何でかわかるんだよな」


 朝になればある程度は魔物の動きも緩慢になり、もう少し色々と検証ができるはずだ。そう考えた俺は感じている気配を避けながら再び北の方角へと歩き始めた。

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